なぜヨーロッパに台風が無いのか、ハリケーン・サイクロンとの違い

日本にあってヨーロッパに無いものの1つに、「台風(Typhoon)」があるかと思います。

またニュース媒体によって、「台風」では無くて「ハリケーン(Hurricane)」だったり「サイクロン(Cyclone)」が使われている事がありますが、何が違うのでしょうか。

本記事は、なぜヨーロッパに「台風」が無いのか、また普段あまり気にする事がない(かもしれない)「ハリケーン」や「サイクロン」との違いは何か、調べた時の記録です。

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台風の定義

まず「台風」の定義を確認してみます。

気象庁

台風とは
熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、このうち北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のものを「台風」と呼びます。

引用元リンク:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-1.html


まず上記の地域で発生した「熱帯低気圧」の内、最大風速(秒速)が約17メートル以上のものを「台風」としています。


この事から、「台風」とされる「熱帯低気圧」は、そもそも発生する地域にヨーロッパは該当しません。よって理論上、ヨーロッパでは「台風」が存在しない事になります。


では「ハリケーン」・「サイクロン」はどうなのか、もう少し詳しく見ていきます。

ハリケーン・サイクロンとの違い

「台風」と「ハリケーン」・「サイクロン」との違いですが、日本の気象庁のサイトを元に表にしてみました。

基本的には、発生地域最大風速が異なるだけで、3つ全て熱帯低気圧です。

台風ハリケーンサイクロン
主な発生海域北西太平洋
南シナ海
北大西洋
カリブ海
メキシコ湾
北東太平洋
ベンガル湾
アラビア海
(北インド洋)
最大風速(毎秒)約17メートル以上約33メートル以上約17メートル以上
熱帯低気圧
温帯低気圧××

「サイクロン」だけは、熱帯低気圧と温帯低気圧が区別されず両方とも使われます。

熱帯低気圧とは

熱帯低気圧という言葉が何回か出てきたので、確認してみます。

熱帯低気圧は、先ほどの「台風」の定義で確認した通り、熱帯の海上で発生する、最大風速が毎秒約17メートル以下の低気圧」です。つまり赤道付近の海上で、水蒸気を多く含んだ暖かい空気からできていることが特徴として挙げられます。

気象庁気象研究所

台風と海水温の関係
熱帯から亜熱帯海域の暖かい海上(海面水温が26.5℃以上)で、台風は発生するといわれています。高い海面水温は、熱帯で形成される弱い渦を最大風速~17m/s以上の台風へと強化するのに好都合な海の環境といえます。

引用元リンク:https://www.mri-jma.go.jp/Dep/typ/awada/TyphoonSST.html


ヨーロッパの海面水温は、年間を通して26.5℃未満なので、「台風」が発生する条件を満たしません。

以下は、欧州中期予報センター(ECMWF)モデルを可視化したものです、グラフィクスが見易いのでWind(風向き)のまま貼り付けています。

適宜、右上のWindをクリック < More layers < Sea temperature他を選択し、様々なデータを確認する事が可能です。

温帯低気圧とは

先ほど「台風」・「ハリケーン」・「サイクロン」の内、「サイクロン」だけは、熱帯低気圧と温帯低気圧が区別されず両方とも使わると述べました。


温帯低気圧ですが、北側の寒気と南側の暖気との境で発達する為、南北の温度差(前線)がある事が特徴です。この水平方向の温度差が、温帯低気圧の主なエネルギー源です。

繰り返しですが、熱帯低気圧の場合エネルギー源は、暖かい海面から供給される水蒸気です。


エネルギー源の場所に関連して、温帯低気圧は中緯度(温帯)で発生する点が、熱帯低気圧の場合(熱帯の海上)と異なります。


ヨーロッパでは暴風(Windstorms)と呼ばれ、通常雨や雪を伴わない事が多いです。この暴風が温帯低気圧(Extra-tropical cyclones)です。

暴風(European Windstorms)は風速(毎秒)約33メートルと、「ハリケーン」同等の威力で秋から冬にかけて発達する事が多いです。

イギリスやアイルランド、オランダ、ノルウェー等が影響を受ける事が多い印象です。

なお「台風」等は海面水温が熱帯よりも低い地域に来ると、エネルギー源となる海からの水蒸気の供給が減少し、熱帯低気圧に戻ったり、上空に寒気が流れ込むと温帯低気圧に変わります。

最後に

「台風」・「ハリケーン」・「サイクロン」何れも、ほとんどの場合で大陸に到達するまでに、熱帯低気圧や温帯低気圧になる(勢力が弱まる)ので、ヨーロッパで見かける事がほとんど無い、という記事でした。

しかし全く無い訳でも無く、直近だと2019年に赤道付近の温かいアフリカ西海岸で発生した、勢力の強い”Lorenzo”(ハリケーン)がヨーロッパに到達しています。

Hurricane Lorenzo: Ireland braces itself for powerful storm
Damage expected from the largest recorded storm to make it so far east in north Atlantic


また温暖化で海水温が上昇すると「ハリケーン」のエネルギー源となるので、いままでさほど影響を受けてこなかったヨーロッパ地域などの影響が懸念されていたりします。





※本文は以上です。
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