イギリスに住むことになったら、かかりつけ医GPに登録しておきましょう。
この記事ではGP登録と、日本とは異なるイギリスの基本的な医療周辺情報の説明をしたいと思います。
GP登録方法だけ確認したい方は、3. GPの登録方法 へおすすみ下さい。
GP、NHSとは
GPとはGeneral Practitionerで、日本語だと一般医と訳されており、まさにかかりつけ医です。
NHSはNational Health Serviceで、イギリスの国民保険サービスです。
GPは自営業の形態をとっており、NHSとの契約(General Medical Services)に基づきサービスを提供しています。GPという括りでも、場所によって全くの別物なので、事前登録が必要という訳です。
GPには、7桁のGMC (General Medical Council) 番号が割り振られます。
医者の名前やGMC番号で、以下のリンクから経歴など、結構詳細な情報を確認する事ができます。
https://www.gmc-uk.org/registration-and-licensing/the-medical-register#searchTheRegister
GPはいくつも登録はできません、変更は自由ですが、一人ひとつのGPに通う事になります。
GPの特徴
原則無料
但し処方薬や歯科治療などは、多少実費負担になる場合があります。16歳以下60歳以上、妊娠中や出産後1年間は、この実費負担が免除されます。
処方薬に関しては、卸売価格に関わらず、一回につき10ポンドとか固定金額なので、処方箋が無くても買える物に関しては、Pharmacy(BootsやSuperdrugなどのドラッグストア)で、個人的に買ったほう安い場合もあります。
日本人にとっては実質有料
原則無料のイギリス医療という事で、イギリス国外から、医療・出産目的で、移民が押し寄せた経緯があったとか、そもそもNHSが慢性的な予算不足だった事もあり、2015年4月6日からVISA申請時に、イミグレーション・ヘルス・サーチャージ(Immigration Health Surcharge = IHS)として、EEA圏外の人が、NHS利用料を一括前払いする仕組みが投入されました。
参考記事リンクです: https://www.gov.uk/government/news/uk-introduces-health-surcharge
就労、学生、扶養者、年齢問わず、イギリスに6か月以上住む場合は、VISAの全期間をカバーする料金を払わなくてはなりません。IHSは免除規定があるので、詳細はVISAエージェント等にご相談下さい。
待ち時間が長い
無料だから仕方ないです。
風邪を引いて症状が悪化したので、GPに予約を取ろうとしたら、一週間後が最短で、実際の診察日には、すっかり症状が改善して、GPで診察してもらう必要が無くなったという話はよく聞きます。
GPによっては、当日の予約でもアポが入ると思いますが、数日待つのは当たりまえです。
日本語通訳を頼める
GPは原則英語ですが、医者の出身地でいうと必ずしもイギリスだけという訳ではなく、一定割合で移民も存在します。
わたしの場合、イタリアやマレーシア出身の方が担当してくれた事がありました。
日本人のGPに会った事はありませんが、どうしても英語ができない人向けには、個人負担が一切ゼロの通訳サービスをつけてくれますよ。その通訳を頼むのに、英語が必要なのですが。
ただ通訳の人とGPのアポが同じ時間で取れない場合は、アポ自体が先延ばしされるので、一長一短です。
また恒常的にNHSは予算不足なので、通訳といった医療行為でないサービスについては、今後カットされるリスクも認識しておいた方が良さそうです。
通常の診察
イギリスでは、何でもまずGPです。事前に予約した上で診察を受けます。
いきなり、専門医に診てもらう事はできません。GPで処置できない事に関して、GPから専門医に紹介状を書いてもらいます。
緊急を要する場合
緊急を要する場合は、病院に直行できます。その場合GPというよりは、総合病院です。
イギリスではA&E (Accidents & Emergencies)と呼ばれています。アクシデント・アンド・エマージェンシーの頭文字を取って略すと、日本語に近い文字で「エィ・アンド・イー」や「エィ・アニィ」です。
イギリス現地では、略して呼ばれる事が多いと思います。早口だと「アニィ」のように聞こえます。
NHSのリンクからポストコードや都市名を入力すると、検索できます。
https://www.nhs.uk/service-search/other-services/Accident-and-emergency-services/LocationSearch/428
予約無しのウォーク・イン
緊急でなければWalk-in Centresと呼ばれる場所で、診察してもらうことも可能です。
ウォーク・インという名の通り、予約無しで直接開いている時間に行きます。
GP予約より早く診てもらいたいけど、A&Eに駆け込むほど緊急では無い時などに、ウォーク・インします。
