ヨーロッパで一際目立つ、イギリス飲酒運転のゆるい基準

「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」、一度は誰もが聞いた事あるかと思います。

渡英して驚いたことの一つに、飲酒運転の基準があります。

日本では考えられませんが、なんとイギリスをはじめヨーロッパでは多少の飲酒をしても、法律上運転が許されています。

この記事は、飲酒運転を促す意図は全く無く、イギリスにおける飲酒運転の基準、罰則規定、加えてヨーロッパ諸国の取扱いがどうなっているか、等を日本と比較して説明したいと思います。


なお、わたしの考えとしては、飲酒運転は全面的に禁止すべきだと思います。

ロンドンに限ればタクシーやバス、緊急車両に加え一般の乗用車も、皆かなりアグレッシブな運転をするので、お酒が少しでも入ると、更に危険度が増すのではないかと懸念しています。

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血中アルコール濃度基準(BAC)

イギリスではアルコール基準値について、The drink drive limiteと呼ばれています。

欧州では、血中アルコール濃度(BAC = Blood alcohol content)で見るのが一般的です。

アルコール濃度の基準値イングランド
ウェールズ
北アイルランド
スコットランド
呼気中100mlあたりマイクログラム3522
血中100mlあたりミリグラム8050
尿中100mlあたりミリグラム10767

スコットランドだけ基準値が異なります、2014年12月から基準値を下げました。



日本の場合を確認してみます。

道路交通法施行令
第四十四条の三

第百十七条の二の二第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。

引用元リンク:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335CO0000000270#H

日本の道路交通法上、酒気帯び運転(飲酒運転)の基準値となるアルコール濃度は、平仄を取るために単位を揃えると血中100mlあたり30ミリグラムに相当します。

イギリス基準の血中100mlあたり80ミリグラム(実に、日本の2.67倍)が、大分ゆるい事が分かります。

アルコール摂取量をはかる単位

イギリスでは、アルコール摂取量をはかる単位として、1987年以降ユニット(units)が使われており、以下の通り算出できます。

アルコール濃度(ABV = Alcohol by volume)×量(ml)÷1,000=ユニット(units)


例えば1パイント(568ml)で、アルコール濃度(ABV)が5.2%のラガーは、
5.2(%)×568(ml)÷1,000=2.95 unitesとなります。


1ユニットは、10ml又は8gの純アルコールに等しく、一般的な(英国の)成人が一時間に分解できる量とされています。


なので約3ユニットの上記ラガーを1パイント飲んだ場合、理論的には3時間後に体内にあるアルコールは全て分解される事になります。





昔からの言い伝えで、2パイントまでであれば血中アルコール濃度が80mgを超えない、とされています。が勿論、アルコール分解能力、性別、年齢、体格、ストレス状態、などなど人それぞれなので、必ずしも全ての人に当てはまるものではありません。


イギリスでは飲み潰れる人は、ほとんど見かけませんが、自分の好きな銘柄のユニットは覚えておくと良さそうです。

イギリスNHSでは、健康上のリスク低減の為、一週間に14ユニット超のアルコールを定期的に摂取しないよう、すすめています。パブに行くと、数時間で14ユニット超えする事がほとんどだとは思いますが…


なおABVは、ラベルに記載されています。

罰則規定

イギリスで、法律で定められたアルコール濃度基準値を超えて運転した場合、またアルコール検査を拒否した場合等の罰則規定は以下の通りです。

  • 3-6か月の禁固刑
  • 2,500ポンドまで、或いは上限無しの罰金刑
  • 最長1年の免停(10年以内に2回の違反で、最長3年)



