パナマ文書で話題になった通り、租税回避地や低課税地域と呼ばれたりする、タックスヘイブンが世の中に存在します。
でもタックスヘイブンと言われても、わたしがそうなのですが多くの人にとって、なんだか小説や映画の世界みたいな印象で、身近な事として捉える感覚があまり無いかもしれません。
EUでは名指しでブラックリスト認定国を公表しているので、当ブログで簡単に取り上げてみたいと思います。
意外にも、日本人が観光地として訪れるあの国も。
タックスヘイブン(Tax haven)とは
タックスヘイブン(Tax haven)とは、租税回避地や低課税地域と呼ばれる国や地域を指します。
ヘイブン(Haven)は避難所、安息所、港、停泊所といった意味です。
日本語では区別がつき難いですが、天国を意味するヘブン(Heaven)とは異なる単語です。
税の優遇処置に加え、他国の税務当局や捜査機関と情報を共有しない為、(主に節税目的等で)企業や富裕層からの資金が集まっています。
EUにおけるタックスヘイブンの基準は、以下の条件を満たさない国や地域を指します。
- Transparancy
- Fair Tax Competition
- BEPS implementation (the OECD’s Base Erosion and Profit Shifting minimum standards)
透明性、フェアな税競争、BEPSの実行性とあります。
最後のBEPSは、税金の支払いを回避するために、各国の税法のギャップとミスマッチを利用する多国籍企業の節税スキームの事を指します。税源浸食と利益移転、という風に訳されていますね。
経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development = OECD)の公式Youtubeで、BEPSについて解説しています。
タックスヘイブンと呼ばれている国ではしばし、住民登録している数より登記されている企業数の方が多い、なんていう話をよく聞きますね。
EUのブラックリスト(Black list)
EUのブラックリスト(Black list)ですが公式には、non-cooperative jurisdictions for tax purposesと若干オブラートに包んでいます。
日本語に直訳すると、税務面で非協力的な国・地域リストで、要するにブラックリストです。
直近2020年2月27日に公表された、EUのブラックリスト認定国を見てみましょう。
ソース元リンク:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A52020XG0227%2801%29
EUのブラックリスト |
---|
American Samoa |
Cayman Islands |
Fiji |
Guam |
Oman |
Palau |
Panama |
Samoa |
Trinidad and Tobago |
US Virgin Islands |
Vanuatu |
Seychelles |
太字の4か国は、2020年2月27日新たにブラックリスト入りした国です。
グアムやフィジー、またインド洋の真珠とも称されるセーシェルが入っています。
近年セーシェルはハネムーン先としても人気かと思います。
ケイマン諸島は西インド諸島を構成する諸島の一つで、イギリスの海外領土です。
EUのグレーリスト(Grey list)
ブラックリストがTransparancy、Fair Tax Competition、BEPS implementationで3アウトだとすると、ほぼブラックだけど、定められた期限までに是正措置をとる事を約束した国・地域を、グレーリスト(Grey list)としています。
よってグレーリスト認定国は、EUから継続的な監視対象となり、期限通り是正処置がとられないとブラックリスト入りします。
2020年2月27日のリリースでは、Cayman Islands、Palau、Seychellesがグレーリストから、ブラックリスト入りしました。
ケイマン諸島に関しては、イギリスの海外領土で初めてEUのブラックリスト入りしたという事で、イギリス内でざわざわしていました。
https://www.bbc.com/news/business-51484393
ブラックリスト作成の背景
脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)等を防ぐ目的で、2017年からEUがブラックリストを開示するようになりました。
- tax fraud or evasion: illegal non-payment or under payment of tax
- tax avoidance: use of legal means to minimise tax liability
- money laundering: concealment of origins of illegally obtained money
2017年当初は、92か国がスクリーニング対象に選ばれ、内17か国がブラックリストに認定。
因みに、理由は今でも不明なのですが、EUメンバー国はスクリーニング対象外です。
EUは定期的にブラックリストを公表する事で、該当国にプレッシャーを与え是正処置を促しています。
ブラックリスト入りすると、EUメンバー国から制裁を受ける事で、金融取引ができなくなったり、EUファンディングプログラムに参加できなくなります。
また社会的評判の悪化などの影響も考えられます。
あくまでもブラックリストの効力はEUが定めているものなので、例えば日本が独自にブラックリストとして指定していなければ、日本との取引に関しては直接的な影響はないと言えます。
最後に
貧困と不正を根絶するための持続的な支援・活動を、90カ国以上で展開しているイギリスの慈善団体オックスファム(Oxfam)のBlacklist or whitewash?というレポートでは、EUメンバー国がスクリーニング対象外なのはおかしいという指摘をしています。
2017年当時のオックスファムレポートによると、EU基準でスクリーニングをすると、アイルランド、ルクセンブルグ、マルタ、オランダがブラックリスト認定国になるとも。
これらEU4か国に関しては、世界的にみても低課税国として認識されており、グローバル大企業が最低限の税金を払い、しばしば話題になっています(アイルランドのアップル、ルクセンブルグのアマゾンのケース等)。
なおVATに関して、EU27か国の最低標準税率はルクセンブルグの17%です。EU27か国の平均値は21.5%、EU内でも結構バラつきがあります。
本記事で取り上げたタックスヘイブンとは別で、経済のグローバル化及びデジタル化で生じた課税問題、いわゆるデジタル税(Digital Tax)についても近年議論が活発に。
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字を取った略語)に代表されるような多国籍IT企業の納税問題は、デジタル税の導入可否とともにしばらく注目されそうです。
世界で初めて1954年に、VAT(付加価値税)を導入した国フランスは、デジタル税の導入を一早く決め、強気な交渉をEUやアメリカとしていますね。
※本文は以上です。
もし記事を気に入っていただけたら、是非、SNS等でシェアいただけたらと思います!