悪名高き?!ドイツの閉店法。日曜・祝日の買い物は要注意

あなたはドイツの閉店法を聞いたことがありますか?

ドイツの日曜日や祝日は、スーパーやデパートなどお店が開いてないアレです。かすかな希望を抱いて街に出ても、お店は閉まっているので、旅行者の方はご注意下さい。


閉店法とはいうものの、実は2006年に連邦基本法の改正により、連邦政府ではなくドイツ国内16の各州が、個別に制定及び管轄するようになっています。


ドイツに移住する前から、なんとなく日曜日は休みというのは知ってはいましたが、いざ実際に生活してみると…イギリスに住んでいた時が、買い物天国だったという事を、改めて実感しました!

この記事では、閉店法がどんなものか説明したいと思います。

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ドイツの閉店法とは

ドイツの閉店法とは、小売店等が閉店しているべき時間を法律で定めたものです。

連邦法上は、原則以下のように(閉店しているべき時間を)定めています。

  • 日曜日と祝日
  • 月曜日から土曜日の、午前6時まで午後8時以降
  • 12月24日が平日の場合、午前6時まで午後2時以降

16ある州の内の一つ、バイエルン州はもっとも保守的なアプローチをしていて、連邦法上通り。
反対に、ベルリン州が最もリベラルで、年10日間は日曜日に営業する事が可能です。

その他15の州は、日曜日を除く週6日間は24時間営業できたり、平日のみ24時間営業できたり、各々ルールを制定しています。



何れにせよ、ルール上は24時間営業できても、実際に24時間営業している小売店は限られていると思います。また、どの州でも結局のところ日曜日と祝日は、原則お店が閉まっています。

なんでもルールに落とし込んで、それに従う国民性というか、閉店しているべき時間を法律で定めるなんて、日本人からしたら考えられないですよね。

LadSchlG

閉店法のドイツ語での正式名称は、「Gesetz über den Landenschlussss」です。

一般的には一語で、「Ladenschlussgesetz」或いは省略されて「LadSchlG」と表記されています。

「Ladenschlussgesetz」は、3つの単語からできています。少し脱線しますが、日本語と同じように、ドイツ語は単語を、組み合わせて表現する事が多いですね。

  • Laden お店
  • Schluss 閉店
  • Gesetz 法


ドイツ語原文では、7つのセクションで閉店法が構成されています。
https://www.gesetze-im-internet.de/ladschlg/

日曜日でも、開いているお店

閉店法で、全てのお店が閉まっているかというと、例外規定があります。

例えば、パン屋さん

ドイツ人はパン大好きですからね。

ふざけている訳ではなく、本当にLadSchlG=閉店法で明文化されているんです。

§ 12 Verkauf bestimmter Waren an Sonntagen

(1) Das Bundesministerium für Arbeit und Soziales bestimmt im Einvernehmen mit den Bundesministerien für Wirtschaft und Energie und für Ernährung und Landwirtschaft durch Rechtsverordnung mit Zustimmung des Bundesrates, dass und wie lange an Sonn- und Feiertagen abweichend von der Vorschrift des § 3 Abs. 1 Nr. 1 Verkaufsstellen für die Abgabe von Milch und Milcherzeugnissen im Sinne des § 4 Abs. 2 des Milch- und Fettgesetzes in der im Bundesgesetzblatt Teil III, Gliederungsnummer 7842-1, veröffentlichten bereinigten Fassung, Bäcker– und Konditorwaren, frischen Früchten, Blumen und Zeitungen geöffnet sein dürfen.

引用元リンク: https://www.gesetze-im-internet.de/ladschlg/BJNR008750956.html


因みに、§ 3では、パン屋(Bäcker)のみ5:30から開店できるように記載されています。

並々ならぬドイツ人のパンに対する情熱というか愛が感じられますね。

そういえば、ドイツ人に聞いた話では、引越しをすると、まずはご近所でお気に入りのパン屋を、皆探すそうです。



§ 12では、パン屋(Bäcker)に続いて、 コンフェクショナリー新鮮な果物新聞等も日曜日の営業がOKとなっていますね。

その他、空港レストランガソリンスタンド薬局スパ(プール、サウナ)なども、個別のセクションで定められています。

州によって違う、ドイツの祝日

閉店法は、日曜日と祝日に適用されます。

少しややこしいのが、ドイツの祝日は全国統一では無くて、州ごとによる点です。

ドイツには16の連邦州があるので、どの地域にあなたがいるかで、祝日が異なる可能性があります。

閉店法は誰のため

戦前からあったと言われている閉店法ですが、元々は宗教的な面が強かったと言われています。

1900年には、ドイツ全国で営業時間開始に係る法律が制定され、1919年にはDie Verfassung des Deutschen Reichs (The Weimar Constitution) Article 139により、日曜日の営業が禁止され、平日は朝7時から夜7時までしか営業ができませんでした。

