日本や北米はオートマ車、ヨーロッパはマニュアル車が主流です。しかしEUでは、2019年の新規自動車登録・販売の内、乗用車におけるオートマ車の割合は4割程度で増加傾向にあります。
有効期限は気にする人が多いのですが、海外渡航先によっては依然マニュアル車(MT)が主流なので、オートマ車(AT)限定の免許を保有している方はご注意下さい。
本記事では、盲点となりがちな車の変速機(MT・AT)事情について、海外ヨーロッパ在住者の視点でまとめたいと思います。
今後、留学や赴任、移住など一定期間海外に住む予定のある方の参考になれば幸いです。
海外で車の変速機は、MT・ATどちらが主流か
海外主要国において、車の変速機(ギアボックス)がマニュアル・トランスミッション(MT) or オートマチック・トランスミッション(AT)どちらが主流かまとめた表です。
ソース元は、Rentalcars.comです。
国 | 主流なギアボックス |
---|---|
カナダ | オートマ |
フランス | マニュアル |
イタリア | マニュアル |
日本 | オートマ |
スペイン | マニュアル |
イギリス | マニュアル |
アメリカ | オートマ |
表にヨーロッパは4か国しかありませんが一般的に、日本や北米はオートマ、ヨーロッパはマニュアルです。
そこで、渡欧して車の運転をする可能性がある場合は、日本でオートマ車(AT)限定解除をした方が良い、という記事を書こうとしていたのですが、改めて状況を調べると必ずしもそうでは無さそうです。
ヨーロッパを詳しく見てみます。
欧州の新規自動車登録・販売数、2019年でAT車は4割
EU全体では2019年時点で、新規自動車登録・販売の内、乗用車におけるオートマ車(AT)の割合は依然4割程度です。
日本や北米と比べると、随分と低い数値ですが2001年で、15%を割っていた事を考えると、着実にヨーロッパでオートマ車(AT)が増加しています。
自動車大国ドイツでは、2019年にオートマ車(AT)の新規自動車登録・販売数が、初めて過半数を超えました(2018年は45%)。
ヨーロッパ各国の新規自動車登録・販売の内、乗用車におけるオートマ車(AT)の割合(数値は%)は以下の通りです、ソース元はICCT(International Council on Clean Transportation)。
国 | 2019年 | 2010年 | 2001年 |
---|---|---|---|
イギリス | 49 | 20 | 14 |
ドイツ | 50 | 23 | 20 |
フランス | 40 | 9 | 5 |
イタリア | 24 | 14 | 10 |
スイス | 79 | – | – |
オランダ | 52 | 18 | 13 |
スペイン | 25 | 13 | 4 |
ベルギー | 33 | 15 | 14 |
スウェーデン | 79 | 30 | 19 |
オーストリア | 36 | 14 | 15 |
EU | 41 | 16 | 12 |
日系在留邦人数が多い、ヨーロッパの国トップ10を選びました。
スイスやスウェーデンは、8割近くがAT車です。イギリス・ドイツ・オランダあたりは、約半数に及びます。
一方で南欧イタリアやスペインは、1/4程度にとどまっています。
因みにリストに含めていませんが、ギリシャは確認できるデータ内では最下位で2019年で18%、2010年で4%、2001年で0%でした。
主要自動車メーカー別、欧州のAT車新規登録・販売割合
先ほどは国別でみたので、主要な自動車メーカー別にまとめてみます。こちらもヨーロッパの新規自動車登録・販売の内、乗用車におけるオートマ車(AT)の割合(数値は%)です。
メーカー | 2019年 | 2010年 | 2001年 |
---|---|---|---|
メルセデスベンツ(独) | 85 | 60 | 47 |
BMW(独) | 82 | 38 | 27 |
アウディ(独) | 74 | 29 | 24 |
VW(独) | 43 | 17 | 15 |
プジョー(仏) | 31 | 8 | 5 |
ルノー(仏) | 21 | 6 | 5 |
フィアット(伊) | 5 | 11 | 2 |
ボルボ(瑞典) | 83 | 33 | 28 |
フォード(米) | 24 | 7 | 4 |
トヨタ(日) | 67 | 23 | 14 |
日産(日) | 28 | 12 | 11 |
スズキ(日) | 14 | 9 | 9 |
ドイツやスウェーデン(大株主は中国)のメーカーは、かなりオートマ車(AT)にシフトしてきている事が伺えます。
中国版テスラと呼ばれるEVメーカーのNIOは、ニューヨーク証券取引所に2018年上場しましたし、アジアも熱いですね。
メーカー別で比較すると、大衆車を多く扱っている程、マニュアル車(MT)の割合が依然高いです。これは単に製造コストや維持費・保険料等が割安だからなんだと思います。
新規自動車登録・販売の内、乗用車におけるオートマ車(AT)の割合が1/4程度にとどまっているイタリアですが、国産車であるフィアット(現在はオランダにある多国籍グループが保有)は、そもそもオートマ車(AT)をさほど供給していない事実があります。
日本のメーカーは、プリウスがあるせいかトヨタだけ数値が飛びぬけています。
ヨーロッパ各国のICE(内燃機関)段階的廃止案
ヨーロッパ各国の、新車販売に係るICE(内燃機関)段階的廃止案です。内燃機関とは、シリンダー内でガソリンやディーゼル燃料などを燃焼させるエンジンを指します。
太字はEU加盟国です。
国 | 目標達成 | ICE(内燃機関)の段階的廃止案 |
---|---|---|
ノルウェー | 2025年 | National Transport Plan 2018-2029 |
デンマーク | 2030-2035年 | Together for a greener future, National Energy and Climate Plan |
アイスランド | 2030年 | Iceland’s Climate Action Plan for 2018-2030 |
