真面目なドイツ人が狂喜乱舞する、年末年始の花火と爆発物法

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ドイツ版「踊る阿呆に見る阿呆」。知的で、実用性や効率性を重視する印象が強いドイツ人、ヨーロッパの中でも、日本人と通じる点が多い人種とされているかと思います。

どちらかというと真面目なドイツ人が、ここぞとばかりに本気を出して花火をやる日が、大晦日(ドイツ語でSilvester)です。

ドイツには速度制限が無い高速道路(アウトバーン)があったり、脱獄する事が罪に問われなかったり、日曜日・祝日は営業が禁じられている閉店法や、開放的過ぎるFKKなど色々とぶっ飛んだ法律があります。

本記事では、ドイツの爆発物法(Sprengstoffgesetz)と合わせて、年末年始どのように人々が過ごすのか、ドイツ在住の筆者が説明したいと思います。

年末年始の花火は、一般人が主役

世界各国で新年のカウントダウン花火大会など催されていますが、ドイツ流はひと味違い、一般の歩道等で地域住民の有志により行われます!

所謂、花火大会はドイツでもありますが、一般家庭が自発的に行う花火は、何か組織立って準備・運営などはせず、各々が家の前などで好き勝手に花火をする為、わりと無法地帯になります。


どのように無法地帯かと言うと、使用される火薬量が半端ないんです。業界団体VPIによると、大晦日にドイツで使用される花火は、日本円に換算すると155億円程度…

居住エリアだろうと、街全体が爆発するという描写に近いものがあるかと思います。

New Year Walk in Neukölln 2 🇩🇪 Berlin Germany [4K] Silvester 2020


New Year Walk in Neukölln 1 🇩🇪 Berlin Germany [4K] Silvester 2020


線香花火みたいな儚さなど皆無です。


新年へのカウントダウンが始まるにつれ、止まる事のない爆竹音と白煙で、辺り一面が異世界かと思うほどです。

一般家庭が行う花火は、特定の地域だけでなくドイツ全土に及びます。

ドイツ爆発物法(SprengV)とは

ドイツでは爆発物法(Sprengstoffgesetz)があり、花火は4つのカテゴリーに分類されます。

各カテゴリーに付されているアルファベットは、恐らくFireworks / Feuerwerke(日本語で花火)の頭文字を取ったのだと思います。また数字に比例して、火薬量が増えます。

EU域内では花火の取扱いに関して、使用方法や目的・危険度・騒音レベル等に基づき、EU指令(DIRECTIVE 2013/29/EU)である程度統一されています。

なおドイツではライセンスを保有しない一般人は、カテゴリーF2の花火まで取扱う事ができます。




Verband der pyrotechnischen Industrie(VPI)という業界団体によると、ドイツでは年間130百万ユーロ相当(執筆時点の為替で、165億円程度)の爆発物が消費され、内94%程度(155億円程度)が大晦日に使われるそうです。

カテゴリーF1(★☆☆☆)

カテゴリーF1に分類される花火は火薬量が最も少なく、ドイツでは年中販売されています。

EU指令では次のように定義されています。

category F1: fireworks which present a very low hazard and negligible noise level and which are intended for use in confined areas, including fireworks which are intended for use inside domestic buildings;

引用元リンク:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32013L0029



以下、F1に分類される代表的な花火の種類です。室内のテーブル上で使われる、危険性が極めて低い花火をイメージすると良いと思います。

Sparklers
パチパチと閃光を放つ手持ち花火。誕生日ケーキに刺さっている花火や、線香花火など。

Poppers
クラッカーなどのパーティ用花火。

Streamers
ストリーマー、少量の火薬を使って紙吹雪などをまきます。

 


F1は室内で使用できる商品が多いですが、室外でしか使えない花火の場合は、パッケージに注意書きする事が定められています(ドイツ爆発物第18条3項)。

§ 18 

(3) Der Hersteller hat Feuerwerkskörper zusätzlich mit den folgenden Angaben zu kennzeichnen:

1. Feuerwerkskörper der Kategorie F1: gegebenenfalls die Angabe „nur zur Verwendung im Freien“ und Schutzabstände,

引用元リンク:https://www.gesetze-im-internet.de/sprengv_1/BJNR021410977.html


因みにドイツでは爆発物法第20条1項で、花火を扱う事ができる年齢が決められています。F1に分類される花火は、12歳以上が取扱い可能です(EU指令と同じ)。

カテゴリーF2(★★☆☆)

カテゴリーF2に分類される花火は、F1より火薬量が多く、室外である自宅の庭や公園、歩道等で一般人が扱う事が想定されている花火です。

EU指令の定義です。

category F2: fireworks which present a low hazard and low noise level and which are intended for outdoor use in confined areas;

引用元リンク:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32013L0029



年末年始にドイツで一般人が行う花火は、カテゴリーF2に分類されるものです。

以下、F2に分類される代表的な花火の種類です。

Small rockets
比較的小さなロケット花火。

 

Fountains
噴水の様に花火が噴き上がる噴出花火。地面に置くものが基本かと思いますが、手持ちするドイツ人も多いです。

Bangers
爆竹など。

 


F2に分類される花火ですが、ドイツでは基本的にライセンスのあるお店でのみ販売可能です。しかし例外規定があり、年末最後の3営業日(12月29日から31日が多い)は、ライセンスが無くても販売可能です(爆発物法第24条1項等)。