また飲酒運転で、死亡事故を起こすと以下の罰則規定に該当する場合があります。

  • 14年の禁固刑
  • 上限無しの罰金刑
  • 最低2年間は運転禁止
  • 免許再交付の前に追試


https://www.gov.uk/drink-driving-penalties

ヨーロッパ30か国のBAC基準

冒頭で述べた通り、ヨーロッパの多くの国では運転するに際し、ある一定度までの血中アルコール濃度が、日本のそれ以上に許容されています。


日本の道路交通法上(道路交通法施行令第四十四条三)、酒気帯び運転(飲酒運転)の基準値となるアルコール濃度は、血中1リットルあたり0.3グラムに相当します。



そこで分かりやすくする為、以下の表で、0.3グラム以上をマーカー表記しました。

表の単位は、血中1リットルあたりグラムです。

一般ドライバー
(Standard)
商用ドライバー
(Commercial)
初心者ドライバー
(Novice)
オーストリア0.50.10.1
ベルギー0.50.20.5
ブルガリア0.50.50.5
クロアチア0.50.00.0
キプリス0.50.20.2
チェコ0.00.00.0
デンマーク0.50.50.5
エストニア0.20.20.2
フィンランド0.50.50.5
フランス0.50.5
(0.2 バス)
0.2
ドイツ0.50.00.0
ギリシャ0.50.20.2
ハンガリー0.00.00.0
アイルランド0.50.20.2
イタリア0.50.00.0
ラトビア0.50.50.2
リトアニア0.40.00.0
ルクセンブルグ0.50.20.2
マルタ0.50.20.2
オランダ0.50.50.2
ノルウェー0.20.20.2
ポーランド0.20.20.2
ポルトガル0.50.20.2
ルーマニア0.00.00.0
スロバキア0.00.00.0
スロベニア0.50.00.0
スペイン0.50.30.3
スウェーデン0.20.20.2
イギリス
(内スコットランド)
0.8
(0.5)
0.8
(0.5)
0.8
(0.5)
スイス0.50.10.1

ソース元は欧州交通安全協議会(ETSC = European Transport Safety Council)です:
https://etsc.eu/blood-alcohol-content-bac-drink-driving-limits-across-europe/

イギリスだけ基準値が飛びぬけていますね。

一般ドライバー

一般ドライバーに関しては、30か国中22か国が、日本の基準値0.3より高いです。

Zero-tolerance policy(不寛容)の国は、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアの4か国。

宗教的な理由で、例えばUAE、サウジアラビア、パキスタンは同じくZero-tolerance policyですが、ヨーロッパでも最も厳しい運営をしている国があります。

商用ドライバー

商用ドライバーでも恐ろしい事にブルガリア、デンマーク、フィンランド、フランス(除くバス)、ラトビア、オランダ、スペイン、イギリスの8か国は、0.2を超え0.3-0.8の範囲で許容されています。

バスなどの長距離線は、これら8か国に関して避けたくなるのは私だけでしょうか…


イギリスでは、わりと頻繁にバスドライバーの飲酒運転に関わるニュースが報じられています。

日本国内の感覚でいると、大違いなのでご注意下さい!

バス/コーチ/タクシー会社等によっては、自発的に内規でBACを定めているとこもあると思いますが(そう信じたい)、法律上はあくまでも上記の表通りです。

まとめ

ヨーロッパでは、国によっては法律上ある程度の飲酒しても、血中アルコール濃度次第では運転が認められていますが、やはり「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」、でいた方が安心ですね。


実際EUでは、欧州交通安全協議会が、安全面や交通事故を減らす目的で、実質的に0と言える0.2以下(日本の、0.3より低い)に、基準値を下げようと画策しています。




イギリスでも2010年頃、同様に基準値を下げようとする動きがあったのですが、否決され現在に至ります。

当時イギリス運輸省のNorth氏がまとめたレポート内容です:
https://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20100921035231/http://northreview.independent.gov.uk/report


確かにパブ文化が有名ですが、科学的にみて血中アルコール濃度が高い状態での運転はリスクが高い事が明白なのに、何故法律を変えないのか、何か利権が絡んでいるのではと勘ぐってしまいます。




※本文は以上です。
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