イギリスで山が増える怪、丘との違い。

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イギリスに対して、なかなか「山」をイメージし難いかもしれません。

かくいうわたしが、まさにそうでしたが、イギリスに住み始めて国内旅行をする内に、「フットパス」を良く見かけるようになりました。

調べてみたらイギリス中に「フットパス」が張り巡らされていました。「フットパス」とは歩道の事で、なんと法律で「フットパス」と指定されている道は、たとえ私有地であっても、誰もが自由に歩行する権利が定められています。

イギリス本土では、富士山のような3,000メートル級の山が無い一方で、「フットパス」に代表されるよう、ウォーキングが国民的レジャーです。

ハイキング、トレッキング、ランブリングなど全てイギリスでは、ウォーキングと言われる事が多い印象です。


そんなイギリスで、山が増えているんです。2006年から、30程あまり…

地味すぎて、あまり日本人の耳には入ってこないと思いますが、特に地殻変動が頻繁に起きている訳ではありません。

この記事では、なぜイギリスで山が増えているのか、カラクリを説明したいと思います。

イギリス領最高峰の山

山に関する事前情報としてイギリスは4つの王国、それぞれ最も高い山に、イギリスが領有を主張している南極の地域のそれを加えたものです。

王国高さ
イングランドScafell Pike978メートル
スコットランドBen Nevis1,345メートル
ウェールズMount Snowdon1,085メートル
北アイルランドSlieve Donard850メートル
南極でイギリスが領有を
宣言している地域
Mount Hope3,239メートル


日本最高峰の山といえば富士山。吉田ルートと言われる、富士スバルライン五合目が標高2,305メートル。御殿場ルートと言われる、御殿場口新五合目で標高1,440メートルです。

Scafell Pike(978メートル)

  • イングランド最高峰の山
  • イングランドの首都ロンドンから、500km程度
  • いわゆる湖水地方に位置しています
  • イギリス人が選ぶ100名山の内、Scafell Pikeはトップ5にランク
  • Scafell Pike近くには、同ランク1位のHelvellynがあります

湖水地方に足をのばすなら、途中ノーザンプトンにも。

ビジネスには不向きですが、カントリーシューズはやはり格好良いですよね。

どんな場所でも歩けるのに、どこか端正な身のこなしに。

Ben Nevis(1,345メートル)

  • スコットランド最高峰の山
  • スコットランドの首都エディンバラから、250km程度
  • イギリス人が選ぶ100名山の内、Ben Nevisはトップ15位にランク
  • 映画「007 スカイフォール」の撮影が行われた、ハイランド西のグレンコー(Glencoe)と、目と鼻の先

話が逸れますが、初代ボンド役のショーン・コネリーは、スコットランド人ですね。

Mount Snowdon(1,085メートル)

  • ウェールズの最高峰の山
  • ウェールズの首都カーディフから、260km程度
  • イギリス人が選ぶ100名山の内、Mount Snowdenはトップ2位にランク
  • 登山列車あり
  • カーディフからより、陶磁器の町ストークオントレントからの方が近い

Slieve Donard(850メートル)

  • 北アイルランドの最高峰の山
  • 北アイルランドの首都ベルファストから、50km程度
  • イギリス人が選ぶ100名山の内、Slieve Donardはトップ66位にランク
  • イギリスにある4つの王国で、一番首都から近い距離にある山

Mount Hope(3,239メートル)

  • 南極でイギリスが領有を宣言している地域にあるMount Hope
  • 1959年南極条約により、領有権の主張が凍結
  • しかし領有権の主張が、放棄・否定された訳でも無い

ちょっとイギリス領とは言い切れませんが、当のイギリス人からしたら、イギリスでBen Nevisを超えて、Mount Hopeが一番高い山という認識のようです。

英国放送協会BBCの記事でも、かなり強気にイギリス領最高峰はMount Hopeだとしています。
https://www.bbc.co.uk/newsround/42313959

山(Mountain)と丘(Hill)の違い

素朴な疑問で、山(Mountain)と丘(Hill)の違いですが、イギリスと日本の場合を見てみたいと思います。


イギリスの場合

イギリスの国土測量を担っているオードナンス・サーヴェイ(Ordnance Survey = OS)によると、「山は、2,000フィート=609.6メートル以上の高さ」と定義しています。

なので609.6メートル未満の高さは丘、という事になります。



また1920年代までは、山の定義は1,000フィート=304.8メートルだったそうです。

日本の場合

日本の国土交通省国土地理院では、山と丘の違い(基準)は定義してません。

国土の情報に関するQ&A

Q2.9
丘と山を区別する基準は何ですか?

A2.9
国土地理院では定義はしていません.

