ドイツに住み始めて驚いた事に、高速道路は速度無制限、閉店法(LadSchlG)、休息時間(Ruhezeit)、ドイツはGDP世界第4位と経済先進国なのに現金社会、恐らく世界で一番犬の権利が認められている動物福祉先進国、他があります。
加えて、ドイツのサウナは男女兼用かつ裸で入る、緑のある公園で男女問わずトップレスになる(特に夏季)、ヌーディストビーチ・レイクがある、ごく普通の海・湖でも人目を気にせず着替える、などドイツは「裸」に関する文化を身近に感じる機会が多い国です。
渡独前はイギリスに住んでいましたが、イギリスは「裸」に関して(だけでは無いかもしれませんが)ドイツの対極にあり、いわゆる上流階級の人ほど季節に関わらず「地肌」を見せない印象が強くあります。
本記事では、ヌーディズム先進国と言えるドイツ在住の筆者が、FKKについて解説したいと思います。
ドイツの代表的なヌーディストビーチ含むスポットを、グーグルマップにまとめたので、FKKに挑戦したい方の参考になれば幸いです!
FKK(Freikörperkultur)とは
FKKとは、ドイツ語Freikörperkulturの略語です。
英語だとNudisum(ヌーディズム)、日本語だと裸体主義文化と訳される事が多いようです。
Freikörperkulturは、三つの単語を組み合わせて作られた言葉です。
ドイツ語 | 英語 | 日本語 |
---|---|---|
Frei | Free | 自由な |
Körper | Body | 体 |
Kultur | Culture | 文化 |
FKKの類義語として服を着ない意味で、Textilfrei = textile freeという単語もあります。
FKKとは言葉通り衣服を脱いで、生まれた時の状態と同じ裸で、直に日光や水、空気等に触れ自然を感じながら、屋外で過ごす活動です。性的な目的はありません。
ハイキングやヨガなど、スポーツと組み合わせた活動をする団体もあります。
自然回帰という意味で、Naturism(ネイチャリズム)と呼ばれる事も。
FKKの発祥は、旧東ドイツ
ドイツでは19世紀後半に、FKK(ヌーディズム・ネイチャリズム)が盛んになったとされています。
ドイツ初のFKKクラブは健康の追求を目的に1898年、Essenで発足したそうです。
ベルリンに加え、北海やバルト海で当時普及し始めました。
なぜ人々にFKKが浸透したかですが、時代を遡ると工業化都市を中心に、密集して不健康かつ不衛生な生活をしていた労働者達に、健康志向(禁酒・喫煙・ベジタリアン等)の高まりがあった事が挙げられます。
物理的に女性などコルセットをしていた時代、コルセットを脱ぎ捨て裸になるのは、とても健康的でした。
また男性にとっても、社会的不平等さを目の当たりにする中で、衣服を脱ぎ裸になる事で、身分や地位に拘らず、ある種の平等を享受する意味合いもあったようです。
特に旧東ドイツでは、共産主義国家から逃避手段の一つとして、FKKが盛んになったとも言われています。
ヌーディズムやネイチャリズムの始まりが、医学的な治療目的という説もあり、裸での日光浴が結核やリウマチに効くと言われたのも、当時ドイツでFKKが広まった要因と言えます。
現代社会でも日光浴は大事ですよね、以前イギリスに住んでいた時の話ですが、冬は日照時間が少なく、十分な日光を浴びる事ができない為、ビタミンDを体内で生成できず、サプリメントを摂っている人が多かったです。
ドイツ初のヌーディストビーチは、北部にあるSylt島で1920年に誕生しました。
1933年ナチスによりFKKが一時禁止されるも、その後1942年には緩和処置がとられ再び活発になりました。
戦後、1949年西ドイツのHanoverで、Deutscher Verband für Freikörperkultur = DFK(German Association for Free Body Culture)が発足。現在もDFKは、活動を続けていてメンバーを募集しています。
1950年に入り、旧西ドイツの人々がヨーロッパ各国に旅行するようになった事で、フランスなどでもヌーディストビーチが生まれるきっかけになったとか。
1963年DFKが、現Deutscher Olympischer Sportbund = DOSB(ドイツオリンピックスポーツ連盟)に加盟した事で、FKKがよりスポーツとの結びつきを強めるようになりました。
1989年ベルリンの壁崩壊を経て、旧東西ドイツが統合しましたが、これを機にFKKが後退してきたと指摘する人も。東ベルリン出身のDie Linke(左翼党)Dr. Gregor Gysiは、FKKに関して結構コメントをメディア出したりしていてニュースで見かけます。
旧東西ドイツ統合までは、東だと服を着ている人、脱いでいる人、皆同じビーチだったようです。
以後は現在のように、FKK指定エリアが存在し、裸の人とそうでない人とで棲み分けがなされています。
服の着用を促す法律が無い?!