爆発物法第23条2項で、F2は1月2日から12月30日の間はライセンス保有者のみ、12月31日と1月1日は例外規定として、規定の年齢に達していれば(後述)誰でも取り扱う事ができます。

§ 23 

(2) Pyrotechnische Gegenstände der Kategorie 2 dürfen in der Zeit vom 2. Januar bis 30. Dezember nur durch Inhaber einer Erlaubnis nach § 7 oder § 27, eines Befähigungsscheines nach § 20 des Gesetzes oder einer Ausnahmebewilligung nach § 24 Absatz 1 verwendet (abgebrannt) werden. Am 31. Dezember und 1. Januar dürfen sie auch von Personen abgebrannt werden, die das 18. Lebensjahr vollendet haben.

引用元リンク:https://www.gesetze-im-internet.de/sprengv_1/BJNR021410977.html


つまり年末になると、販売者・購入者何れもライセンス無しで、F2の花火を取り扱う事ができるので、ドイツ国内にある”Edeka”、”Netto”、”Lidl”、”REWE”、”Aldi”、”Penny”、”Norma”など普通のスーパーで、カテゴリーF2の花火を買い、大晦日に使う事ができます。


F1は12歳以上でしたが、F2は18歳以上のみ取扱い可能です(第20条1項及び第23条2項)。EU指令では16歳以上としているので、ドイツは若干厳しくなっています。


F1-2に分類される花火は、有効なCEマーク付きであれば年中ドイツ国内に輸入可能で、大晦日の花火に力を入れているドイツ人は、欧州大陸から取り寄せて当日臨みます。

カテゴリーF3(★★★☆)

カテゴリーF3に分類される花火は、F2より火薬量が多く中規模サイズの花火です。

EU指令の定義です。

category F3: fireworks which present a medium hazard, which are intended for outdoor use in large open areas and whose noise level is not harmful to human health;

引用元リンク:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32013L0029


F2に続きF3も屋外での使用が前提ですが、”large open areas”と”human health”という言葉が出てきました。

ドイツでF3に分類される花火を購入するには、18歳以上(爆発物法第20条1項)かつライセンスを保有(爆発物法第22条2項)していなければなりません。

年齢基準はEU指令と同じです。恐らく一般人であれば、F3に分類される花火に触れる事は無いかと思います。

カテゴリーF4(★★★★)

カテゴリーF4に分類される花火は、F3より火薬量が多く大規模サイズの花火です。

EU指令の定義です。

category F4: fireworks which present a high hazard, which are intended for use only by persons with specialist knowledge (commonly known as fireworks for professional use) and whose noise level is not harmful to human health.

引用元リンク:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32013L0029

F4は、専門知識を有したプロ向けの花火です。

ドイツでF4に分類される花火を購入するには、21歳以上(爆発物法第20条1項)かつライセンスを保有(爆発物法第22条2項)していなければなりません。

またF3-4に分類される花火は、ライセンス保有者のみドイツ国内に輸入する事ができます。



年末年始以外に、例えば誕生日・結婚式などでF2以上のカテゴリーに属する花火を使いたい場合は許可を取る必要がありますが、その場合でも病院、教会、ケアホーム、加えて茅葺屋根など可燃性の恐れがある近くの場所では、花火を使用する事が禁じられています(爆発物法第23条1項)。
 

その他、詳細ルールは各連邦州や自治体レベルで定められています。旧市街は建築物を保護する目的で、花火が禁じられている場合が多いかと思います。

最後に

「踊る阿呆に見る阿呆」という、徳島の阿波踊り歌の出だしがあります。

「同じ阿呆なら踊らにゃ損々」と続くのですが、まさにドイツにおける年末年始の花火は同じことが言えるかと思います!

最後にカテゴリー別に整理したものです。

F1F2F3F3
危険性極めて低い低い中程度
騒音無視できる程度低騒音レベル人体に害は無い程度人体に害は無い程度
場所屋内
屋外の狭い空間
屋外の狭い空間屋外の広い空間屋外の広い空間
対象年齢12歳以上18歳以上18歳以上21歳以上
ライセンス不要
*年末年始は例外規定あり

(例外規定なし)

(例外規定なし)
輸入免許保有者のみ可免許保有者のみ可


一応F2は低騒音レベルとされているのですが、年末年始に一般人が行う花火に関しては、かなり騒々しいと思います。

元日含めて数日間は、不燃焼だった火薬が弾ける音が聞こえたり、花火の残骸が歩道に放置されていたりするのも、またドイツの風物詩だったりします。



2020年12月はコロナ禍の影響で、各地でクリスマスマーケットや大晦日の花火大会はキャンセル、またロックダウン中ですが、大晦日と元日に一般人が行う花火は禁じられていません。


ベートーヴェン(Beethoven)の交響曲第9番の第4楽章で歌われる、詩人フリードリヒ・シラー(Friedrich Schiller)の「歓喜の歌」(An die Freude)で、”feuertrunken”という言葉が出てきます。



火のように酔いしれるドイツ人から、花火をする自由を奪ってしまうのは、外国人には理解できない何か政治的タブーがあるのかもしれません。



※本文は以上です。
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