世界の中心、だったグリニッジ標準時GMT。時計好きなら天文台へ!

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イギリスはロンドン中心部から南東10km程に位置する王立グリニッジ天文台(Royal Observatory Greenwich)、グリニッジ標準時GMT(Greenwich Mean Time)という単語を聞いたり読んだりした人も多いかと思います。

GMTですがタイトルの通り世界の中心、でしたが実は現在、国際的な標準時としては役目を終えています。


この記事では元ロンドン在住者が、グリニッジ標準時GMTとは、ロンドンから日帰りで行ける天文台への行き方、現在GMTに代わり何が使われているか等を説明したいと思います。

グリニッジ天文台は歴史や時計・船好きには、たまらない場所だと思います!

グリニッジ標準時GMTとは

イギリスは王立グリニッジ天文台(Royal Observatory Greenwich)にある経度0度(つまり世界を、東半球と西半球に分ける線)の場所で、ここを基準にかつて世界各国のタイムゾーンを決めていました。

昔ながらの天文観測で、地球の自転によって決められる時刻です。


例えば日本の標準時子午線(JSTM)は、東経135度です。兵庫県明石市に位置しています。

JSTMは明治19年(1886年)「本初子午線経度計算方及標準時ノ件」で定められました。

明治十九年勅令第五十一号
(本初子午線経度計算方及標準時ノ件)

一英国グリニツチ天文台子午儀ノ中心ヲ経過スル子午線ヲ以テ経度ノ本初子午線トス

一経度ハ本初子午線ヨリ起算シ東西各百八十度ニ至リ東経ヲ正トシ西経ヲ負トス

一明治二十一年一月一日ヨリ東経百三十五度ノ子午線ノ時ヲ以テ本邦一般ノ標準時ト定ム

引用元リンク:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=119IO0000000051


地球一周360度を24時間とすると、15度で1時間に。

経度0度のイギリスと比較すると、日本は東経135度なので、135÷15=9時間の時差がある事になります。



明治19年から遡ること2年、1884年にアメリカ合衆国ワシントンD.C.で行われた、国際子午線会議(本初子午線並計時法万国公会)で、グリニッジが世界標準の本子午線(国際的な経度0度)に定められ、以来1963年までGMTが世界の標準時として扱われていました。


同会議では、乱立し世界各地で独自に使われていた本初子午線に代わり、世界共通の本初子午線を採用する事を満場一致で採択。因みに様々な候補地からグリニッジを本初子午線に採用するかは、賛成22・反対1(ドミニカ共和国)・棄権2(フランス・ブラジル)で可決されています。



航海や航空など、元々プロ向けの用途として作られた時計は、その名残りからか、GMTという名称を、今でも商品名に使用しているほどです。

ロレックス/GMTマスター2、オメガ/GMTシーマスター、タグホイヤー/GMTキャリバー、パネライ/GMTルミノール、グランドセイコー/GMT各シリーズなど挙げられるかと思います。


GMT時計の代名詞的存在が、ロレックスです。1955年に登場したロレックス/GMTマスターは、パンアメリカン航空のパイロットウォッチとして開発されたものです。


GMTという名が入っていなくても、GMT針(上記、商品写真の例だと赤い針)があるかがポイントですね。

GMT機能は、ベゼル1周(360度)を24時間に分割し、GMT針と組み合わせて使う事で、メインとは別の時刻を表示させるものです。

今はiphoneなど簡単に、そして一瞬で世界各地の時刻を確認できてしまうので、腕時計をしない人が増えていると思いますが、敢えてGMT機能みたいな現代社会において無駄とも言える機能は、個人的には嫌いじゃないです。

なぜグリニッジが本子午線に選ばれたのか

そもそも、なぜ様々な候補地からグリニッジが本子午線(国際的な経度0度)に、国際会議で選ばれたのか、良く分からなかったので調べてみました。

以下は当時の議事録から抜粋、世界中の船舶数及び総トン数で、どの子午線を使っているか表したものです。

子午線船舶数総トン数
Greenwich37,66314,600,972
Paris5,9141,735,083
Cadiz2,468666,602
Naples2,263715,448
Christiana2,128695,988
Ferro1,497567,682
Pulkova987298,641
Stockholm717154,180
Lisbon491164,000
Copenhagen43581,888
Rio de Janeiro25397,040
Miscellaneous2,881534,569
合計57,69720,312,093

ソース元:http://www.gutenberg.org/files/17759/17759-h/17759-h.htm

合計総トン数の72%程度が、グリニッジを使用している事が分かります。


議事録を読み返してみても、実質的なスタンダードといえるグリニッジを本初子午線とする事が合理的である、と記載されています。

International Meridian Conference

HELD IN THE
CITY OF WASHINGTON.

I.
SESSION OF OCTOBER 1, 1884.

It thus appears that one of these meridians, that of Greenwich, is used by 72 per cent. of the whole floating commerce of the world, while the remaining 28 per cent. is divided among ten different initial meridians. If, then, the convenience of the greatest number alone should predominate, there can be no difficulty in a choice; but Greenwich is a national meridian, and its use as an international zero awakens national susceptibilities.

