ヒトラーも導入したサマータイム(デイライトセービング)、欧州では廃止へ

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ドイツが発明したとされるサマータイム、当のドイツ人主導によりEUでは2021年廃止予定です。

サマータイム(summer-time)は、デイライト・セービング時間(Daylight Saving Time = DST)とも言われる事がありますが、本記事ではEU指令で使われている表現と平仄を取り、サマータイムで統一したいと思います。

サマータイムとは、いつ、どこで、誰が、なぜ導入したのか、またヨーロッパではなぜ廃止予定なのかドイツ在住者(かつ元イギリス在住者)の視点を交えて、説明してみたいと思います。

サマータイム(summer-time)とは

サマータイム(summer-time)とは、直訳すると「夏時間」です。ヨーロッパでは「夏時間」とされる期間、時計の針を1時間進める事になっています。

渡英して初めて時間調整が入った時は、なんとも不思議な感覚でした。旅行等で時差が生じる訳でも無く、家の中にいるのに朝起きたら1時間早くなっていたからです。

EU指令で原文を確認してみましょう。

Directive 2000/84/EC of the European Parliament and of the Council of 19 January 2001 on summer-time arrangements

Article 1
For the purposes of this Directive “summer-time period” shall mean the period of the year during which clocks are put forward by 60 minutes compared with the rest of the year.

Article 2
From 2002 onwards, the summer-time period shall begin, in every Member State, at 1.00 a.m., Greenwich Mean Time, on the last Sunday in March.

Article 3
From 2002 onwards, the summer-time period shall end, in every Member State, at 1.00 a.m., Greenwich Mean Time, on the last Sunday in October.

引用元リンク:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32000L0084


2002年以降、EUメンバー国ではグリニッジ標準時(Greenwich Mean Time = GMT)を基準に、3月最後の日曜日午前1時から10月最後の日曜日午前1時をサマータイム期間としています。


なお欧州には、3つの時間帯が存在します。

それぞれの地域時間に該当する国一覧、GMTとの違い、協定世界時UTCと合わせて、詳細は以下リンク先の記事に投稿しています。

  • 中欧ヨーロッパ時間 = CET (Central European Time)
  • 西ヨーロッパ時間 = WET (Western European Time)
  • 東ヨーロッパ時間 = EET (Eastern European Time)

いつ、どこで、誰が、なぜ導入

当たり前のようにサマータイムを皆認識していますが、いつ、どこで、誰が、何の目的で導入したのでしょうか。

もしかしたら歴史や社会の授業で扱っていたのかもしれませんが、恥ずかしながらわたしは渡英するまで背景は全く知りませんでした。

第一次世界大戦

ドイツの皇帝ヴィルヘルム2世(Wilhelm)が統治していた時代、第一次世界大戦で燃料不足に見舞われました。

そこで戦争を続ける為、燃料不足を解決する手段として、1916年4月30日に時計の針を調整して、今でいうサマータイムがドイツで導入されたのが、始まりと言われています。

当時ドイツの敵国であったイギリスやフランスも、同じ1916年にサマータイムを導入しています。




ドイツでは終戦後の1919年に、サマータイムが廃止され長くは続きませんでした。

第二次世界大戦

アドルフ・ヒトラー及び国家社会主義ドイツ労働者党が率いるナチスにより、1940年4月1日にドイツで再びサマータイムが導入されました。

サマータイムが導入された理由は、第一次世界大戦時と同じで、燃料不足を解消する為です。


ヒトラーと言えば、ドイツが世界に誇るアウトバーンがありますね。

この時は、枢軸国であったイタリアや枢軸国寄りであったスペインがサマータイムを導入。

ドイツが征服したデンマークやポーランドなど、他のヨーロッパ諸国にもサマータイムを導入するよう、ナチスは圧力をかけていたようです。

戦争が終わり1949年には、再びドイツでサマータイムは廃止されました。

石油危機

1973年には第4次中東戦争でアラブ産油国が石油輸出を停止したため、原油価格が高騰し、世界に衝撃を与えました(第一次石油危機)。

そして1978年にOPEC(石油輸出国機構)が段階的に原油価格の大幅値上げを実施したり、1979年2月のイラン革命、1980年9月のイラン・イラク戦争などの影響で石油価格が暴騰(第二次石油危機)し、東西ドイツでは1980年に再びサマータイムが導入されました。

やはりサマータイム導入の理由として、燃料不足の解消があります。

ドイツで3回目に導入されたサマータイムは、現在(当初執筆時点の2020年10月)も有効です。

EUでは1996年以降、2001年から強制

ドイツ以外のヨーロッパ諸国では、やはり第二次石油危機あたりからサマータイムが導入され、EUとして1996年以降、域内で調和が図られて現在に至ります。

2001年からはEU指令(Directive 2000/84/EC)に沿う形でサマータイムの実施が、EUメンバー国において強制となっています。

サマータイムは2021年廃止へ

2019年3月26日、欧州議会は2021年を期限に、サマータイムを恒久的に廃止する結論(192の賛成票 vs 51の反対票)に至りました。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20190321IPR32107/parliament-backs-proposal-to-end-switch-between-summer-and-winter-time-in-2021


