アウトバーン速度無制限に対する執着心が、止まらないドイツ人

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なぜドイツ人は、アウトバーンの速度無制限に異常なまでに拘るのか、渡独してから気になった事の一つにあります。

速度無制限の高速道路があったら、あなたは時速何kmで車を運転しますか?

車好きや、ヨーロッパ在住者なら言わずと知れた事実かと思いますが、ドイツのアウトバーン(Autobahn)と呼ばれる高速道路では、自動車の種類によって速度無制限の区間があります。

時速200km、300kmのスピードを出しても、捕まる事はありません。


何でも法律に落とし込むのが好きなドイツ人ですが、高速道路の速度制限に関しては、頑なに無制限というヨーロッパ唯一の国です。

一応、法律には落とし込んではいますね…

本記事では、ドイツ在住者である筆者がアウトバーンとは、なぜドイツ人はアウトバーン速度無制限に強い拘りがあるのか、ドイツの道路交通法と合わせて簡単に説明したいと思います。

アウトバーンとは

アウトバーン(Autobahn)とは、全長約13,000km(地球一周の約1/3に相当)に及びドイツ国内に張り巡らされた、無料の高速道路です。

アウトバーン(Autobahn)は、ドイツ語で車を指す”Auto”、整備された走路(車道、鉄道など)を指す”bahn”を組み合わせた単語で、正式には複数形で”Bundesautobahnen” = “BAB”ですが、単にアウトバーンと呼ばれる事が多いかと思います。



ドイツにおける初めての自動車専用道路”AVUS”(アヴス)は、1913年ベルリン郊外に作られましたが、テスト及びレーシング用でした。僅か20km程度です。

公共の用途として誕生した初めての自動車専用道路は、1932年に開通したコロン(Cologne)とボン(Bonn)の区間と言われています。現在でいう、【A555】です。

因みに、当時の速度制限は時速120kmでした。後述する、ヨーロッパ30か国の法定最高速度と比較しても、時代もさることながら車両性能が違うにも関わらず、時速120km制限というのは、かなり速いです。

1930-1940年代にかけて現在のアウトバーンの前身と言える、高速道路が建設されはじめましたが第二次世界大戦により中断。

戦時中は、一部道路の中央分離帯を撤去し、軍用機の離着率ができるように整備された部分があったようです。

その名残りからか、全般的にアウトバーンの作りは(例えば日本の高速道路と比べると)、急カーブが無くて、勾配も緩い坂しかありません。

また当初から車やトラックだけでなく、飛行機の重さに耐えうるよう道路が設計されていただけあって、他国より2倍の厚さのコンクリートが使用されているとされ、非常に強固な作りです。


ドイツ国内各地を車で走りましたが、道路はどこも良く整備されていて、表面のコンクリートが波を打っているような箇所は全くありません。

メンテナンスは素晴らしいのですが、工事は多い気がします。


戦後は西ドイツに東ドイツが遅れを取っていましたが、全国的に整備がすすみ東西ドイツが統一した1990年には総距離が8,800kmに到達し、現在に至っています。

ドイツ道路交通法StVO

ドイツの道路交通法と言えるDie Straßenverkehrs-Ordnung(StVO) § 3 Geschwindigkeitに、速度制限に関するルールが明記されています。


道路状況や天候が最適とした場合、ドイツ国内における一般乗用車の法定最高速度を表にしてみます。

ドイツ国内法定最高速度(時速)
市街地50km
郊外100km
高速道路無制限


StVOセクション3の通り、トラックなど車体が重たい車(3.5トン以上)、トレーラーなど牽引している車、バスやコーチなどの場合は別途制限されています。

上記の表は、ドイツ国内における法定最高速度なので、法定最高速度より遅い速度標識が現地にある場合は、当然それらに従う必要があります。

学校や住宅街があるエリアは、10-30km規制の速度標識があったりします。


つまりアウトバーン(高速道路)に乗った瞬間に、速度無制限なのでは無く、「速度制限が終わります」という標識があれば速度無制限になります。

そして新たな速度標識が出てくるまでの区間が、速度無制限です。


アウトバーンの約60%が、速度無制限区間と言われています。

速度無制限の最長区間【A24】

Hamburg(ハンブルク)とBerlin(ベルリン)を結ぶ全長237kmの【A24】、速度無制限の区間は150kmに及び、ドイツ国内最長です。

なぜ速度無制限なのか

素朴な疑問で、なぜドイツ人はアウトバーンの速度無制限に拘るのでしょうか。

ドイツは閉店法(LadSchlG)や休息時間(Ruhezeit)があったり、恐らく世界で一番犬の権利が認められている動物福祉先進国だったりします。

どれも特異でドイツらしさと言えますが、ドイツ人のアウトバーン速度無制限に対する執着心は並大抵のものではありません。

ドイツではかつて速度制限がありましたが1952年に廃止、以後アウトバーン速度無制限が続いています。

1974年ドイツでは、自動車連盟ADAC(Allgemeiner Deutscher Automobil-Club)により、「自由な市民による、自由な旅行」= “Freie Fahrt für freie Bürger”というスローガンが生まれました。


