なぜイタリア人は午後カプチーノを飲まないのか、ラテとの違いとは

ランチやディナー後の一杯に、決してカプチーノ(Cappuccino)やラテ(Latte)などミルク系コーヒーは口にしないイタリア人。代わりに何を頼んでいるのかというと、エスプレッソ(Espresso)です。

イタリアのお隣スペインでも、同様の事が言えるかと思います。

カプチーノとラテの違いを整理するとともに、なぜイタリア人は午後エスプレッソしか飲まないのか、またコロナ禍のロックダウンで再評価されつつある、伊ビアレッティ(Bialetti)について触れたいと思います。

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カプチーノとは、ラテとの違い

カプチーノとは、フォームミルク(上)、スチームミルク(中)、エスプレッソ(下)の3層により成り立っています。

フォームミルク
空気が入り泡状になったミルクで、ミルクの泡と液体が分離している状態。フワフワしたあれです。

スチームミルク
蒸気で温められたミルクで、ミルクの泡と液体が混ざり合った状態。泡にならなかったミルクの部分です。

エスプレッソ
高温・高圧蒸気のでる専用マシンで、短期間に抽出されたコーヒーのこと。イタリア発祥と言われています。


ラテも同じですが、カプチーノよりスチームミルクの配分が多く、フォームミルクの配分が少ないのが特徴です。また3層の内、エスプレッソとスチームミルクは混ぜられている点がカプチーノと異なります。

以下、一般的な配分を比較した表です。分母を揃えています。

カプチーノラテエスプレッソ
フォームミルク2/61/6
スチームミルク2/64/6
エスプレッソ2/61/66/6



カプチーノの方が、ラテよりミルクが少ない分、エスプレッソ感が強い事が分かります

元々カプチーノが強すぎた(アメリカ人)観光客向けに、よりマイルドなラテが生まれたと言われています。

ラテですがイタリアでは、「カフェ・ラテ(Caffè Latte)」と言わないと、単なる牛乳(イタリア語で”Latte”)がサーブされる事もあるので、ご注意下さい。

なおフォームミルクですが、泡だて器(ミルクフォーマー)があれば自宅でも簡単に作れて、カフェ気分を味わう事ができます。



スチームミルクは専用のエスプレッソマシンが必要です。

午後はミルク系コーヒーを避けるイタリア人

先ほどのカプチーノ・ラテ・エスプレッソを比較した表ですが、カプチーノとラテの共通点はミルク系コーヒーです。

午後の遅い時間でもカフェインは摂りますが、牛乳は口にしないイタリア人、知り合いの複数のイタリア人に聞いたり色々と調べてみたところ、元々イタリアでは、ミルク系コーヒーを始め牛乳が含まれているものは、朝(イタリア人の感覚では11時位まで)に飲むものという認識が一般的のようです。


そして恐らくヨーロッパで最も消化にこだわっている国イタリア、どうやら一部では牛乳は消化に悪いと思っている為、午後はカプチーノやラテなど牛乳を含む飲み物を避ける傾向があるようです。

牛乳は本当に消化に悪いのか

食後にカプチーノやラテなどミルク系コーヒーを飲むと、確かにお腹が膨れる感覚があります。

お腹が膨れる感覚は、牛乳により引き起こされる消化の悪さと何か関連性があるのか調べてみました。

一般社団法人 Jミルク

ウワサ8 牛乳は胃の中で固まるので消化が悪い

牛乳は、とても消化吸収の良い食品です。


● 胃の中でヨーグルト状になり分解(消化)される 
牛乳に含まれているたんぱく質の約80%は「カゼイン」です。 カゼインは、牛乳中ではくっつきあって小さな粒子として分散しています。私たちが牛乳を飲んだとき、胃の中では、胃酸によって固まり(凝集)、ヨーグルトのような状態になります。たんぱく質を分解する消化酵素などが自由に入り込めるすき間の多い構造ですから、どんどん分解(消化)されていきます。消化が悪くなるわけではなく、逆に小腸滞留時間が延長され、より消化性は高まります。

● 牛乳中のカゼインは熱を加えなくても消化の良い優れたたんぱく質 
肉を加熱すると消化が良くなります。加熱により、たんぱく質が変性して消化酵素の作用を受けやすくなるからです。牛乳中のカゼインは、肉のように熱で変性させなくても、そのままの形で消化可能な構造を持っています。食品のたんぱく質の消化率を比較しますと、牛肉97.5%、鶏卵97.1%に対し、牛乳は98.8%。牛乳の消化率は主要なたんぱく質食品の中でも最も優れています。 牛乳は、とても消化の良い食品なのです。 

