欧州のドイツ含む5か国、なぜ刑務所からの脱獄・脱走が合法なのか。

『大脱走』、『アルカトラズからの脱出』、『ショーシャンクの空に』、『プリズンブレイク』など脱獄をテーマにした映画やドラマは多数ありますが、現実の世界の話でドイツを含むEU加盟国5か国において、刑務所等からの脱獄や逃走する行為自体は違法ではありません。



本記事は筆者が住んでいるドイツに注目して、なぜ脱獄・脱走が合法なのか調べた際の記録です。

言わずもがな、ドイツで脱獄が合法だからといって、脱獄自体や、脱獄以前に公の規則や法律によって禁止されている行為を促す意図は全くありません。

脱獄が、理論上は合法と言える理由

なぜドイツで刑務所等からの脱獄が合法かですが、理由はドイツ刑法典(Strafgesetzbuch = StGB)において、逃走罪の条文が無いからです。


つまり構成要件該当行為が存在しないから、刑罰の対象にはなりません。なんだかそうは言っても、狐につままれたようです。



日本の場合、刑法を確認してみると刑務所にいる人や、裁判の結果が出るまで身柄を拘束されている人が逃走すると、逃走罪に問われます。

第六章 逃走の罪

(逃走)
第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。

(加重逃走)
第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

引用元リンク:https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=140AC0000000045


第九十七条が単に逃走した場合、第九十八条は、逃走時に以下に該当する行為をした場合に問われる罪です。

  • 拘束施設の損壊
  • 拘束器具の損壊
  • 暴行
  • 脅迫
  • 2人以上で共謀


また、逃走する人を手助けすると逃走援助(第百条)、犯人蔵匿(第百三条)等の罪に問われます。

なぜドイツ刑法典(StGB)に、逃走罪が無いのか

ドイツ刑法典(StGB)において、逃走罪に係る構成要件該当行為が無い旨、説明しました。

そもそも論としてなぜ刑法に逃走罪が無いのかですが、19世紀後半には「誰でも自由を求める事は、人間の本質的要素」とされ、それが例え刑務所からの脱走であっても罰せられるべき行動ではない、としてドイツでは法の下に尊重され、現在に至ります。

ein dem natürlichen Freiheitsdrang des Menschen entspringendes Verhalten nicht unter Strafandrohung gestellt werden

引用元リンク:https://www.bundestag.de/resource/blob/645640/f537c6845e0ce4e36ac40574e4cb0a5f/WD-7-053-19-pdf-data.pdf


実践上は不可能過ぎる、完全脱獄

確かにドイツ刑法典(StGB)に、逃走罪の条文がありません。

しかし逃走中に犯した罪は、当然罰せられます。日本の刑法第九十八条で明記されている加重逃走に近いイメージと言えますでしょうか。

網羅できませんが、いくつかドイツ刑法典(StGB)を確認してみます。

ドイツ刑法典
(StGB)
逃走のほう助
Gefangenenbefreiung
第120条
暴行
Körperverletzung
第223条
脅迫
Freiheitsberaubung
第239条
人質
Geiselnahme
第239条b
蔵匿
Strafvereitelung
第258条
器物損壊
Sachbeschädigung
第303条
賄賂
Bestechung
第334条

例えば壁に穴を開けたり、手錠や部屋の鍵、扉・窓・フェンス等を壊すと器物損壊罪になります。

看守に暴行や脅迫をしたり、賄賂を渡すと、やはり罪に問われます。


仮に、これらの法律違反を一切犯さず刑務所の敷地外に出れたとして、囚人服のまま逃走すると、窃盗罪に問われます。

つまり、新たな罪を犯さずに脱獄する事は極めて困難と言えます。


刑務所から逃走する行為自体は合法だけど、逃走のほう助(第120条)は罰せられます


また脱獄が仮に成功しても、ドイツでは日本でいう逃走罪には問われませんが、服役中の罪が無くなる訳ではありません。

刑務所からの脱獄事例

ドイツの週刊誌デア・シュピーゲル(Der Spiegel)で確認できる、刑務所から脱走した主なニュースとして以下が挙げられます。

JVAは”Justizvollzugsanstalt”の略語で、ドイツ語の「刑務所」を意味します。


2019年8月 JVA Frankfurt-Preungesheim in Hessen
https://www.spiegel.de/panorama/justiz/frankfurt-am-main-gefaengnisausbrecher-wieder-gefasst-a-1290830.html

2019年8月 JVA Bochum in Nordrhein-Westfalen
https://www.spiegel.de/panorama/justiz/bochum-haeftling-floh-mit-hilfe-von-sportgeraeten-a-1282271.html

2019年8月 JVA Memmingen in Bayern
https://www.spiegel.de/panorama/justiz/memmingen-zwei-gefangene-aus-jva-ausgebrochen-a-1280415.html

2017年12月-2018年1月 JVA Plötzensee in Berlin
https://www.spiegel.de/panorama/justiz/berlin-warum-die-haeftlinge-aus-der-jva-ploetzensee-fliehen-konnten-a-1198904.html


一番目と三番目の記事内で、「刑務所からの脱獄自体は、刑法で罰せられない」という件があります。

Der Ausbruch selbst ist dagegen keine eigene Straftat. “Das resultiert aus der Idee, dass der Gesetzgeber anerkennt, dass jeder Mensch einen Drang nach Freiheit hat”, so Matthias Jahn, Professor am Institut für Kriminalwissenschaften und Rechtsphilosophie der Goethe-Universität Frankfurt und Richter am Oberlandesgericht.

引用元リンク:https://www.spiegel.de/panorama/justiz/frankfurt-am-main-gefaengnisausbrecher-wieder-gefasst-a-1290830.html



また四番目のPlötzensee刑務所では、年末年始の6日間で、合計9人の受刑者が脱走した事で、当時大ニュースになっていました。

最後に

「誰でも自由を求める事は、人間の本質的要素」なので、ドイツにおいて脱獄そのものは理論上罪に問われないが、更なる罪を犯さず脱獄する事は実践上ほぼ不可能、と言えます。

日本人からすると考えられませんがドイツに加えて、ヨーロッパではオーストリア、ベルギー、オランダ、スウェーデンも同様に、脱獄は罪に問われないようで背景はドイツと同じです。


実際ドイツに住んでいると、脱獄は極端過ぎるので別として、ドイツ人の「自由を求めたり、謳歌する」例は身近に思い当たる節(本記事内に貼り付けた、ブログ内リンク等)が結構あったりします。





※本文は以上です。
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