どこにでも自分が好きな場所へ、自家用車で旅行する事が、政府からの干渉を受けずに自由を謳歌する一種の象徴だった時代と言えるかと思います。

政府からの干渉を嫌う傾向は、GDP世界第4位と経済先進国なのにドイツは驚くほど現金社会(匿名性を担保)という点と、どこか似ています。



また自由の象徴といえば、ドイツFKK(裸体主義文化)を連想させれれます。


ドイツ連邦政府によるアウトバーン速度制限導入に対しは、過去に何度も議論されてきていますがドイツ自動車連盟ADAC等が反発。

ドイツGDPの1/3程度が自動車を含む第二次産業であり、ドイツ国民の54人に1人が自動車産業に就いていると言われているせいか、アウトバーン速度制限導入はアンタッチャブルというか、ロビー活動が毎回すごいです。


ほとんどのドイツ人が大好きな車の話題に関して、政治を持込む事が一種のタブー扱いになっている側面もありそうです。


ドイツにおけるアウトバーン速度制限規制の議論は、アメリカにおける銃規制問題と通じるものがありそうですね。

ドイツ3大自動車メーカーによる紳士協定

アウトバーンに速度制限が導入される事を避ける為、自動車メーカー側が業界としての取組みを政治家にアピールする意図で、3大自動車メーカーであるBMWAudiMercedes Benzは1980年代に、政府と紳士協定を結んだと言われています。

紳士協定の内容は、電子的に最高速度を時速250kmに制限するリミッターを設定するものです。

アウトバーンに速度制限を課すには、①法定最高速度を再設定する(現在の無制限を辞める)、②車体にリミッターを設定する、何れかが必要です。

自動車業界は、①は避けたいので、②でなんとか収まらないか自発的に動いた訳です。



紳士協定を主導していたBMWが率先して、初めてリミッターを設定して販売した車がBMW 750iのE32(現在の7シリーズ)と言われています。

BMW 7 Series. The second generation E32.


普通に運転していたらまず到達しないであろう時速250kmのリミッターを設定した事で、果たして効果があったのかは疑問が残るところですが、少なくとも何かしらの取組みを自動車業界がしているアピールにはなったようです。


ただ紳士協定に過ぎないので、現在でも一部ハイエンドモデルではリミッターが設定されていなかったり、Porscheはそもそもリミッターを設定する気が全く無く、当時から紳士協定に反発しています。

Porsche 911 Turbo S: Highlights


リミッターが設定されていない車は、あらゆる面で高性能なので、リミッター設定ありのモデルより、値段は当然高くなっています。

忘れてはならないタイヤのスピードレンジ

正直、ドイツに引越してくるまで気にする事が全く無かったのですが、タイヤにはスピードレンジ(Speed index rating)があります。

スピードレンジ(速度記号)とは、既定の条件下で走行できる最高速度を表す記号で、タイヤの側面に表示されています。

速度記号時速
Q160kmまで
R170kmまで
S180kmまで
T190kmまで
H210kmまで
V240kmまで
W270kmまで
Y300kmまで
ZR240km超


タイヤ側面の読み方は、コンチネンタルの日本語サイトをご参照下さい。
https://www.continental-tire.jp/car/technorogy/tire-knowledge/sidewall

ヨーロッパ30か国の法定最高速度を比較

ヨーロッパ30か国における、一般乗用車(及び車両重量が3.5トン未満のバン等)の法定最高速度リストです。

法定最高速度
オーストリア130km
ベルギー120km
ブルガリア140km
クロアチア130km
キプリス100km
チェコ130km
デンマーク130km
エストニア110km
フィンランド120km
フランス130km
ドイツ無制限*
ギリシャ130km
ハンガリー130km
アイルランド120km
イタリア130km
ラトビア110km
リトアニア130km
ルクセンブルグ130km
マルタ80km
オランダ130km
ノルウェー110km
ポーランド140km
ポルトガル120km
ルーマニア130km
スロバキア130km
スロベニア130km
スペイン120km
スウェーデン120km
イギリス112km
スイス120km


飲酒運転の基準に関しては、ヨーロッパ内でイギリスだけ際立ってゆるいのですが、法定最高速度に関してはドイツだけ異次元です。



*ドイツのアウトバーンにおける速度無制限区間に関してですが、Richtgeschwindigkeits (Verordnung über eine allgemeine Richtgeschwindigkeit auf Autobahnen und ähnlichen Straßen)により、最高時速130kmが推奨されています。


Richtgeschwindigkeitsで推奨される最高時速130kmを超えて速度無制限区間のアウトバーンを運転しても逮捕されませんが、万が一事故などを起こした場合は、過失割合が高まる可能性があります。

最後に

アウトバーンとは、なぜドイツ人はアウトバーン速度無制限に強い拘りがあるのか、ドイツの道路交通法と合わせて簡単に説明した記事でした。

なお実際にドイツのアウトバーンで車を運転してみると、交通の流れが良くても一般乗用車は時速120-170km程度で走行している印象で、時速250-300kmを出せるようなタイミングはあまり無いです。

ドイツにおけるアウトバーンの現実
…例えば片側3車線以上あるとして、典型的なパターンは以下の通りです。

一番右側の車線:速度制限が課されたトラックやバスなどが連なっている
一番左側の車線:スポーツカーやハイエンドモデル車のみ走る事を許された雰囲気
真ん中の車線 :その他一般乗用車が(否応なく)走る光景


確かに速度無制限区間はあるのですが、ドイツにも渋滞や工事、事故など普通にある訳でして、時間帯や曜日を予め確認しないと、アウトバーンでの超高速走行はなかなか厳しいものがあります。


超高速走行は別として、ドイツ人は交通規則をしっかりと守るので、他のヨーロッパ諸国に比べて運転マナーが良いですし、整備されたアウトバーンは本当に走りやすいので、ドイツ国内を車で周遊するのは大変おすすめです!





※本文は以上です。
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