引用元リンク:https://www.j-milk.jp/knowledge/food-safety/uwasa8.html

牛乳は、むしろ消化が非常に良い食品という事でした。


スパゲッティを食べる際に、フォークとスプーン両方使う事は、マナー違反である事を教えてくれた、日本好きの優しいイタリア人に、それとなく共有したら喜んでいましたが、理屈抜きにしても、やはり午後はエスプレッソしか飲まないようです。

コロナ禍で再評価された、伊ビアレッティ

日本でいう急須みたいな存在で、イタリアの各家庭に1つはあると言われている伊ビアレッティ(Bialetti)のポット。

同社は創業1919年と、100年を超える歴史を持つイタリア製のエスプレッソマシーンメーカーです。


完成された機能美で、発明(欧州特許庁: EP1208781A2)された1933年から変わらない八角形のモカ(Moka)ですが、一度は見たことがある人も多いのではないでしょうか。



イタリア本国では、社交の場としてバールでエスプレッソを飲む人が増えたり、コーヒーチェーンが乱立したりで、昔のように自宅でコーヒーを淹れる機会が減り続け、2018-2019年頃にはビアレッティの経営状態の悪化が指摘(リストラクチャリング実施も)されていました。
https://www.mergermarket.com/info/bialetti-industrie-working-studio-zulli-find-new-investor-succeed-sculptor-sources


しかし2020‐2021年にかけて、コロナ禍のロックダウンによりカフェやパブ、バール、バー、レストラン等に行けなくなったり、在宅勤務する人が劇的に増えた為、食器棚の奥に置かれ使われなくなったモカポットを取り出したり、新たに購入する人が増え、ビアレッティが再評価されるようになったと言われています。

実際、イタリア証券取引上に上場しているビアレッティ株は、2021年2月に入り急上昇しています。



1933年の世界恐慌時、不景気で不必要な支出をカットする中、イタリアを始めとするヨーロッパではコーヒーは嗜好品では無く、生活必需品という位置付けだったので、モカポットが人々の生活に強く根付いたと言われています。

わたしは現在ドイツに、その前はイギリスに住んでいましたが、確かにイタリア人でなくてもモカポットは多くの人に愛用されています。


経済的なメリット(カフェで買うより安い)に加え、誰がやってもある程度の仕上がりになる事を売りにした、カプセル式のエスプレッソマシン(ビアレッティ製も各種あります)が流行して久しいですが、モカを使ったエスプレッソを淹れる昔ながらのやり方は、何ものにも代えがたい儀式と言えます。

両刃カミソリ好きには、モカのアナログ感が結構ツボだったりします。

最後に

カプチーノとラテの違い、なぜイタリア人は午後エスプレッソしか飲まないのか調べた時の記事でした。

近年では多様性を認める風潮もありますが、海外ヨーロッパ等で本場イタリア人のように振る舞うなら、ミルク系のコーヒーは午後飲まなければ良いし、構わず飲みたければ個人の自由なので注文すれば良いと思います!


スパゲッティにスプーンを使うよりは、そこまでマナー違反という感覚にはならないと思いますが、外国人慣れしていないイタリア人(の店員さん)は訝しく思うかもしれません。


因みにスチームミルクが作れる、高性能なエスプレッソマシンも当然良いのですが、それなりにお値段がはるのと圧力があるモデルは大きくて場所を取るんですよね…

飲むまでの準備に手間と時間がかかり、メンテナンス面(ヨーロッパ独特の問題としては、硬水である地域が多い)などを鑑みると、シンプルで耐久性のある伊ビアレッティのモカは、ヨーロッパを中心に多くの人々に受け入れられてきた理由が何となく分かります。


以前はガスコンロ(直火)用だけでしたが、現在はIH対応のモカ・インダクションという製品も出ています。

元々イタリアではストーブの上にモカを置いて、コーヒーを淹れていたようです。風情がありますよね。直火用のモカなら、キャンプなど屋外でも使え、幅が広がります。



イギリスやドイツだと、暖房はセントラルヒーティングと言って家全体を温かくしますが、日本の場合、このクラシックなトヨトミの石油ストーブは、モカの雰囲気と合いそうです。





※本文は以上です。
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