今後は、各メンバー国それぞれがサマータイムのままか、スタンダード(ウインター)タイムのままか、どちらを地域時間とするか選択する事になります。

仮にサマータイムを適用する場合は2021年3月最後の日曜日である28日に、スタンダードタイムを適用する場合2021年10月最後の日曜日である31日に、40年近く続いた最後の時間調整をする事になります。

容易に想像できますが前述の通り欧州には、CET・WET・EETと3つの時間帯が存在しているので、サマータイムかスタンダード(ウインター)タイムか各国がバラバラに選ぶと、6つの時間帯が同時にできてしまい混乱しかねません。

サマータイム廃止は、ドイツ人主導

2019年欧州議会の結論に先駆け、2018年に実施されたオンライン調査(所謂パブリックコメント)では、EU市民の約84%がサマータイム廃止に賛成という結果でした。

Summertime Consultation: 84% want Europe to stop changing the clock
31/08/2018

The European Commission has today published the preliminary results of the public consultation on clock change in Europe. This online consultation, which ran from 4 July to 16 August 2018, received 4.6 million responses from all 28 Member States, the highest number of responses ever received in any Commission public consultation. According to the preliminary results (see annex), 84% of respondents are in favour of putting an end to the bi-annual clock change.

引用元リンク:https://ec.europa.eu/transport/themes/summertime/news/2018-08-31-consultation-outcome_en

一応、過去最高の回答率だったようですが、ユーロスタット(欧州統計局)によると2018年初め時点でEU28か国の総人口は約512.6百万人だったので、全体の約0.9%(4.6百万人)が回答した計算になります。


リンク先は速報版ですがAnnexに、各国の人口比での回答率があります。ドイツは3.79%でぶっちぎりの1位、オーストリアは2位で2.94%、3位のルクセンブルクは1.78%と続きます。

因みに最下位はイギリスで、0.02%です。イギリスは欧州連合離脱(ブレグジット)が決まっていたので、EU指令に縛られなくなる為、国民の関心度が低かったのでしょうか。



そして2018年初めのドイツの人口を調べてみると、82.9百万人(EU全体の16.2%)に及びます。という事は、ざっくり82.9百万人 × オンライン調査の参加率3.79% = 3.1百万人です。

つまりオンライン調査で回答した4.6百万人の内、約67.4%に相当する3.1百万人はドイツ人だった訳です…

これは最早、EU全体がというよりは、ドイツがサマータイムを廃止したかったと言っても過言ではなさそうです。

速報値では無く、正式版としてリリースされた文書を確認してみても、オンライン調査で回答した7割がドイツ人だったとあります。

なぜサマータイムに反対か

なぜサマータイムに反対或いは賛成か、気になりますよね。以下は、2018年実施のオンライン調査の結果です。

反対の割合%理由賛成の割合%
43%健康面への影響15%
20%エネルギー消費の節約17%
14%夕方の余暇活動42%
10%交通の安全13%
9%クロスボーダーの取引・意思疎通、交通等10%
4%その他3%

反対理由の1位は、健康面への影響です。

EU公式リリースの文書でも、サマータイム導入により屋外での余暇活動が増える事によりポジティブな効果が期待できるとする一方で、時間生物学の研究結果は生体リズムへの影響が当初想定していたものより深刻である可能性を示唆するものとなっています。

Health: Summertime arrangements are estimated to generate positive effects linked to more outdoor leisure activities. On the other hand, chronobiologic research findings suggest that the effect on the human biorhythm may be more severe than previously thought. The evidence on overall health impacts (i.e. the balance of the assumed positive versus negative effects) remains inconclusive.

引用元リンク:https://ec.europa.eu/info/consultations/2018-summertime-arrangements_en


ドイツ人は仕事後に寄り道をせず、真っすぐ家に帰る人が多い印象です。

以前住んでいたイギリスでは、パブ文化があったり、スポーツに興じていたり、仕事後の時間の使い方がドイツ人とは異なります。

最後に

渡英した時は、ヨーロッパは緯度が高く冬になると日照時間が短くなる為、紫外線を浴びる事ができるようにサマータイムを導入しているのかと思っていましたが、歴史的背景としては燃料資源の節約が一番の目的でした。

今日においては、国の存続がかかるような有事はなく、惰性というか何となくサマータイムを続けていた事実に驚きです。

日本人として感じた素朴な疑問としては、サマータイムは時間を進めるので、夕方の日照時間は確かに長くなりますが、逆に朝は暗くなるんですよね。夜型人間であれば、サマータイムのメリットを享受できますが、朝型人間であれば、ありがた迷惑かもしれません。


また諸説ありますが、世界に先駆けてドイツが発明したとされるサマータイムを、当のドイツ人がEUで一番廃止に賛成している事実は興味深いものです。


知り合いのドイツ人曰く、ある世代にとってサマータイムは戦争と結びつく負の遺産というイメージが残っているとかないとか。

サマータイムの廃止は健康面への影響に加え、ドイツ人にとって過去との決別という特別な意味も含まれているのかもしれません。



※本文は以上です。
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