英政府に謝罪させた天才数学者、アラン・チューリングとは

2019年7月に、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(Bank of England)が、新50ポンド札の肖像に、アラン・チューリング(Alan Turing)を採用すると発表しました。

イギリスはヨーロッパの中でも、キャッシュレス先進国なので、旅行や出張などで現金を使う機会はあまり無いかもしれませんが、新50ポンド札は2021年末までに流通予定です。


2014年に映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(原題は、The Imitation game)が公開、その主人公が、アラン・チューリングです。



この記事では、アラン・チューリングとは一体何者で、なぜここまで人々から注目されるのか説明したいと思います。

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アラン・チューリング(Alan Turing)とは

アラン・チューリング(Alan Turing)を、分かりやすくまとめると以下の通りです。

  • 1912年6月23日イギリス・ロンドン産まれ
  • ケンブリッジ大学卒
  • 数学者、暗号研究者、哲学者
  • コンピューター科学や人工知能(AI)の父と言われている
  • 第二次世界大戦の英雄(敵国ドイツの暗号機エニグマを解読)
  • 機密情報を扱っていた為、戦争における功績が公にされたのは死後
  • 同性愛者(当時は犯罪)
  • 1952年に、19歳の少年との関係が知られ逮捕。ホルモン治療を余儀なくされる
  • 1954年6月7日に死亡(41歳)、青酸カリで自殺したとされている


かつてイギリスで同性愛は犯罪(1967年まで)

イギリスといっても4つの国に分かれています、アラン・チューリングがいたイングランドに加えウェールズでは、1967年まで同性愛行為は犯罪でした。

なおスコットランドでは1980年、北アイルランドでは1982年になるまで、同性愛は違法でした。

今の時代では、考えられない事です。

政府への懇願活動と、政府からの謝罪、そして恩赦

イングランドで同性婚が認められるようになったのは2014年3月29日ですが、それに先立ちイギリスでは2005年12月5日に、シビル・ユニオンが施行されました。


2009年には、アラン・チューリングを同性愛で告発したことへ謝罪するよう、政府への請願活動がありました。


この活動の結果、当時のイギリス首相ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)が2009年9月10日に、政府として正式な謝罪(刑務所への収監と引き換えに、ホルモン療法を施したこと)を表明しています。
https://www.theguardian.com/world/2009/sep/11/pm-apology-to-alan-turing

アラン・チューリングの死後、55年が経った時の出来事でした。



さらに、アラン・チューリングへの恩赦、有罪判決の撤回を求める声が高まり、イギリス政府は2013年に、アラン・チューリングへ恩赦(Royal Pardon)を与えています。
https://www.theguardian.com/science/2013/dec/24/enigma-codebreaker-alan-turing-royal-pardon

Petition
Grant a pardon to Alan Turing

We ask the HM Government to grant a pardon to Alan Turing for the conviction of ‘gross indecency’.

In 1952, he was convicted of ‘gross indecency’ with another man and was forced to undergo so-called ‘organo-therapy’ – chemical castration.

Two years later, he killed himself with cyanide, aged just 41. Alan Turing was driven to a terrible despair and early death by the nation he’d done so much to save.

This remains a shame on the UK government and UK history. A pardon can go to some way to healing this damage. It may act as an apology to many of the other gay men, not as well known as Alan Turing, who were subjected to these laws.

引用元リンク:https://petition.parliament.uk/archived/petitions/23526


政府への懇願活動ですが、イギリス国籍保有者やイギリス在住者であれば、誰でもオンラインで申請可能です。

10,000票が集まると、政府や議会で議論してもらえたり、何かしらの回答を得る事ができます。



そしてアラン・チューリングが死後恩赦を与えられてから、約3年後の2017年1月31日、イングランドとウェールズで、過去に同性愛行為で有罪になり亡くなった人々が赦免。

過去に有罪となり、生存している人たちは、内務省に届け出ることで記録が抹消される通称「アラン・チューリング法(Alan Turing law)」ができました。

正式名称はPolicing and Crime Act 2017で、所謂アラン・チューリング法に該当する箇所が、Pardons for certain abolished offences etcです。


しかし恩赦は、本来の趣旨として自分が有罪であったと受け入れる事を意味する(イギリス政府としても、当時の法律では、同性愛行為は犯罪であった、という認識)ので、恩赦自体は社会にとって大きな前進である事に間違い無いものの、複雑な感情を抱いている人も多いようです。

ロンドンから一時間で行ける、ブレッチリー・パーク

アラン・チューリングが暗号解読の為、働いていたブレッチリー・パーク(現在の名称は、Bletchley Park Science and Innovation Centre)は、ロンドンから北西に80km程離れた場所にあり、電車や車等であれば一時間程度で到着します。
https://bletchleypark.org.uk/

ウエストミッドランド線(West Midlands Trains)で1時間程度、乗換せずに行けます。

ユーストン駅発(London Euston = EUS)
ブレッチリー駅着(Bletchley = BLY)





歴史、数学、コンピューター科学、人工知能、暗号、LGBTなどに興味がある人は、ロンドンから日帰り可能な、ブレッチリー・パークを訪れてみてはいかがでしょうか。

さらに北西に20km程行くと、靴の聖地ノーザンプトンがあり、合わせておすすめです!

まとめ

時代に翻弄されたアラン・チューリング、映画では同性愛に加え、平然と女性差別(男性より能力が劣る)が描写されていたり、単なる戦争ものとは異なり、様々な問いを投げかける作品だと思います。





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