イギリスからドイツに引越しをして、驚いた事の一つにRuhezeit(休息時間)があります。
閉店法だけじゃないんです、事細かく何でも規則に落とし込むのが好きなドイツ人は、なんと家の中で静かにしないといけない時間帯を法律で定めています。
日本人に関しては、そもそも度を越した騒音を出すような人は、あまりいないと思うので、そこまで神経質になる必要は無いと思いますが、隣人トラブルを避ける為にも、ドイツに住むなら知っておくべき知識です。
この記事では、Ruhezeit(休息時間)とは何か、付随する情報と合わせて説明したいと思います。
Ruhezeit(休息時間)とは
Ruhezeit(休息時間)とは、家の中で静かにしないといけない時間帯を指し、法律で定められています。
Ruhe(静か)とZeit(時間)の2語から成立つ単語で、「h」は発音せずに、「ルーエツァイト」と言います。
厳密には、ドイツにある16の各州、また地域や集合住宅ごとによりますが、概ね以下のRuhezeit(休息時間)が定められています。
- 日曜日と祝日は、終日
- 平日は、午後10時から午前6-7時まで
- 平日は、午後1-3時(但し、連邦レベルでは無い)
なお土曜日は、平日とみなされていますが、祝日が土曜日にあたる場合は、終日Ruhezeit(休息時間)になります。
曲者なのが祝日でして、ドイツでは州によって異なるので注意が必要です。
根拠法
ドイツ語で「Lärmschutz」、日本語だと「騒音対策」と言いましょうか、ドイツ国内では、大まかに三層の根拠法があります。
- Bundesimmissionsschutzgesetz(連邦レベル)
- Landesimmissionsschutzgesetz(州レベル)
- Kommunale Nachbarschaftsgesetze(地域レベル)
個別に見ていきます。
BImSchG(連邦レベル)
連邦レベルのBundesimmissionsschutzgesetz(BImSchG)原文リンクです。
https://www.gesetze-im-internet.de/bimschg/
BImSchGですが、騒音がメインという訳ではなく、騒音や大気汚染、振動等によって引き起こされる、環境への有害な影響を防ぐ為の法律です。
LImSchG(州レベル)
州レベルのLandesimmissionsschutzgesetz(LImSchG)は、各州で定められています。
LImSchGも、騒音や大気汚染、振動等によって引き起こされる、環境への有害な影響を防ぐ為の法律です。
ご参考までに、在留邦人数が一万人超えしている、在デュッセルドルフと在ミュンヘン総領事館がある、二つの州のLImSchG原文リンクを貼っておきます。
ノルトライン=ヴェストファーレン州の場合
デュッセルドルフが属するのは、ノルトライン=ヴェストファーレン州ですね。ケルンや、ドルトムントも同じ州です。
https://recht.nrw.de/lmi/owa/br_text_anzeigen?v_id=4620070525144252966
デュッセルドルフと言えば、間違いなくドイツで最も多くの日本人が集まる都市ですね。
ノルトライン=ヴェストファーレン州では、 平日は、午後10時から午前6時がRuhezeit(休息時間)となっています。
バイエルン州の場合
ミュンヘンがあるのは、バイエルン州です。ドイツ人の中でも、バイエルン出身の人は、郷土愛が特にすごいイメージです。
https://www.gesetze-bayern.de/Content/Document/BayImSchG?AspxAutoDetectCookieSupport=1
そして、なんと言ってもビール!バイエルンには700弱のビール醸造所があり、EUにあるビール醸造所の、実に5割弱が集まっているとも言われています。
バイエルンとビールの歴史は古くからあるのですが、そんな州らしく、なんとビアガーデンに関する法律(Biergartenverordnung)が存在します。
ドイツ閉店法では、国内にある16の州の内、バイエルン州がもっとも保守的なアプローチをしている一方で、ことビールに関しては例外規定を設けて、ビアガーデンでは午後10:30まで飲食の販売がOKとなっています。
なのでバイエルン州において、平日は午後(10時ではなく)11時から翌日午前7時が、Ruhezeit(休息時間)となります。