引用元リンク:http://www.gutenberg.org/files/17759/17759-h/17759-h.htm



大航海時代と言えば15世紀から17世紀半ばあたりですが、イギリスが世界的な海軍国になると、グリニッジ天文台を基点として観測・作成された星図が、ヨーロッパ中の航海者によって使われた事で、世界の海図の多くも早くからグリニッジ子午線を基準に採用していたと言われています。

都市として2番目だったパリですが、上記1884年の国際会議でフランス(とブラジル)はグリニッジを世界共通の本初子午線を採用するかの投票に際し、棄権していて最後まで抵抗していた事が伺えます。

グリニッジ天文台への行き方

王立グリニッジ天文台(Royal Observatory Greenwich)は、ロンドン中心部から南東10km程に位置し、電車を使えば10-15分程度で着いてしまいます。



公式サイト:https://www.rmg.co.uk/


最寄り駅は、ゾーン2です。

  • Cutty Sark DLR
  • Greenwich rail station/DLR
  • Maze Hill rail station
  • Greenwich Pier (水上バス)



グリニッジはテムズ川南岸にあるので、天気が良ければウエストミンスターやロンドンアイあたりロンドン市内から、水上バス(Thames Clippers)で向かえば観光と移動ができるのでおすすめです!

天文台自体は丘の上にあるので、少し下船してから歩きます。
旧王立海軍大学が併設されています。

協定世界時UTCとは、GMTとの違い

GMTに取って代わり、現在使われているのが、協定世界時UTC(Coordinated Universal Time)です。

UTCは簡単に言うと、GMTより精度を上げて再定義しなおした世界時です。
GMTとUTCの違いですが、日常一般レベル(時刻の最大精度が整数秒)では同じ扱いです。

1964年に旧協定世界時UTCが正式に採用、1972年以降は現行の協定世界時に移行し、GMTの世界的な基準としての役割は終わっています。


UTCの身近な例だと、パソコンの「日付と時刻の調整」で、タイムゾーンを確認すると「UTC±時間」で表示されています。


GMTは天文観測でしたが、UTCはセシウム原子を利用した原子時計を用いて表示される時刻である国際原子時(TAI)に、GMTとの差を0.9秒以内に保つよう、うるう秒(leap second)を用いて調整しています。

本来は原子時計(TAI)通りに世界時を定めてしまった方が美しいのですが、地球の自転が徐々に遅くなっている為、うるう秒で調整したUTCが生まれました。


うるう秒はパリにある、国際地球回転・基準系事業(International Earth Rotation and Reference Systems Service=IERS)が決定しており、これを受けて世界で一斉に、うるう秒の調整が行われています。

本記事執筆時点だと、国際原子時(TAI)と協定世界時(UTC)は37秒差があります。
(TAIの方が進んでいる)


頭ではTAIとUTCの違いを理解しても、37秒差があると言われると、なんだか不思議な気分です。

UTCは、1900年1月1日午前0時からの経過秒数で表示されます。

イギリスでは専ら、WETやCET

グリニッジ標準時GMT、協定世界時UTC、国際原子時TAIと略語が出てきましたが、イギリスに住んでいた時、日常生活で最も使われていたのは何れでも無く、WETやCETでした。

略称名称UTC±該当国
WETWestern European Time±0イギリス
アイルランド
アイスランド
ポルトガル
CETCentral European Time+1オーストリア
ベルギー
クロアチア
チェコ
デンマーク
フランス
ドイツ
ハンガリー
イタリア
リヒテンシュタイン
ルクセンブルグ
マルタ
オランダ
ノルウェー
ポーランド
スロバキア
スロベニア
スペイン
スウェーデン
スイス
EETEastern European Time+2ブルガリア
キプリス
エストニア
フィンランド
ギリシャ
ラトビア
リトアニア
ルーマニア

WETからEETへの旅行は、時差以上にフライト時間が長かったイメージがあります。

夏時間はそれぞれ+1時間、WEST=BST(British Summer Time)、CEST、EESTなど、Timeの前にSummerが挿入されます。



なおイギリス国内では、Interpretation Act 1978のSection 9によりGreenwich mean timeが、民事的に(地域時として)使われる事になっています。

Interpretation Act 1978

References to time of day
9 Subject to section 3 of the Summer Time Act 1972 (construction of references to points of time during the period of summer time), whenever an expression of time occurs in an Act, the time referred to shall, unless it is otherwise specifically stated, be held to be Greenwich mean time.

引用元リンク:http://www.legislation.gov.uk/ukpga/1978/30

まとめ

世界の中心、だったグリニッジ子午線ですが、歴史や時計・船好きには、たまらない場所だと思います!

ロマンがありますよね。

  • グリニッジ標準時GMTは、かつての世界標準本子午線(国際的な経度0度)
  • 現在は、原子時計を用いて精度があがった協定世界時UTCが基準
  • 日常一般レベル(時刻の最大精度が整数秒)では、GMTとUTCに差は無い
  • イギリス含めヨーロッパでは、専らWET、CET、EET等が使用される事も


河港都市グリニッジ(Maritime Greenwich)は1997年世界遺産に登録されています。


最後に、もう一つ。測量技術が発達した今日、現在の国際的な本初子午線(IERS基準子午線)は、なんとグリニッジ子午線を通っておりません!

グリニッジ子午線は、IERS基準子午線から西に5.3101秒、距離にして102.478メートルの位置を通っています。


グリニッジ天文台に行く機会があれば、スマホのGPS位置情報を確認してみると良いと思います。





※本文は以上です。
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