ドイツ企業の末尾にある「GmbH」とは、「AG」との違い

ドイツ企業の商号には、一定の規則に基づいて略称が末尾にあります。

略称の中でも、特に見かける事が多い「GmbH」と「AG」について簡単に説明したいと思います。

特にドイツ企業の8割程度が「GmbH」の形態をとっていると言われており、何かしらドイツ語圏と関わりのあった方は、一度目にしたこともある事かと存じます。


欧州会社規則や、イギリス・フランス等の場合についても多少触れています。

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「GmbH」とは、有限責任会社

ドイツにおける「GmbH」とは、日本の「旧有限会社」に相当する企業形態です。

「GmbH」の正式名称は、Gesellschaft mit beschränkter Haftung

  • Gesellschaft = Company
  • mit = with
  • beschränkter = Limited
  • Haftung = Liability


英語にするとCompany with Limited Liability、つまり有限責任会社と訳すことができるかと思います。

イギリスではPrivate Limited Company = 「LTD」が、フランスではSociété à responsabilité limitée = 「SARL」が、ドイツ「GmbH」の類似企業形態として挙げられるかと思います。

ドイツ語圏である、オーストリアやスイスでも「GmbH」という略称が使われます。

「AG」とは、株式会社

ドイツにおける「AG」とは、日本の「株式会社」に相当する企業形態です。

「AG」の正式名称は、Aktiengesellschaft

  • Aktien = Stocks / Shares
  • gesellschaft = Company


英語にするとCompany Limited by Stocks / Shares、つまり株式会社と訳すことができるかと思います。

イギリスではPublic Limited Company = 「PLC」が、フランスではSociété Anonyme = 「SA」が、ドイツ「AG」の類似企業形態として挙げられるかと思います。

ドイツ語圏である、オーストリアやスイスでも「AG」という略称が使われます。


加えてEUにおいては、2004年10月8日施行の欧州会社規則(EU Directive)に基づき設立される欧州会社(European Company) = 「SE」(ラテン語でSocietas Europea)も、ドイツ「AG」の類似企業形態と言えます。

ドイツやフランス、オーストリアなどEUメンバー国それぞれ会社法がありますが、欧州会社 = 「SE」として一度登記すれば、EU全域で欧州会社規則に準じた会社運営が可能です。

「GmbH」と「AG」を比較

ドイツにおける「GmbH」と「AG」を比較します、主なポイントです。

GmbHAG
日本語訳有限会社株式会社
最低資本金25,000ユーロ50,000ユーロ
会社法GmbH-GesetzAktiengesetz
機関取締役
社員総会
取締役会
監査役会
株主総会
株式譲渡自由だが要公証
(費用と時間が)
自由
出資者の責任社員は出資額に限定
(有限責任)
株主は出資額に限定
(有限責任)
株式非公開公開


ドイツ株価指数のDAX30構成銘柄などの上場企業は、当然ですが全て「AG」か、「AG」に類似する企業形態です。

以下の投稿記事に、DAX30銘柄全ての企業名があるので、末尾の略称に注意してご覧下さい。


企業名の末尾を確認すると株式会社を意味する「AG」、「SE」、「PLC」がありましたね。


加えて「SE & Co KGaA」、「AG & Co KGaA」という略称も新たに出てきました。

「KGaA」 = Kommanditgesellschaft auf Aktien、英語にするとLimited Partnership by Stocks / Sharesで、株式合資会社と訳されます。

「KGaA」は株式会社と合資会社、両方の特性を持つ会社形態で、無限責任社員にあたるのが株式会社(SEやAG)です。



因みにDAX30銘柄で、唯一「PLC」なのが多国籍化学企業のLindeです。

元々はLinde AGという、1879年設立のドイツ企業でしたが、アメリカ企業のPraxairと合併。現在登記上の本社はアイルランドですが、本社機能はイギリスにあり、Linde PLCはイギリスにおける外国会社(an overseas company)として登録されています。
https://www.linde.com/imprint#:~:text=Its%20registered%20address%20is%20at,%2C%20GU2%207XY%2C%20United%20Kingdom.

なぜドイツでは、「GmbH」が多いのか

ドイツにある企業の8割程度が「GmbH」の形態をとっていると言われています。

なぜ「GmbH」が多いかですが、有限責任性は当然として、設立や運営に係る手続きの容易性・迅速性、定款の柔軟性、比較的少ない資本金要件などが挙げられるかと思います。

あと主観的になりますが、ドイツ人の株式会社に対する有限責任会社のイメージが、日本人のそれほど劣後していない気がします。

名を捨てて実を取る、みたいな勝手なイメージですが。


また2008年11月1日に有限責任会社(GmbH)法の近代化と悪用防止の為の法改正(MoMiG)があり、ドイツにおける有限責任会社の設立手続きの規制が大幅に緩和されたのも、「GmbH」が多い理由に繋がっていると言えます。

念のため、MoMiGの原文リンクを貼り付けておきます。
MoMiG = Modernisierung des GmbH-Rechts und zur Bekämpfung von Missbräuchen

まとめ

最後に改めて以下の通り、まとめておきたいと思います。

ドイツ
オーストリア
スイス
GmbHAG
日本有限会社株式会社
イギリスLTDPLC
フランスSARLSA
欧州会社SE


Linde PLCのように合併等していたり多国籍企業だと、複雑な場合もありますが、企業の末尾にある商号を確認すると、欧州会社の「SE」を除き、ある程度どの国の企業なのか想像がつきます。




ドイツ企業の8割程度が「GmbH」の形態と言われていますが、ドイツ統計局(Statistisches Bundesamt)によると2018年9月30日時点で、「GmbH」と「AG」等を合算した法人数の、実に3倍弱が個人事業主(Einzelunternehmer)として登録されています。






※本文は以上です。
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