「ファンタ」はドイツ生まれ、イタリア育ち。後にアメリカが逆輸入。

決して隠している訳では無いけど、敢えて誰も誕生の物語を売り文句にしない身近な商品があります。

コカ・コーラ社が販売するフルーツ味の炭酸飲料ファンタ(Fanta)」は、ナチス政権時代(1933-1945年)のドイツで生まれました。

筆者は在独者ですが、「ファンタ」がドイツ発祥で、実は歴史ある飲み物という事を知らないドイツ人が結構多い事に驚かされます。



当のドイツ人でさえ、「ファンタ」はアメリカ生まれと思っているので、日本人なら尚更この事実を知らない人が多いのではないでしょうか。

知ったところで別にどうという訳ではありませんが、本記事ではみんな大好き?!「ファンタ」に関する誕生秘話について触れたいと思います。

ファンタ誕生秘話

恐らく世界中で多くの人が、「ファンタ」はアメリカ生まれだと思っているのでは無いでしょうか。

何故なら、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタに本社を置く多国籍企業コカ・コーラ・カンパニー(The Coca-Cola Company)が、「ファンタ」を販売しているからです。


時代は第二次世界大戦(1939-1945年)に遡ります、端的に言えば「コカ・コーラ」の代替品として、ドイツで「ファンタ」が生まれました。



戦前・戦時中・戦後に分けて、主要な出来事を見ていきたいと思います。

戦前

ドイツはノルトライン=ヴェストファーレン州エッセン(Nordrhein-Westfalen Essen)で、1929年に初めて「コカ・コーラ」が製造されました。

ドイツ現地法人のコカ・コーラ社(Coca-Cola GmbH)が設立された、1929年初年度には5,840のボックス(ケース)が販売。10年後の1939年には、4.5百万のボックスが販売され、事業が拡大し多くのドイツ人が「コカ・コーラ」を消費していた事が分かります。

アドルフ・ヒトラー(1889-1945年)率いるナチス党が、ドイツで政権を獲得したのは1933年です。


1938年に、アメリカ人のドイツ現地法人社長Ray Powers氏が交通事故が原因で死去すると、当時Powers社長の右腕だったドイツ人のMax Keith氏が事業を引き継ぎます。

戦時中

アメリカは、ドイツに現地法人を設立した1929年以来、第二次世界大戦に参戦するまで、「コカ・コーラ」の原料をドイツへ輸出していました。

1940年になるとドイツ現地法人のコカ・コーラ社(Coca-Cola GmbH)は、貿易制裁によりアメリカ本社から輸入が止まり、「コカ・コーラ」の製造ができなくなります。


原料のみならずアメリカ本社との連絡が途絶え、窮地に立たされたドイツCoca-Cola GmbHのマネージング・ディレクターMax Keith氏は、事業存続をかけ「コカ・コーラ」の代替となる製品開発に取り掛かります。


戦時中で物資が乏しかった時代でしたが、Keith氏は安定的に原材料の調達を可能にする産業廃棄物の乳清、リンゴに着目します。

チーズを作る過程の副産物として生成される乳清、またリンゴの産地であるドイツは、どちらも容易に入手可能でした。

この乳清と、残り物のリンゴ果肉(搾汁粕)を主に用いたソーダを作り出し、商品名を「ファンタ(Fanta)」と名付けます。

ドイツ語”Fantasie”が由来と言われています。


原材料から想像できますが、初期の「ファンタ」はチーズの味がしたそうで、今日のフルーツ味の「ファンタ」とは異なります。

COCA-COLA DEUTSCHLAND

FANTA: MADE IN GERMANY

DEUTSCHLAND im Jahr 1940, an einem der tiefsten Punkte seiner Geschichte. Coca-Cola Deutschland steht vor einem Problem: Die Einfuhr des Coca-Cola Konzentrats ist verboten und sämtliche Rohstoffe sind knapp. Max Keith, Geschäftsführer der Coca-Cola GmbH in Essen, muss etwas tun. Er beauftragt seinen Chef-Chemiker, nach einer Alternative zu suchen. Ein neues Erfrischungsgetränk muss her. Die Auswahl der Zutaten ist nicht groß, das Ergebnis überraschend: eine Limonade auf Basis von Molke und Apfelfruchtfleisch.

