人権ならぬ犬権!ドイツ驚きの法律と、動物保護施設ティアハイム

イギリスに住んでいた時も、現在住んでいるドイツでも、賃貸物件に住んでいますが、ドイツで家探しをしていて驚かされたことが多数あります。

その内の一つが、ドイツでは犬などのペットと同居可能な物件が極めて多い点です。

イギリスでも日本でも、恐らく多くの国でペットOKの賃貸物件を探すのに苦労するのでは無いでしょうか。


勿論、マンションよりは一軒家、都市部よりは郊外の方がペット可という物件が多いと思いますが、実際現地で生活をしているとドイツは人権ならぬ、「犬権」が確立された国である印象を受けます。


ドイツ連邦食糧・農業省(Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft)のリリース記事によると2019年ドイツでは、およそ5世帯に1家族が犬を飼っているとの事。


本記事では、恐らく世界で一番犬の権利が認められているドイツで、その驚きの法律や動物保護施設ティアハイム(Tierheim)の一部について説明したいと思います。

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ドイツで、犬に関する代表的な法律

ドイツで、犬に関する代表的な法律を記したいと思います。

全部は網羅しきれませんが、ざっと整理してみても以下の通りたくさんあります。

動物保護法(TierSchG)

1972年に動物保護法(Tierschutzgesetz)が施行。

Tierschutzgesetz

§ 1 
Zweck dieses Gesetzes ist es, aus der Verantwortung des Menschen für das Tier als Mitgeschöpf dessen Leben und Wohlbefinden zu schützen. Niemand darf einem Tier ohne vernünftigen Grund Schmerzen, Leiden oder Schäden zufügen.

引用元リンク:https://www.gesetze-im-internet.de/tierschg/BJNR012770972.html

この法律の目的は、その名の通り動物を保護するもので、合理的な理由無しに動物に痛み、苦しみ、危害を加えてはならない、とあります。


一方で条件付きではあるものの、動物実験を認めている点が興味深くもあります。

犬に限定した法律では無くて、動物全般が対象になります。

犬に関する法規命令(TierSchHuV)

2001年犬に関する法規命令(Tierschutz-Hundeverordnung)が施行。

犬の飼い主やブリーダーが守るべき法規命令で、各州の州法と合わせて読みます。
例を挙げると、以下があります。

・犬は、外で十分な運動をする機会や、人との十分な時間を与えられなければならない
・子犬は8週を超えるまでは、母親犬と離してはならない
・犬を外で飼う場合、犬小屋を設置しなければならない
・犬小屋は、犬の大きさにより最低床面積が定められている
・犬を家の中で飼う場合、日光が当たる部屋でなければならない。日光が不足する場合、自然光を取り入れる必要がある
・犬の繋ぎ飼いは、条件を満たした場合のみ

2020年8月にドイツ連邦食糧・農業省(Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft)が、犬の飼い主は1日2回以上、合計1時間以上(つまり1日合計2時間以上)、犬を散歩させなければならない、というTierSchHuV改正案の提出を発表

改正案が通れば2021年から、16の各連邦州で施行予定です。


ドイツの「犬権」事情を知らずに、TierSchHuV改正案のニュースを読むと、驚くかもしれませんが上記の通り、犬が屋外で運動する時間を飼い主が確保しなければならない事は、既に命令法規にあります。


改正案では数歩踏み込んだ形になりますが、自動車の整備ログみたいに、犬の散歩ログをいちいち飼い主が記録する必要が出てくるのか、改正案を遵守しているかどのように誰が確認するのか、実効性については懐疑的な見方をするドイツ人がわたしの周りには多い印象です。



確かに、大型犬も小型犬も、年齢・病気等構わず、現状の改正案だと全部統一されたルールなので、やや現実離れしている感が否めません。

改正案には、ブリーダーや輸送時の動物保護に関する制限・禁止事項等も含まれています。

後者は別の法律(TierSchTrV)があり、TierSchHuV同様に改正案が出されているものです。

輸送時の動物保護に関する法律(TierSchTrV)

こちらはドイツ独自というより、EUの取り決め(EC) No 1/2005)を国内の法律に落とし込んだものです。

ドイツ国内では、Verordnung zum Schutz von Tieren beim Transport und zur Durchführung der Verordnung (EG) Nr. 1/2005 des Ratesで、通称Tierschutztransportverordnungと呼ばれています。

ドイツ連邦共和国基本法(GG)

2002年ドイツ連邦共和国基本法(Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland)第20a条に、「動物保護」が追加されました。

Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland

Art 20a
Der Staat schützt auch in Verantwortung für die künftigen Generationen die natürlichen Lebensgrundlagen und die Tiere im Rahmen der verfassungsmäßigen Ordnung durch die Gesetzgebung und nach Maßgabe von Gesetz und Recht durch die vollziehende Gewalt und die Rechtsprechung.