ドイツは筋金入りで、日曜日は働かない国だったんですね。

誰のための閉店法かというと、主に3つ挙げられるかと思います。
順に見てきたいと思います。

教会

端的に、日曜日が安息日だからです。

国民の約半数がキリスト教という事もあり、日曜日は働かず、礼拝しに教会へ行くべき、信仰を深めるべき、という考えが根底にあるかと思います。

わたしは高校留学でアメリカに住んでいた時があったのですが、やはり日曜日はホストファミリーに連れられて教会に通っていました。



日本に住んでいると、八百万の神々というか、そこまで宗教を考える事が無いかと思いますが、欧米では宗教が人々の生活や社会の一部となり、密接に関わっている事が伺えます。

労働者

閉店法が2003年に改正され、「労働者の特別な保護」という文言が追加されました。

Dritter Abschnitt
Besonderer Schutz der Arbeitnehmer
§ 17 Arbeitszeit an Sonn- und Feiertagen

引用元リンク: https://www.gesetze-im-internet.de/ladschlg/BJNR008750956.html

日曜日・祝日に働く場合は、一日の労働時間が8時間を超えてはならない他規定があります。

労働組合は、一層の閉店法緩和に消極的です。

小規模小売店

資本や規模、人員数で大手に見劣りする、小規模小売店の保護という点は、納得がいきます。

過当競争というと、長時間労働や消耗戦にも繋がりかねなく、不毛な争いをしないのは、結局最終消費者にとってもメリットがありそうです。

かといって大手小売店が、口を揃えて閉店法に異議を唱えているかというと、必ずしもそうでは無い点が、非常にドイツらしいです。

罰則規定

閉店法には罰則規定があり、法定営業時間を超えて労働させた場合2,500ユーロ以下の罰金が、違反が故意で労働者の健康を害した場合等には6か月の禁固刑又は180日数罰金以下の罰金が科されます。

本記事では細かく切り込みませんがイギリスに比べると、ドイツの労働法はかなり被雇用者が守られていると思います。

連邦憲法裁判所のちゃぶ台返し

2006年から連邦基本法の改正により、連邦政府ではなくドイツ国内16の各州が、個別に閉店法を制定及び管轄するようになりました。

一番メリットを享受していたのが、ベルリン州で2006年11月17日より年最大10日、日曜日の営業を許可していました。

クリスマス前4週間にかかる日曜日は、Four Advent Sundaysと呼ばれ、キリスト教にとっては特別な意味合いがあります。



このFour Advent Sundaysを特段考慮せず、日曜日の営業を年に最大10日許可していたベルリン州に、カトリック(Berlin Archdiocese)とプロテスタント(The Evangelical Church Berlin-Brandenburg-Silesian Oberlausitz)教会が、憲法違反との訴えを連邦憲法裁判所(Bundesverfassungsgericht)にしました。

そして2009年12月1日、連邦憲法裁判所は、Four Advent Sundays中の連続した日曜日、営業することは憲法違反との教会の訴えを認めました
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2009/bvg09-134.html


また、ドイツ連邦共和国基本法(憲法)には、日曜日について次のように明記されています。

Art. 139
Der Sonntag und die staatlich anerkannten Feiertage bleiben als Tage der Arbeitsruhe und der seelischen Erhebung gesetzlich geschützt.

引用元リンク:https://www.gesetze-im-internet.de/gg/BJNR000010949.html

訳すと「日曜日と各州が認める祝日は、休息と精神的啓発の日として法的に保障される」とあります。

まとめ

日曜日が休みなのに、ドイツはヨーロッパ随一の経済大国(EU内でGDP寄与率21%程度でトップ)というのは、興味深いですよね。

でも結局、日曜日が休みの分、月曜日から土曜日に対応せざるを得ないので、人々の活動量とかお金の消費量は、対して変わらないのかもしれません。




またドイツ国内でも、仮に閉店法をやめて日曜日の営業を解禁しても、あまりにもドイツ人が長い間、日曜日にショッピングをしてこなかった為、そこまで消費が増える事には懐疑的な見方をする人も多いようです。



わたしの場合は、ドイツに移住して最初の3か月間を越してきたあたりで、諸々不便な生活に慣れてきました。

単に移住当初は、閉店法の過去や背景を知らなかった為、勝手に不便だと決めつけていた面もありますが、人間意外と慣れるものです。

でも日曜日のパン屋さんとかカフェ、プールなんか結構混んでいて、やっぱりドイツ人でも、外に出かけたいんだなって思います。



家族の時間を大切にする、という意味ではワーク・ライフ・バランス上、物凄く良い法律だと思います。サービス業の人ほど、閉店法の良さを享受しているのではないでしょうか。

現金社会のドイツは、伝統や歴史を重んじるというか、アナログ社会というか、閉店法一つみても本当に興味深い国です。




※本文は以上です。
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