引用元リンク:https://www.coca-cola-deutschland.de/unsere-marken/fanta/fanta-eine-erfindung-made-in-germany-bl


Coca-Cola Deutschlandは、ブランド・マネジメントや商品及びパッケージ開発を管轄するCoca-Cola GmbHと、製造及び販売を管轄するCoca-Cola European Partners Deutschland GmbHの2つに分けられます。


時代的に、競合商品の供給が減る一方であった事もあり、ドイツでは瞬く間に「ファンタ」の消費が拡大し、倒産の危機にあったCoca-Cola GmbHは救われます。

加えて戦時中、ドイツでは砂糖の供給制限があり、甘い「ファンタ」は人気だったそうです。


特別に「ファンタ」は、テンサイ(砂糖大根)の使用が認められていた為、飲み物としてだけでなく、スープやシチューなど料理にも使われていたと言われています。

主婦・主夫の知恵ですね。


一説には、アルコールを摂る事で貴重な労働力が疲弊しないよう、プロパガンダとして爽快な味の「コカ・コーラ」や、代替商品と言える「ファンタ」などソフト・ドリンクの販売促進をしていたという話もありますが、実際のところは良く分かりません。


ドイツでは、1942-1949年の間「コカ・コーラ」の製造が停止され、代わりに1940年から「ファンタ」が製造されていましたが、戦争が終わる1945年には「ファンタ」の製造も終了しています。

戦後

戦後、ナチス政権時代のドイツや戦争を連想させる懸念からか、コカ・コーラ社は、「ファンタ」の販売を辞めます。


アメリカの敵国ドイツで生まれたMax Keith氏でしたが、連絡が遮断されていた戦時中の行動をアトランタ本社が調査した結果、白と認定され、困難な状況下においてCoca-Cola GmbHの事業を継続及び拡大した実績が買われ、その後コカ・コーラ・ヨーロッパの社長に任命されます。


「ファンタ」の販売をやめていましたが、競合他社であるペプシが打ち出してきた様々な商品に対抗する為、「コカ・コーラ」のみ扱っていたコカ・コーラ社は「ファンタ」の再導入を決定、1955年ヨーロッパで販売し始め、世界的大ヒットに繋がります。

今日のフルーツ味に近い「ファンタ」は、1955年イタリアのナポリで生まれました。やはり安定的な調達を可能にする、ナポリ現地の名産品が使われ、オレンジが調合されました。

コカ・コーラ社の本社があるアメリカ合衆国では、1960年から「ファンタ」が発売されています。

1892年にアトランタで設立されてから、「コカ・コーラ」を販売していた同社は、自社製品同士が競合(カニバリゼーション)するのでは無いかと「ファンタ」の取扱いに消極的だったそうです。

誕生75周年で、コカ・コーラ社が釈明

2015年に「ファンタ」の誕生75周年を記念して、オリジナルのボトルを復刻、「ファンタ・クラシック」が販売されます。

その際、広告のフレーズ“die gute alte Zeit”(古き良き時代)にクレームが殺到。

ナチス・ドイツを褒め称えるものと指摘された事(下記BuzzFeedの記事等)を受け、コカ・コーラ社が釈明し、広告が即撤回されるトラブルがありました。

26. Februar 2015, 18:34

Gegenüber BuzzFeed bestätigte Fanta die Echtheit des Videos und dass es wegen der “missverständlichen Passage” offline genommen wurde. Ein Unternehmenssprecher sagte, dass das Video überarbeitet werden soll. “In keiner Form war die ‘gute alte Zeit’ auf die Nazizeit gemünzt. Vielmehr wollten wir an die Kindheit vieler Kunden erinnern. So ist zum Beispiel die Flasche aus den 60er Jahren. Coca-Cola distanziert sich in jeder Form von der Nazizeit.”

引用元リンク:https://www.buzzfeed.com/de/sebastianfiebrig/fanta-feiert-und-verharmlost-nazi-zeit



YouTubeで出てくる復刻された瓶は茶色ですが、「ファンタ」の調合品は「コカ・コーラ」のそれより、紫外線の影響を受けやすかったので、風味が落ちないよう日光から飲み物を守るためです。

ビールや日本酒でも、茶色は確かに多くありますね。

Fanta's 75th Anniversary Commercial (English Subtitles)


https://www.welt.de/wirtschaft/article137917079/Fanta-bereut-seinen-daemlichen-Nazi-Fauxpas.html

最後に

「ファンタ」誕生にまつわる話は、色々な噂が飛び交っていますが整理すると、第二次世界中に米コカ・コーラのドイツ現地法人で働く、ナチスでは無いドイツ人が、アトランタ本社やドイツ第三帝国による指図では無く、コカ・コーラのドイツ現地法人や工場及び従業員を守るため、「コカ・コーラ」の代替品を限られた物資の中で作ったのが「ファンタ」、と言えます。


様々な要素が複雑に絡み合って誕生した「ファンタ」ですが、Max Keith氏らドイツ人の有能さを示すエピソードに違いありません。

貿易制裁で当時は選択肢が無かったとはいえ、輸入に頼らず自国内で必要な原材料を調達する仕組みを整えたのは、目を見張るものがあります。

因みにコカ・コーラ社の具体的な個別商品までは開示されていませんが、同社は英国王室御用達(ロイヤルワラントが付与)です。

コカ・コーラ社の取扱う製品は無数にありますが、もしかしたら英国王室で「ファンタ」が飲まれているかもしれませんね。






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