同じくリンクを貼っておきます。
https://www.nhs.uk/service-search/other-services/Walk-in%20centre/LocationSearch/663
日系やプライベート病院
公的なGP(NHS)に対して、日系やプライベート病院もイギリスにあります。
この記事では、詳細に触れませんが、直接電話等で個別にアポ入れして、診察してもらえます。日本と同じように、初回診察時に基本情報の登録をします(GPみたいに、事前登録は不要です)。
日系やプライベート病院でも、対応できない症状に関しては、別の病院を紹介されるパターンもあります。
GPの登録方法
最寄りのGPを探す
NHS公式サイトで確認可能です。
https://www.nhs.uk/service-search/find-a-gp
ポストコードを入力して検索します。
営業時間など施設案内、口コミ、どういった医者が所属しているか、特異分野が何か、オンライン処方の対応有無ほか、いろいろ確認できるのですが、渡英直後で正直良く分からないと思うので、まずは家から一番近いGPに登録しておけば良いと思います。
GPの登録変更は、いつでもできるので、気に入らなかったらGP変更すれば良いでしょう。
なお2015年1月以前は、自宅住所近くしかGP登録が認められなかったのですが、今は例えば学校や会社近くのGPでも登録が可能です。
https://www.nhs.uk/using-the-nhs/nhs-services/gps/patient-choice-of-gp-practices/
GPを選んだら登録申請する
オンラインで見つけた個別GPのページか、直接GPに行き、GP登録用紙を入手して記入の上、GPに提出します。
NHS公式のGP登録用紙が、オンラインでも手に入ります。
GSM1というフォームです。
https://www.gov.uk/government/publications/gms1
うろ覚えかつ、GPによるかと思いますが、わたしが昔GPに登録した時は、GP登録用紙を提出した際、簡単な健診や問診がありました。
いきなり結構な量の血を抜かれて、くらくらした記憶があります。
GP登録に必要な書類
原則、上記GSM1というフォームだけです。
意外過ぎるのですが、実はNHSのガイドライン上、以下の本人及び住所確認に係るエビデンスは、GPに提出する必要はありません。
- パスポート
- 運転免許証
- VISA
- 住所証明書類(公共料金の請求書)
- カウンシル税の請求書
本人及び住所確認に係るエビデンスを提出しない事を理由に、GPは新規登録を拒否できない仕組みになっています。
まぁ提出依頼があったとして、断ると面倒なやつと思われるので、黙って提出すれば良いと思います。
GPよもやま話
NHS公式YouTubeが字幕付きで色々使える
NHS公式YouTubeがありまして、チャンネル登録者数が4.5万人程度です。字幕付きの動画もたくさんあるので、暇なときに見ると、NHSと英語の勉強になって一石二鳥です。
NHSの電話番号は111
固定電話や携帯電話から、通話無料で医療アドバイスや、予約、救急車を呼ぶことができるので、電話帳に登録しておいて損は無いです。
イギリスで緊急通報番号は999
NHS経由ではなく、直接救急車などを呼ぶ場合は999です。緊急通報番号は、以下を網羅しており、オペレーターにあなたが何を求めているか伝える必要があります。
- 警察
- 消防
- 救急
医療の質
医療従事者でないわたしが言うのも恐れ多いですが、イギリスに住んでいた時、GP、NHS専門医、日系病院、プライベート病院何れも経験しましたが、GPやNHS専門医の質がプライベート病院に比べて悪かったかというと、特段そのように感じた事はありません。
プライベートであろうと、公的なNHSであろうと、医者になるには、それ相応の資格試験を取らなくてはいけませんからね。
よく在英日本人がGPだけは辞めておけとか、ひどい目にあったとかいう話を聞きますが、それはGPだからというよりも、日本人と外国人との文化の差によるものの影響が大きく占めているように思います。
塩対応されるとか、(それが日本人だからという理由ではなく)海外では普通ですし、サービス過剰の日本にいる感覚で、至れり尽せりの(医療)サービスがイギリスで受けられるとは、はじめから思わないほうが良いです。
最後に
日系病院やプライベート病院に行く方も、万が一に備えてGP登録をしておいて損は無いです。
というのも、日系病院やプライベート病院は限られた医療行為しか行えないケースが多く、専門外の何かが起こった時は結局、総合病院であるNHSに行き着く可能性があるからです。
繰り返しですが、A&EやWalk-in Centresの場所も、予め確認しておくと良いと思います。
病院の世話にならないに越したことはありませんが、GP登録方法についての記事でした。
※本文は以上です。
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