しかし、単にビアガーデンだけ優遇するだけではなく、しっかりと騒音レベルをエリア区分で、デシベルまで定めているところが、ドイツらしさというか、バイエルン州らしさが垣間見えます。
Nachbarschaftsgesetze(地域レベル)
ドイツでの賃貸アパート(日本でいうマンション)の入居に際し、ハウスルールたるものが大家さんから配られて、ごみ出しとか各種ルールに加え、Ruhezeit(休息時間)に関する説明がありました。
その時は、細かい事まで書いてあるんだなと感心したもので、特段気にしていなかったのですが、思っていた以上に皆さん音に敏感でして、同じ集合住宅内で、頻繁に静かにしましょう、とか部屋番号をピンポイントで掲示板に書かれて注意されたりするケースも散見されます。
イギリスでは、騒音に寛容というか、ルールなんて守らない人が多いのですが、ドイツ人の細かさには本当に驚かされます。
物事をわりとストレートに言うドイツ人なので、白黒はっきりさせるのが好きなのでしょうか。
基本的に入居契約時の書類に、Ruhezeit(休息時間)に関する項目がある筈なので、そこを守っていれば、まず問題無いと思います。
余談ですが、もし外国人の方とルームシェアするなら、ドイツ人であれば、静かな時間をしっかりと設けてくれそうです。
なぜRuhezeit(休息時間)が存在するのか
日曜日は宗教的な観点から、特にドイツ人にとっては特別で、憲法に明記されている位です。
実際に、ドイツ連邦共和国基本法(憲法)を読んでみます。
Art. 139
引用元リンク:https://www.gesetze-im-internet.de/gg/BJNR000010949.html
Der Sonntag und die staatlich anerkannten Feiertage bleiben als Tage der Arbeitsruhe und der seelischen Erhebung gesetzlich geschützt.
訳すと「日曜日と各州が認める祝日は、休息と精神的啓発の日として法的に保障される」とあります。
主婦・主夫の方も皆、憲法の下に、日曜日や祝日は、ゆっくり休めという事ですね。
想像以上に細かいルール
騒音レベルですが、以下に挙げるようなものが、一般的にダメと言われています。
- 掃除機
- 洗濯機
- シャワー
- 洗車(洗車場を除く)
- 電動ドリルやハンマー(DIY他、工事)
- 芝刈機
- 大音量で音楽を聴く(35デシベル以下にしないといけない)
- 楽器の演奏
- パーティ
- 犬など動物の吠える声
一概に全てがダメという訳ではなく、例えば高性能で騒音をほとんど発しない、静かな洗濯機や掃除機なら大丈夫とか、お隣さんが寛容であれば、ある程度許容されるとか、ケース・バイ・ケースではあるようです。
たとえ自宅の庭でも、日曜日に芝刈機をかけて、隣人に騒音被害で訴えられたら、ほぼ負けますし、騒音が原因で、大家さんから賃貸契約を解除されたという話も聞く位です。
一方で、赤ちゃんの泣き声など、どうしようもない生理現象に関しては、隣人は我慢しましょうね、という事になっています。
あとは駐車場などのシャッターの開閉、農業従事者で早朝5-6時に働くのはOKとか、バイエルンのように州によっては、屋外ストランは午後10時以降も営業OKとかもあります。
まとめ
社会に迷惑をかけない、という意味ではRuhezeit(休息時間)は良いものだと思います。
ドイツの住居は、イギリスに比べると気密性が高くて、質実剛健というか、かなりしっかりしていると思うのですが、それに見合う防音性が備わっていないように思います。
日本だと、2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづき、同年10月に運用が開始された、住宅性能表示制度というものがあります。
住宅性能表示制度では、床・壁・窓などの遮音性を高める対策が、どの程度講じられているかなどを評価して表示する項目がありますが、ドイツでは少なくとも賃貸物件では、似たようなものを見かけたことがありません。
ドイツでは持ち家比率が50%程度と、EU27か国の中で堂々のワースト1位です。
必然的に賃貸物件が多く存在する訳ですが、ディベロパーや大家さんにとっては、新築・中古物件に限らず、コストをかけてまで遮音性に拘る理由が、あまり無いのかも分かりません。
※本文は以上です。
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