引用元リンク:https://www.gesetze-im-internet.de/gg/BJNR000010949.html


いわゆるドイツ憲法で、「生命と動物を保護します」という事が書かれています。


国をあげて、動物保護に対する熱意が伝わってきますね。

ドイツにある16の各州法

ドイツにある16の連邦州で、それぞれ定められています。

前述の犬に関する法規命令(Tierschutz-Hundeverordnung)が一般的な事柄に対して、各州法ではより細部に、また危険性が高い犬種に関する規定が定められています。

州名州都州法
バーデン=ヴュルテンベルク州シュトゥットガルトPolizeiverordnung
des Innenministeriums und des Ministeriums Ländlicher Raum
über das Halten gefährlicher Hunde
バイエルン州ミュンヘンVerordnung über Hunde mit gesteigerter Aggressivität und Gefährlichkeit
ベルリン州ベルリンGesetz über das Halten und Führen von Hunden in Berlin
ブランデンブルク州ポツダムOrdnungsbehördliche Verordnung über das Halten und Führen von Hunden
ブレーメン州ブレーメンGesetz über das Halten von Hunden
ハンブルク州ハンブルクHamburgisches Gesetz über das Halten und Führen von Hunden
ヘッセン州ヴィースバーデンGefahrenabwehrverordnung über das Halten und Führen von Hunden
メクレンブルク=フォアポンメルン州シュヴェーリンVerordnung über das Führen und Halten von Hunden
ニーダーザクセン州ハノーファーNiedersächsischen Hundegesetz
ノルトライン=ヴェストファーレン州デュッセルドルフHundegesetz für das Land Nordrhein-Westfalen
ラインラント=プファルツ州マインツLandesgesetz über gefährliche Hunde
ザールラント州ザールブリュッケンPolizeiverordnung über den Schutz der Bevölkerung vor gefährlichen Hunden im Saarland
ザクセン州ドレスデンGesetz zum Schutz der Bevölkerung vor gefährlichen Hunden
ザクセン=アンハルト州マグデブルクGesetz zur Vorsorge gegen die
von Hunden ausgehenden Gefahren
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州キールGesetz über das Halten von Hunden
テューリンゲン州エアフルトThüringer Gesetz zum Schutz der Bevölkerung vor Tiergefahren

ノルトライン=ヴェストファーレン州が、ドイツの中では最も厳しい規則と言われています。

ドイツでは2022年から、オスのひよこ殺処分が禁止されますが、他の州に先駆けて2013年に禁止令を出したのが、ノルトライン=ヴェストファーレン州です。

休息時間(Ruhezeit)

犬に限定された法律ではありませんが、休息時間(Ruhezeit)では犬に関するルールが定められています。

ペットが亡くなった時(TierKBG)

ペットが亡くなった時は、各州で定められたTierkörperbeseitigungsgesetzという法律に基づいて対応します。


ドイツでは2015年にEssenで初めて、人間とペットが同じお墓の中に入れる墓地が誕生しました。
https://hundeinfoportal.de/erster-mensch-hund-friedhof-eroeffnet/



日本の場合を調べてみると、墓地、埋葬等に関する法律で禁止されていない為、ペットを人間と同じお墓に埋葬しても法的には問題無いようです。

勿論、全ての霊園でOKという訳ではないので、個別に要確認ですが、ネットで検索すると確かに色々と出てきます。


ペットを人間と同じお墓に埋葬するのは、宗教・宗派ほか人によっては色々と議論の余地がありそうですが、ペット好きには有難いサービスです。

動物保護施設ティアハイムとは

ドイツ特有と言えるティアハイム(Tierheim)、Tierは動物、heimは家という意味で、民間の動物保護施設(シェルター)です。

基本的に動物の殺処分は禁止、しかし不治の病やケガ等で苦しんでいる場合、動物福祉の観点から安楽死が行われています。


何かしらの理由で、引き受け手がいない場合、動物達の最後の砦としてティアハイムがサポートします。




ドイツの動物保護協会(Deutsche Tierschutzbund)によると、約740の動物保護団体(Tierschutzvereine)と、それに属する約550のティアハイム(Tierheimen)がドイツ国内にあります。


中でも、ベルリンにあるティアハイムが一番有名かと思います。

・16ヘクタールという広大な敷地(サッカーコート22面に相当)で、ヨーロッパ最大規模
・4つのキャットハウス、6つのドッグハウス、小動物のハウス、バードハウス等に加え、家畜類や爬虫類、サルに加えエキゾチックな動物も収容可能
・敷地内にはペット用の墓地、犬用の運動グラウンド等あり


最後に

ドイツでは電車、バス、トラムなどの公共交通機関では、当然のように犬が乗ってきます。
勿論、飼い主同伴ですが。

少々臭いが気になる時もありますが、お互い様?!という事でか、誰も文句を言っている人はいませんね。

ルールを守るドイツ人だけあって、ドイツの犬も本当に良くしつけられていると思います。

どの犬も静かに乗っていますし、飼い主や周囲を困らせるような行動をとる犬を見たことが一度もありません。ただ、やはり犬が他人に噛みついてケガをした、というニュースが無い訳ではありません。


また冒頭の通り、ドイツでは賃貸でもペット可の物件が本当に多いです。
ドイツの国民性として、特に犬は家族の一員という意識が根付いているものと思われます。


ドイツでは、一般家庭にクーラーが設置されていない事が多いです(イギリスも同じ)。日本ほど湿気が無く、真夏日・猛暑日が続かないのと、朝晩は比較的涼しいからです。

ただし、犬などのペットと一緒に生活している家のクーラー設置率が高いのは、ドイツあるあるです。



散々犬の話をしてきましたが、ドイツ国内では、犬より猫を飼っている世帯の方が多いようです。

PETworldwide.netの2019年5月14日付け記事によると、犬は9.4百万匹いて、19%の世帯で飼われている一方、猫は14.8百万匹いて、23%の世帯で飼われています。


手元で調べた限り、ドイツで猫に特化した法律は存在していないようです。





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