イギリスからドイツに引越してきて驚いた事の一つに、銀行の預金保険制度そのものがあります。
当時、生活の立ち上げをするのに色々と銀行口座の事を調べていて、あまりにイギリスのそれと異なり複雑だったのを覚えています。
今も変わらずに複雑なんですけどね…
ドイツの預金保険制度は、ヨーロッパでは他に例をみないほど複雑難解で、なんと業態により4つのスキームが併存しています。
結論として何れのスキームも同等と言えますが、個人レベルで、どの金融機関がどの預金保険制度の対象か調べるには、まず業態を認識しておく必要があります。
ドイツの四大銀行:
- ドイツ銀行(Deutsche Bank)
- コメルツ銀行(Commerzbank)
- ウニクレディト銀行(UniCredit Bank、ブランド名はHypoVereinsbank)
- ポストバンク(Deutsche Postbank)
ドイツのチャレンジャーバンクとしては、N26やFIDORあたりが有名ではないでしょうか。
ドイツ国内では伝統的な商業銀行に加え、貯蓄銀行(Sparkasse)、協同組合銀行(Genossenschaftsbanken)、ここ数年台頭してきたチャレンジャーバンクなど、さまざまな形態の金融機関があります。
なお私が知る限り、チャレンジャーバンクの多くは商業銀行の形態です。
比較的設立が最近だったり、実店舗を持たないデジタルバンク、知名度があまり高くない銀行などが、魅力的なサービスや高利率の預金口座(Sparkonto、Festgeld)を提供したりする場合、本当に資金を預入れしてしまって大丈夫か、心配になるかと思います。
この記事では、ドイツの銀行が預金保険制度の対象か確認する方法を、業態別に説明したいと思います。
ドイツの預金保険制度
ドイツの預金保険制度は、業態により以下4つに分けられます。
更に業態により、預金保険スキームがそれぞれ存在しています。
なので、あなたが保有する口座或いは口座開設を考えている先がどの業態か、まず補足する必要があります。
追って具体例とともに説明するので、まずはこんなものがあるんだ、という位の認識で大丈夫です。
- Deposit Guarantee Scheme for German Private Banks GmbH
- Deposit Guarantee Scheme for German Public Banks GmbH
- Protection scheme of the German Savings Banks Association
- Protection scheme of the cooperative Banks GmbH
下から二つのProtection schemeは、上から二つみたいに法定スキームではありませんが、BaFin(連邦金融監督庁)よりthe German Deposit Guarantee Act (Einlagensicherungsgesetz – EinSiG) の下、Deposit Guarantee Schemeと認められています(法定スキームに代用しうるもの、という位置づけ)。
つまり、上記四つの預金保険スキームは、預金者から見れば同等の内容と言えます。
イギリスの場合、預金保険スキームはFinancial Services Compensation Scheme (FSCS)一つだけですが、ドイツは歴史的経緯もありかなり複雑ですね。
ドイツにおいて預金保険制度の対象である金融機関にお金を預け入れておけば、破綻した場合でも一定額まで保証されます。
- 一人当たり一金融機関、100.000ユーロまで
- 共有口座の場合は、200.000ユーロまで
因みにドイツでは、桁数を表示する際、日本やイギリスのようにカンマではなく、ドットを使います。
不動産売買など条件に該当すれば、一時的に(6か月まで)500.000ユーロまで預金保険対象の金額が増枠されます。
その他、詳細は各公式リンクをご確認下さい。
1994年にEU預金保険指令(Directive 94/19/EC)が制定された事で、域内では基準の統一化が図られています。
なのでドイツ以外のEU圏においても、預金保険制度に関しては、各国で原則同じルールが適用されます。
ドイツが特異なのが、上記法定スキームの預金保険制度に加え、任意加盟の預金保護基金がある点です。
任意加盟の預金保護基金は、法定スキームの預金保険上限額を超える部分を保護、EU預金保険指令の適用外、法定スキームではない為BaFinの監督を受けていない等の特色があります。
任意加盟の預金保護基金ですが、本記事での詳細説明は割愛したいと思います。
Deposit Guarantee Scheme for German Private Banks GmbH
ドイツ語での正式名称は、Entschädigungseinrichtung deutscher Banken GmbH (EdB)です。
商業銀行に対する預金保険制度です。ドイツ四大銀行、N26・FIDORなどは全て商業銀行に分類されます。
EdB公式サイトから英語で、預金保険制度の対象か、金融機関を調べる事が可能です。
https://www.edb-banken.de/en/about-us/banks-assigned-edb/
ドイツ及び通貨ユーロを使用するEU圏において、N26は大変おすすめの銀行です!