アイルランド | 2030年 | Climate Action Plan 2019 |
オランダ | 2030年 | Climate Agreement |
スロベニア | 2025‐2030年 | Market Development Strategy for the Establishment of Adequate Alternative Fuel Infrastructure in the Transport Sector in the Republic of Slovenia |
スウェーデン | 2030年 | Climate Policy Action Plan |
スコットランド | 2032年 | Climate Change Plan |
イギリス | 2035年 | Announcement by Prime Minister Boris Johnson |
フランス | 2040年 | La loi d’orientation des mobilités (LOM) |
スペイン | 2040年 | Draft Law on Climate Change and Energy Transition |
スコットランドは、イギリス(United Kingdom)の一部ですが、別途指標を打ち出しています。
EU27か国の内、明確に新車販売に係るICE(内燃機関)の段階的廃止を表明しているのは、確認できる限り7か国です。
フランスやスペインは、オートマ車(AT)の普及率が低いので目標達成が2040年と遅い点に違和感はありませんが、自動車大国であるドイツが何らコミットしていないのは、業界含め様々な事情が背景にありそうです。
地理的にみるとスロベニアを除く東欧は、さっぱりですね。
ハイブリッド車や電気自動車の普及
車の変速機に話を戻すと、ハイブリッド車(PHEV、HEV、MHEV)や電気自動車(BEV)等の普及が、マニュアル車(MT)を上回るオートマ車(AT)の新規自動車登録・販売数を後押ししている事は明白です。
メルセデスベンツは、将来ガソリンやディーゼルなどを使うICE(内燃機関)を減らし(無くすとは断言せず)、またマニュアル車(MT)の販売をしない方針で、ニュースに取り上げられていました。
マニュアル車(MT)の取扱いはA、GLA、Cクラス位でしょうか。
The Drive contacted a spokesperson for Mercedes, who gave the following statement:
引用元リンク:https://www.thedrive.com/news/36919/mercedes-benz-officially-confirms-its-ditching-the-manual-transmission#:~:text=%22We%20will%20reduce%20our%20ICE,a%20new%20generation%20of%20vehicles.%22
“We will reduce our ICE powertrain portfolio by 40 percent until 2025 and up to 70 percent by 2030. This includes that we will not offer manual transmissions in the mid-term. However, this change will happen ‘naturally’ when we change to a new generation of vehicles.”
スウェーデンのボルボは、2017年に将来EVに全面移行する方針を打ち出し、直近のニュースでは2030年までには、販売する全ての車をEVにするよう述べています。同国のClimate Policy Action Planと平仄がとれた形です。
Volvo Cars to be fully electric by 2030
Mar 02, 2021Volvo Cars is committed to becoming a leader in the fast-growing premium electric car market and plans to become a fully electric car company by 2030.
引用元リンク:https://www.media.volvocars.com/global/en-gb/media/pressreleases/277409/volvo-cars-to-be-fully-electric-by-2030
By then, the company intends to only sell fully electric cars and phase out any car in its global portfolio with an internal combustion engine, including hybrids.
自動車メーカー各社、ハイブリッド車(PHEV、HEV、MHEV)や電気自動車(BEV)等の普及に関しては何かしら表明していますね。
最後に
ヨーロッパではマニュアル車(MT)が主流なので、渡欧して車の運転をする可能性がある場合は、日本でオートマ車(AT)限定解除をした方が良い、という記事を書こうとしていたのですが、現状を整理すると…
- 基本的にヨーロッパでは、依然マニュアル車(MT)が主流
- 欧州の新規自動車登録及び販売、2019年でAT車は4割程度(2001年は1割程度)
- AT車は年々増加も、南欧イタリアやスペインなど国によっては出遅れ感あり
- 2030-2040年にかけて、電気自動車(必然的にAT)へシフトする流れ
例えば10年前だったら、確実にマニュアル車(MT)の免許を持っていた方がヨーロッパでは良い、と断言していたと思いますが、上記を鑑みるとオートマ車(AT)限定のままでも(渡航先次第では)良さそう、というのが結論です。
※本文は以上です。
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