ロンドンの地下鉄(Tube = チューブ)やバス(Bus)、オーバーグラウンド(Overground)、DLR(Docklands Light Railway)など公共交通機関に乗る際、オイスターカード(Oyster Card)が必須という情報が散見されます。
確かに現金払いは不可ですが多くの場合、旅行者がわざわざオイスターカードを買う必要はありません。
本記事では、そもそもオイスターカードとは、なぜオイスターカードは不要と言えるのか、オイスターカードに代わり主流となりつつあるカード等について、元ロンドン在住者が説明したいと思います。
オイスターカードとは
オイスターカードとは、ロンドン交通局(TFL = Transport for London)がキャッシュレス決済を促す為、2013年に導入された決済方法です。
touch in、touch outといって黄色の読取り機に、オイスターカードをかざして使います。
※なおバスの場合は、乗車時にtouch inするだけでOKです。
簡単に言うと日本でいうスイカ(Suica)、パスモ(PASMO)、イコカ(ICOCA)みたいなものです。
キャッシュレス決済により、券売窓口の負担軽減、またペーパーレス化に繋がっています。
まずはバスから開始されたオイスターカード決済ですが、その後地下鉄(Tube)などにも導入され、当初は現金決済も併用していましたが、徐々にキャッシュレス決済に完全移行しました。
メリット
- カード紛失時の影響が限定的(希望すれば名前の登録可)
- 自動トップアップ(チャージ)機能あり
- 万が一残高が無くても、一回はデポジットの範囲内で乗車可
- ロンドン在住で18歳以上の学生であれば、割引制度あり
- ロンドン在住の18歳未満は、各種割引制度あり
- 直近の利用履歴を、駅の券売機で確認できる
オイスターカードに限った話ではありませんが、5歳未満の子どもは、料金を支払った大人に同伴すれば無料です。
自動トップアップ機能を使わなければ、クレジットカードやデビットカードのように銀行口座と紐づかないので、セキュリティは高まります。
またオイスターカードの何よりのメリットは、学生向け割引制度と言えます。
デメリット
- カードが1枚増える
- カードの用途が、ロンドンの公共交通機関の支払いに限定
- カード購入時、5ポンドのデポジットが必要
- 自動トップアップ(チャージ)機能を使わないと、残高管理が面倒
- カード返却時の手続きがやや面倒(簡単ですが、面倒なんです)
- 利用料金が特別安くなる訳では無い(除く学生など)
- 一週間における利用料金の上限額が無い
学生など割引制度が適用される人以外は、オイスターカードを使う経済的なメリットはあまりありません。
旅行者であれば、最終的にオイスターカードを返却すると思うので、その手間も惜しいかと思います。
オイスターカードの返却及びデポジットの返金は、駅の自動券売機で手続きをしようとすると、残高が10ポンド以下でないと受け付けてくれません。
なので、オイスターカードにトップアップし過ぎると最悪、カードを返却してデポジットと未使用分の残金を取り損ねてしまうリスクがあります。
日本のスイカみたいに、駅の自販機やお店で何か購入するといった事はオイスターカードではできません。
残高が10ポンド超でも、カードの返却と残金の請求はできると思いますが、手続きがより煩雑で、自動券売機で完結しなかった筈です。
鉄道好きな方であれば、記念にオイスターカードを持ち帰っても良いと思いますが…
なぜオイスターカードは不要なのか
ロンドン交通局は、キャッシュレス決済を更に促進させる為、2014年からクレジットカードやデビットカードによるコンタクトレス決済に対応しています。
要は、非接触決済機能搭載のカードを用いた決済方法です。非接触決済機能搭載のカードは、タッチ決済なんて呼ばれたりもしています。
アップルペイ、グーグルペイにも対応していますので、物理カードが無くても問題ありません。
オイスターカードもコンタクトレス決済なのですが、本記事では非接触決済機能搭載のクレジットやデビットカード・スマホを使った決済を、便宜上コンタクトレス決済とします。
以下は、日本におけるMastercardとVisaのコンタクトレス決済に関して説明した日本語Youtubeです。
コンタクトレス決済のマークに見覚えがある人も多いのではないでしょうか。
当初こそセキュリティ上、銀行口座に紐づいているカードを公共交通機関の決済に使う事に戸惑いがありましたが、スキミングなど特段被害が出ていなかったり、何よりオイスターカードの使い道が公共交通機関しかないので、わたしは結局コンタクトレス決済を使う事になりました。
オイスターカードには残高が一定の金額に達すると、自動でトップアップ(チャージ)するオプションがありますが、自動トップアップ機能を使っていれば、オイスターカードを敢えて持つ理由がありません。
またオイスターカードもコンタクトレス決済も、1日における利用料金の上限額設定があるので、利用するゾーン次第で指定された上限額に達すると、それ以上利用料金がチャージされなくなります