辞典等によりますと,丘は,その周囲より高いが,山よりは低くかつ傾斜のゆるやかな地形である.山と丘の区別は明確ではなく,この定義に当てはまる地形であっても「山」あるいは「山岳」と呼ばれる場合もあります.

引用元リンク:https://www.gsi.go.jp/kohokocho/FAQ2.html#Q2.9


また、国土地理院では、そもそも「山」の定義をしていません。

国土の情報に関するQ&A

Q2.8
山の始まりは,どこですか?

A2.8
国土地理院では,山の定義はしていません.

辞典等によりますと,山というのは,周りに比べて地面が盛り上がって高くなっているところと言われています.よって,山の始まりは平らな地面が盛り上がり始めたところと考えられます.

ただし,それぞれの山によって異なりますので,地面の高さが標高○○m以上とか,地面の傾斜が○○度以上になったらというようには決めることはできません.

もしあなたが,山の始まりはどこ?という興味をもったなら,その山の前に立って,この辺が山の始まりかなというところを感じて探してみてください.

引用元リンク:https://www.gsi.go.jp/kohokocho/FAQ2.html#Q2.8

最後の方は、少し哲学みたいになってますね。

丘から山に「成る」

前置きが長くなってしまいましたが、ようやく本題です。

オードナンス・サーヴェイ(OS)

イギリスの国土測量を担っているオードナンス・サーヴェイ(Ordnance Survey = OS)ですが、日本語だと「英国陸地測量部」、「英国測量局」などと訳されるようです。

言葉から想像できますが、元々は軍事的な目的で作られた組織でした。OSの歴史は古く、1791年設立。

世の中一般的には、グーグルマップ全盛期の今日ですが、OCは現役で、特にカントリーマップには定評があるようです。

Appも提供しています。
https://www.ordnancesurvey.co.uk/shop/os-maps-online.html

OSの測量精度は、±3メートル

私は測量のド素人なので、±3メートルの精度が高いのか低いのか判断ができませんが、OSは”photogrammetry(フォトグラメトリ=写真測量)”という手法を使う為、この誤差が出てしまうようです。

フォトグラメトリとは、被写体(本ケースでいうと、山や丘)を様々なアングルから撮影し、何百枚・何千枚もの画像を解析し、任意座標等を取得して立体的な3DCGモデルを作成する手法です。

OSは、飛行機から写真を撮っているので、±3メートルの誤差が生じてしまうのかもしれません。

606-609メートルの「丘」に着目

オードナンス・サーヴェイ(Ordnance Survey = OS)によると、「山は、2,000フィート=609.6メートル以上の高さ」と定義しています。

OSの測量誤差が±3メートルなので、606-609メートルとされている「丘」に着目して、実地調査して正確な高さを調べる人が出てきました。

ヒュー・グラント主演で、1995年に公開された映画に触発されたようです。

ウェールズの山 – 予告編 (字幕版)


ウェールズ地方の話で、直訳すると「丘を登って、山を降りてきた英国人」という映画があります。

邦題は「ウェールズの山」ですが、原題は「The Englishman who Went up a Hill but Came down a Mountain」です。

映画の時代は1917年、なので1,000フィートがポイントです。



2018年8月10日付け英テレグラフ紙の記事によると、John Barnard氏とGraham Jackson氏が、共同で実地測量を開始した2006年以降、オードナンス・サーヴェイが分類していた30もの「丘」を、「山」に再分類する事に貢献したとの事です。

「山成り」という訳です。

因みにBarnard氏は、映画が公開された1995年より以前から、活動を続けていたようです。

最後に

以上、イギリスで山が増えている理由は、オードナンス・サーヴェイが写真測量により分類していた「丘」を、実地測量により「山」に再分類されたから、でした。


実地測量という事で、それなりに重い機材を担いで、何時間にも及ぶ測量をして、熱意が凄いというか頭があがりませんね。

際どい高さの山は、ほぼ確認済みのようなので、今後は「山」の定義が変わらない限り、新しく「山」と再分類される「丘」は、あまり出てこないかもしれません。




冒頭の「フットパス」についてですが、「国立公園及びカントリーサイドアクセス法」 (National Parks and Access to the Countryside Act 1949) が1949年に制定。また2000年には、「カントリーサイド及び通行券道」(Countryside and Rights of Way Act 2000)により、公道・私道問わず、道を歩く権利(rights of way)が定義されています。

後者は、CRoW Actとか“Right to Roam” Actと言われたりもしています。 

そこまで高い山はイギリスにはないもの、ウォーキングがイギリス人の生活に深く根ざしているのは興味深いですね。

ロンドン市内は見どころが沢山あって素敵なのですが、実はイギリスならではの牧歌的風景は、カントリーサイドで見れると言っても過言ではなさそうです。



※本文は以上です。
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