因みにポストバンク(Postbank)ですが、「Postbank」、「Deutsche Postbank」と検索しても出てきませんが、しっかりと預金保険制度の対象金融機関ですのでご安心下さい。
ポストバンクは、2018年5月25日にドイチェバンク(Deutsche Bank)のリテール子会社と合併し、DB Privat- und Firmenkundenbank AGの下、業務展開しています。なので、「DB Privat- und Firmenkundenbank AG」と検索すると、結果が表示されますよ。
商業銀行に対する預金保険制度EdBは、法定スキームと呼ばれるものです。
Deposit Guarantee Scheme for German Public Banks GmbH
ドイツ語での正式名称は、Entschädigungseinrichtung des Bundesverbandes Öffentlicher Banken GmbH (EdÖ)です。
公式サイトはドイツ語だけですが、EdÖに該当する金融機関は、上記リンク先より確認可能です。
EdÖは、法定スキームです。
Public Banksは、リテール預金を取扱う機関が少なく、わたしが認識している限り、DKB(Deutsche Kreditbank AG)位です。
以下の投稿記事で、少しDKBに触れています。
Protection scheme of the German Savings Banks Association
ドイツ語での正式名称は、Sicherungseinrichtung des Deutschen Sparkassen- und Giroverbandes (DSGV-Haftungsverbund)です。
主にSparkassen(貯蓄銀行)、Landesbanken(州銀行)、Landesbausparkassen(州建築貯蓄銀行)に対する預金保険制度です。
赤色の四角いロゴにSマークは、ドイツを訪れた人であれば、誰もが目にするものではないでしょうか。
DSGV-Haftungsverbund)は法定スキームでは無く、Institutional Protection Scheme (IPS=業界の相互支援スキーム)です。
以下公式リンク先の、右下にあるDownloads、Rangliste der Sparkassen 2019 (Stichtag: 31. Dez. 2019) をクリックすると、リストをPDFで閲覧可能です。
https://www.dsgv.de/sparkassen-finanzgruppe/organisation/sparkassen.html
Sparkassenは、商業銀行に比べると、口座開設のし易さから、チャレンジャーバンクが出てくるまでは、結構人気だったかと思います。
ドイツ全土をカバーしていますし、支店数もかなり多いですからね。
但し条件により、口座維持手数料があったりするのが難点です。
Protection scheme of the cooperative Banks GmbH
ドイツ語での正式名称は、BVR Institutssicherung GmbHです。
所謂、cooperative Banks(信用協同組合)です。DZ BankやRaiffeisenbank、Volksbankあたりが例として挙げられます。
貯蓄銀行同様、信用協同組合は法定スキームでは無く、Institutional Protection Scheme (IPS=業界の相互支援スキーム)です。
上記公式サイトは英語対応しています。トップ画面から入りWhat institutions are members of BVR Institutssicherung GmbH?を選択、リンクをクリックしてPDF一覧を開くか、検索ウインドウで、どの金融機関が預金保険制度の対象か確認できます。
まとめ
金融業を営むには、日本でいう金融庁であるドイツBaFin(連邦金融監督庁)より、予めライセンスの取得が必須です。
どの預金保険制度かまでは出てきませんが、登録企業を検索できるページがあるので、BaFin公式ページで調べてみても良いかもしれません。
https://portal.mvp.bafin.de/database/InstInfo/?locale=en_GB
N26は商業銀行なので、預金保険制度の対象金融機関です。
一方、爆発的にユーザー数を増やしているトランスファーワイズ(TransferWise)やレボリュート(Revolut)は銀行ではなく、あなたが預け入れた資金は、預金保険制度で保護されませんので、使い方には注意する必要があります。
ドイツ及び通貨ユーロを使用するEU圏において、銀行であるN26と、プリペイドカードであるトランスファーワイズやレボリュートとの相性は非常に良く、おすすめです。
※本文は以上です。
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