。
しかし、一週間における利用料金の上限額設定があるのは、コンタクトレス決済(月曜から日曜の間)だけです。
主流は、コンタクトレス決済機能が搭載されたカードやスマホ
わたしの周りでは、いつからか気づいたらほとんどの人が、オイスターカードではなくコンタクトレス(非接触)決済機能が搭載されたカード、或いはスマホ端末を使って、ロンドンの公共交通機関を利用していました。
メリット
- 日次に加え、週次における利用料金の上限額設定がある
- 既に非接触決済機能が搭載されたカードを保有していれば、オイスターカードを買わなくて済む
- トップアップ(チャージ)する手間が無い
- オイスターカードのように、残高を気にする必要が無い
- オイスターカードのように、返却やデポジット及び残金の返金手続きをしなくて良い
- アップルペイ、グーグルペイ等に対応
オイスターカードが導入された当初こそ、現金払いだと割高になる為、ロンドン市民は皆一斉にオイスターカードを使い始めました。
しかしコンタクトレス決済に対応した2014年以降は、敢えてオイスターカードを使い続ける、硬派なロンドン市民を見かける事は少なくなったと思います。
デメリット
- 大人が使用する前提なので、学生などは割高になるケースあり
- 子連れだとオイスターカードを使った方が割安になる場合が多い
- イギリス国外で発行されたカードの場合、コンタクトレス決済機能に対応していても、使えない場合があり要注意
- 直近の利用履歴は、駅の券売機で確認不可(別途、要登録)
- カード紛失時の影響は大きいが、回避方法あり
ロンドン交通局によると、特に使用不可なカードのリストは公表していないので、こればかりは実際にtouch inして試すしかなさそうです。
コンタクトレス決済機能が搭載されていれば良いのでクレジットやデビットカードのみならず、レボリュート(Revolut)やワイズ(Wise)などのプリペイドカードも使えます!
プリペイドカードを使うメリットは、銀行口座に紐づくクレジットやデビットカードの紛失リスクを抑える事ができる点です。
英国発レボリュートは、日本でも2020年に正式ロンチしたので、日本からの旅行者に大変おすすめのプリペイドカードです。
英国発ワイズ(旧トランスファーワイズ)は、以下ご参考までに。
ボーダレス口座が、日本に導入される事に期待です。
7日間ロンドンに滞在する場合でコストを比較
利用するゾーン、曜日、時間によってはトラベルカード(紙ベース、或いは購入場所によってはオイスターカードで)が安い場合があります。
オイスターカード、コンタクトレス決済機能が搭載されたカード、トラベルカードの3種類を比較してみます。
例えば、旅行者が一番使うであろうゾーン1-2に関して料金を比較してみます。
対象ゾーン | Pay as you go 終日 | Pay as you go 月曜から日曜* | Travelcards 終日 | Travelcards 7日間 |
---|---|---|---|---|
カードの種類 | オイスター コンタクトレス | – コンタクトレス | トラベル | トラベル |
Zone 1-2 | 7.20ポンド | 36.10ポンド | 13.50ポンド | 36.10ポンド |
*Pay as you goの7日間ですが、注意点として月曜から日曜でカウントされます。またコンタクトレス決済のみ対象で、オイスターカードは対象外です。
どういう事かと言うとPay as you goもTravelcardsも7日間券は同じ料金ですが、Travelcardsは任意の曜日からカウントが開始できる一方、コンタクトレス決済はあくまでも月曜からカウントが開始されます。
なので、コンタクトレス決済の場合、連続した6-7日間が日月に跨る様だと、Travelcardsであれば36.10ポンドだった週次の利用金額上限を超える可能性があります。
連続した5日間以内しか公共交通機関を使わないようなら、オイスターカードかコンタクトレス決済機能が搭載されたカードを使った方が、トラベルカードを買うより割安です。
最後に
ロンドン観光というとオイスターカードとセットで語られる事が多いですが、ロンドン在住の学生、また子連れの旅行者以外にとって、実はオイスターカードを使う経済的なメリットは現状あまり無いという記事でした。
どのゾーンを行き来するのか、各種割引の適用有無などによって様々なケースがあるかと思うので、ご利用前にロンドン交通局の公式サイトでご確認下さい。
https://tfl.gov.uk/fares/
そして繰り返しですが、オイスターカードの代わりに、またセキュリティの観点から、ロンドン在住者(除く学生)や多くの旅行者に強くお勧めなのが、外貨決済・外貨両替・海外ATM引出等の手数料が一定額まで全て無料のレボリュートです。
※本文は以上です。
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