イギリス発プリペイドカードのRevolutですが、Telegraphによる独占インタビューで、イギリスのEU離脱(ブレグジット)に伴い、Revolutは新たにアイルランドでライセンス取得を目論んでいる事がわかったようです。
なおRevolutの公式ページでは、特段新たなライセンス取得計画に関する情報は、何もリリースが出ておりません。
Revolutはブレグジット対応で、既にリトアニアにて銀行及び資金移動業者のライセンスをそれぞれ取得済みですが、どういう事なのでしょうか。
イギリスのEU離脱(ブレグジット)対応
Revolutは、イギリスのEU離脱(ブレグジット)対応で、”EUパスポーティング”が使えなくなった際、EEA圏での営業を継続する為、2018年12月にリトアニアで銀行及び資金移動業者のライセンスをそれぞれ取得済みです。
もっともリトアニア国内のRevolutユーザーのみ、資金移動業者から銀行への移管作業をすすめているようなので、リトアニア国外の多くのユーザーにとっては、現状何も変わりありません。
“EUパスポーティング”は、EU圏内の一つの国(アイルランドやリトアニア含む)で、ライセンスを取得すれば、他のEU圏で事業を展開できるものです。
因みに、Revolutと同じイギリス発であるTransferWise(トランスファーワイズ)はブレグジット対応で、ベルギーに拠点を作りましたね。以下は公式サイトの抜粋です。
英国がEUを離脱した場合、当社はブリュッセルの新しいオフィスから欧州経済地域(EEA)の顧客にサービスを提供します。 従って、欧州経済地域(EEA)のお客様は当社の欧州支店:TransferWise Europe SA/NVと顧客契約を締結することとなります。
引用元リンク: https://transferwise.com/ja/help/11/%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88/2952790/how-will-brexit-affect-transferwise-if-theres-no-deal
TransferWise Europeは、the National Bank of Belgiumによって規制されます。 これは、ベルギーの法律がお客様のTransferWiseアカウント、取引、および顧客契約に基づくお客様の権利に適用されることを意味します。 TransferWiseで送金またはボーダレス口座を利用される場合、TransferWise Europeから送金サービスが提供されます。
リトアニア中銀に喧嘩を売っているのか
“EUパスポーティング”を使うのに、域内でライセンスを2か国以上から取得したケースは、聞いたことがありません。
もしご存知の方がいたら教えていただきたいです。
それに、先にライセンスを与えたリトアニアにとって、Revolutが他国から新たにライセンスを取ろうとしている話は、面白くない筈です。
なぜなら、リトアニア国内に将来流入したであろう人員や資金などが、別拠点(今回でいうと、アイルランド)に向かってしまう可能性が高いからです。
EU圏内でライセンス付与は一つだけ、という制限が無いので、中銀にライセンスを2つ以上求める際、合理的な説明ができれば良いのだと思います。
ヨーロッパ3拠点のハブ
冒頭のTelegraph記事によると、Revolutはヨーロッパ内を3つのエリアに分けて、管轄する事を検討しているようです。
- イギリス…Revolut Ltd
- 西ヨーロッパ(アイルランド含む)…New(計画中)
- 中欧及び東ヨーロッパ(リトアニア含む)…Revolut Payments UAB
イギリス離脱後のEEA圏において、西ヨーロッパと、中欧及び東ヨーロッパを分けて管轄する意図としては、各ローカル市場の近いところに拠点マネジメントを配置でき、加えて当初想定以上にヨーロッパでのユーザーが増えた為、2つの国でライセンスを持つ事を計画するに至った、とインタビュー記事で述べられています。
本音と建前
このパラグラフは、上記インタビュー記事に関するわたしの感想です。
Revolutはリトアニアからライセンスを取得済みなので、建前としては、確かに記事のコメント通り(あくまでもEEA圏に関しては、アイルランドとリトアニアの両輪で見ていく)だと思いますが、本音はどうなのでしょう。
わたしは、Revolutがリトアニアで、思ったほど人材の獲得が上手くいっていないのではないかと思います。
外務省とGoogleフライトを参考に、アイルランドとリトアニアを簡単に比較してみます。
アイルランド | リトアニア | |
---|---|---|
首都 | ダブリン | ビリニュス |
人口 | 約492万人 | 約281万人 |
面積 | 7万300平方キロメートル | 6.5万平方キロメートル |
通貨 | ユーロ | ユーロ |
宗教 | 約78%がカトリック | 主にカトリック |
GDP | 3,727億ドル | 427億ドル |
言語 | アイルランド語および英語 | リトアニア語 |
イギリスから首都への直行便 | ブリティッシュ・エアウェイズ ライアンエラー エアリンガス | LOTポーランド航空 ライアンエアー ウィズ・エアー |
直行便の空港(イギリス) | ヒースロー空港 シティ空港 スタンステッド空港 ガトウィック空港 ルートン空港 サウスエンド空港 | シティ空港 スタンステッド空港 ルートン空港 |
直行便の飛行時間 | 約1時間30分弱 | 約3時間弱 |
イギリスとの時差 | 0時間 | 2時間 |
拠点を作るには、ペーパカンパニーではダメですから、実際に資本を投入して、人員を配置しなくてはなりません。当然、拠点開設に係る準備もありますし、収益に先行して費用がかかります。
正直、イギリスからリトアニアに移れる従業員がいなかったのではないかと思います。もしくはイギリスやアイルランドで獲得できるであろうスペックの人材が、リトアニア現地採用では確保するのが難しかったのかもしれません。
また経営マネジメント層などに、ポジションを作っていると見る事もできるかと思います。
アイルランドであれば、イギリスの隣で時差が無く、飛行時間も短く、何より英語が通じます。気軽に行き来できますよね。
イギリスからリトアニアに行こうとすると、便数が少ないのに加え、直行便があまりイケてないです。
まとめ
基本的に、EU圏では裁定が効かないような仕組みになっているので、ライセンス取得に関しては、そこまで申請する国によって取得難易度に差異は生じない筈です。
一部では企業誘致の為に、中銀とは思えない甘い言葉をかけている国もちらほらと聞きますが…
スタートアップでまだ収益化できていない段階で、2つのライセンスを持とうという動きは興味深いです。
その規模や物価は置いておいて、固定費がざっくり2倍になるイメージです。もっともRevolutは、ユーザー向けに実店舗を持たないので、費用の割合として固定費はそこまで高くないのかもしれませんが。
確かにマイクロマネジメントするには、管轄するエリアが狭いにこしてことはありませんが、アイルランド(のライセンス)が実際に稼働し軌道にのった際には、リトアニア(のライセンス)がどうなるか注目です。
※本文は以上です。
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