不動産売買、取引(成約)価格情報がダダ洩れのイギリス

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イギリスでは、不動産売買の取引(成約)価格情報がダダ漏れというか政府により公開されていて、誰でも容易にアクセス可能です。

渡英して家探しをするまで、全く知らなかったので驚きました。

相対取引である不動産取引は、日本の場合契約当事者、不動産会社、司法書士など関係者以外が、取引(成約)価格を知る事は非常に困難です。


日本では国税庁が路線価図を、国土交通省が地価公示などをそれぞれ公表してはいるものの、実際の取引(成約)価格に基づく全国データベースは存在しません。



日本の登記簿謄本の乙区には、借入金があれば債権額として当然明記されますが、取引(成約)価格情報はどこにも記載されません。


イギリスの事例に驚きつつも、なぜ不動産売買の取引(成約)価格情報が公開されるのか非常に気になったので、自分なりに調べてみた時の記録です。

英国の不動産取引(成約)価格情報を閲覧する方法

英国土地登記所(HM Land Registry)の公式サイトで、不動産取引(成約)価格情報を、誰でも無料で閲覧する事ができます。
https://www.gov.uk/search-house-prices


イングランド及びウェールズの場合、Start now >をクリックすると検索画面になります。

物件名の他、郵便番号や住所、通り名などを指定すると結果が出てきます。

どの物件が、いつ(1995年以降)、いくらの値段で売買されたか確認可能ですが、この無料検索システムで物件の所有者までは分かりません。


鑑定額や見積もりではなく、実際の売買値なので、取引が発生しないと記録されない点は要注意ですが、それでも非常に強力なツールです。

なお本記事内で言及するイギリス(英国)に関しては、便宜上イングランド及びウェールズを指す事とします。

なぜ英国では、不動産取引(成約)価格情報を公開しているのか

なぜイギリスでは不動産取引(成約)価格情報が公開されているか、端的に言えば、それが公共の利益に資すると判断されている為です。



登記情報の開示はLand Registration Act 2002(LRA)の、セクション66により法律で定められています。


実際に支払われた値段の情報はLand Registration (No. 3) Rules 2000により、2000年4月から公開され、英国土地登記所が記録を開始し始めた1995年以降のデータにアクセス可能です。


英国大法官(The Lord Chancellor)が公共の利益に資するとして、不動産取引(成約)価格情報の公開が実現。言わずもがな不動産市場の透明性向上も期待され、またHuman Rights Act 1998には違反しないという整理です。

英国の全ての土地は、国王に所属?

イングランド及びウェールズにおいて、唯一無二の土地所有者は国王(つまり女王、エリザベス2世)であると明記されています。

国王以外の者は、(土地の真の所有者にはなれないけど)土地の使用権を保有する事ができる、と言えますでしょうか。


日本の感覚とは全然違います。

Title to land

4. The Crown is the only absolute owner of land in England and Wales: all others hold an estate in land. Estates, which derive from feudal terms of tenure, originally took many forms but were reduced by the Law of Property Act 1925 to two, an estate in fee simple absolute in possession, generally known as “freehold”; and an estate for a term of years absolute generally known as “leasehold”. Apart from an estate, land may have the benefit of or be subject to other interests, which are rights and obligations relating to the land, belonging to the owner or to a third party.

引用元リンク:https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2002/9/notes


The Law of Property Act 1925が施行された事で、土地の使用権が2パターンに整理されました。

  1. “freehold”
    通称フリーホールド。日本でいう所有権に似ている概念で、期間の定め無く土地の使用が認められた権利です。
    fee simpleとは中世に使われていた用語で、制限がかけられた所有権・権利を意味します。
  2. “leasehold”
    通称リースホールド。日本でいう借地権に似ている概念で、一定期間土地の使用が認められた権利です。


前述した英国土地登記所(HM Land Registry)の公式サイトで、不動産取引(成約)価格情報の検索画面にいくと、Estate typeとして“freehold”か、“leasehold”か出てきます。
https://www.gov.uk/search-house-prices


フルーホールドでも、政府やカウンシル、ユーティリティ企業等により、個人が所有する土地が強制収用されてしまう可能性がゼロではないようです。

あまり現実的には想像しにくいですが例えば戦争が起こったり、その他水や電気などのインフラ事業に際し、公共の利益に資すると判断された場合、Compulsory Purchase Act 1965Acquisition of Land Act 1981などに基づき、土地使用権の保有者による合意の有無に関わらず、政府等は土地を強制的に買い上げる事が可能です。


戦時下における土地(強制)収用に関しては、イギリス国立公文書館(The Natinoal Archives)で、関連記事が保存されています。
https://www.nationalarchives.gov.uk/help-with-your-research/research-guides/land-requisitioned-war/


戦争で有事であれば、致し方ない気も分かりますが、その他インフラ事業等は公共の利益に資すると判断される場合が無数にありそうで、もしイングランド及びウェールズで土地の購入を検討されている場合、特に未開発のエリアほど気を付けた方がよさそうです。


あまり土地が(強制)収容されるケースは無いのかと思っていましたが、意外と農家の方など該当しているようです。
https://www.fwi.co.uk/business/business-management/compulsory-purchase-of-farmland-compensation-explained

日本の場合

日本の場合、路線価図や地価公示に加え、国土交通省が不動産取引価格情報を一部公表しています。

国土交通省が公表している不動産取引価格情報検索では、都道府県・市区町村別に実際の取引価格を知る事ができますが、情報がアンケートに基づいているのと、個別物件までは把握できないので、やはりイギリスのそれと比べると、どうしても網羅性や透明性が低くなってしまいます

不動産取引価格情報検索システム
国土交通省

1 不動産取引価格情報

不動産市場の信頼性・透明性を高め、不動産取引の円滑化、活性化を図るため、国土交通省が不動産の取引当事者を対象に不動産取引のアンケート調査を実施し、その結果得られた回答などについて物件が容易に特定できないよう加工した上で公表するものです。

引用元リンク:https://www.land.mlit.go.jp/webland/note.html


路線価図や地価公示だと、実際の取引値と乖離してしまう場合が多いかと思うので、不動産取価格情報があるだけでも非常に参考にはなりますね。

最後に

イギリスでは、公共の利益に資すると判断されている為、2000年以降は英国土地登記所(HM Land Registry)の公式サイトで、誰でも簡単に不動産取引価格情報が確認できる、という記事でした。


日本では公共の利益よりも、個人情報の保護が優先されているのか、個人が特定されないように配慮された形で一部を公表するにとどまっています。




複数のイギリス人に、不動産取引価格情報が公開される事について、心理的な抵抗感が無いのか聞いてみましたが、特段無いとの事。法律で定められている以上、取引価格情報を開示しない選択肢はそもそもありませんが…

やはりイギリスでは元来、土地は国王のもので、公共性が高い資産として国民に認識されている裏返しという事でしょうか。


なおイギリス現地ではZooplaRightmoveあたりがオンライン物件検索だと有名です!英国土地登記所(HM Land Registry)の公式サイトと合わせて、ご興味があればご覧下さい。




※本文は以上です。
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