服の着用を促す法律が、ドイツ連邦共和国基本法(Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland)にはありません。
連邦法上は公衆の面前で裸になる行為自体は、州法で別途定めが無い限り法律的に許容されています。
FKK指定エリア外で公序良俗に反する、つまり第三者が存在する場所で裸になると、OWiG(Gesetz über Ordnungswidrigkeiten)により罰金刑に科せられるリスクがあります。
ドイツでは歴史的な背景やFKKに関する理解からか、未就学児など幼い子どもが公園の噴水等で裸になって遊んでいる光景を良くみかけます。やはり、イギリスにいた時とは「裸」に対する感覚が大分違います。
日本の場合、人前で裸になると、公然わいせつ罪に問われます。
刑法174条
引用元リンク:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=140AC0000000045#765
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
ドイツで、裸になれる場所
ドイツで、裸になれる代表的な場所です。
本来のFKKは、自然回帰的な意味合いが強いので屋外での活動になりますが、裸になれる場所という事で、屋内も合わせて表記しています。
水辺だけでなく、公園でもFKKエリアがあります。知らずに公園を歩いていて、裸の人に遭遇してしまっても驚かないようにしましょう。
またFKKエリアが無い公園でも、特に夏季はトップレスになっている人を見かける事があるかと思います。その時も驚かないようにして、そっとしておきましょう。
サウナ・スパ
基本的にドイツのサウナは男女兼用で、衛生面よりタオルや水着の着用が禁止されています。
裸でサウナに入るのは、日本人としてわたしは平気ですが、男女兼用というのは未だに慣れません。
スパは行った事がありませんが、基本的に水着か下着着用です。
ヌーディストパーク(公園)
日本からの観光客も多いであろう首都ベルリンと、バイエルン州最大の都市ミュンヘンの公園を選択してみました。
どれも至って普通の公園です、それほどドイツ人にとってFKKは日常であると言えるかと思います。公園内の一部がFKKエリアなので、ヌーディストパークと気づかないで通り過ぎる事も多々あると思います。
ベルリンのTiergarten
園内に動物園がありますが、Tierが動物、Gartenが庭という意味です。
ブランデンブルク門や、ベルビュー宮殿、ポツダム広場等が近くにあります。
ベルリンのVolkspark Friedrichshain
Volksは人々、Parkは公園、Friedrichshainは区の名前です。ベルリンで一番古い公共の公園です。
Alexanderplatzの北東に位置していて、有名な観光地からはあまり近く無いので、行く機会が無いかもしれません。
ベルリンのMauerpark
Mauerは壁、Parkは公園という意味で、まさにベルリンの壁が建っていた場所です。
Alexanderplatzの北に位置していて、市内からは一番遠い公園です。有名な観光地からは近くありませんが、グラフィティが見れたり、蚤の市やカラオケステージがあったりします。
ミュンヘンのEnglisher Garten
Englisherは英国、Gartenは庭です、英国庭園と訳されている事が多いようです。
都市部の公園としてはかなり大きくて、米ニューヨークのセントラル・パークより大きいです。
ヌーディストビーチ(海)
ドイツで海に面している場所になるので、北海及びバルト海沿岸のビーチです。
ビーチリゾートというと南欧を思いつく人が多いと思いますが、ドイツのビーチも美しさでは負けていません。リゾート面でも南欧に負けじと頑張っていますが、外国人へのプロモーションは確かに弱いかな。
ヌーディストビーチはFKKの他、Nacktbadestrand、Naturistenstrandという標識があるエリアです。
島やビーチ全体がFKKエリアという訳では無く、しっかりと指定されたエリアがあります。
ヌーディストビーチとして有名どこであれば、Usedom島やRügen島あたりの海岸でしょうか。土地柄、歴史的な背景から北欧の影響も少なからず受けているので、大分街や建物の雰囲気も違います。
Strand Kampenは、Sylt島(ドイツ初のヌーディストビーチ)に位置しています。
Sylt島自体は、ヌーディストビーチとしてだけでなく、ドイツ最北の高級リゾート地として大変有名ですね。地理的にドイツ主要都市から遠いのもありますが、アクセスは鉄道がメインで、その他は飛行機、フェリー(車もOK)なので、旅行者が行く場合は、しっかりと計画を立てる必要があります。
ドイツ最大の島Rügen、2番目に大きいUsedomも、ヌーディストビーチだけでなく、ドイツ人に人気のリゾート地です。Rügenは白亜の切り立った崖と砂浜が美しい場所です。RügenもUsedomも、ドイツ本国から車で容易にアクセス可能です。
FKK指定エリアであっでも、ルールが変わったりすることがあるので、もしヌーディストビーチに行く場合は事前に詳細確認しましょう。
ヌーディストレイク(湖)
ベルリンの南西にあるWannsee湖
ベルリンからポツダムに向かう途中にある湖で、ベルリン中央駅からだと20km程度です。
ベルリンの東にあるMüggelsee湖
ベルリン中央駅からだと、30km程度離れた場所にある湖です。
ミュンヘンの北北西にあるFeldmochinger湖
ミュンヘン中央駅からだと、15km弱離れた場所にある湖です。
自宅の庭やバルコニー
隣人に見られない限り、自宅の庭やバルコニーで裸になる事ができます。
OWiG(Gesetz über Ordnungswidrigkeiten)に抵触しないよう、適宜フェンス等の目隠しを設置します。
最後に
以上、FKK発祥の歴史から見たドイツ人と裸に関する文化、ヌーディストビーチ含む代表的なスポットでした。
最後にFKK指定エリアでのルールです、当然ですが基本的に他者のプライバシーを尊重する必要があります。
FKK指定エリアでは、必ずルールを守りましょう。
・スマホやカメラなどの持込みは厳禁
・SNSはマナー違反
・他人を凝視しない
・他人とは程よく距離を取る
・FKK指定エリアでは、躊躇なく脱ぐ
冒頭で紹介した、ドイツが思った以上に現金社会で驚いたという話ですが、中年世代以上を中心に(潜在的)意識として刷り込まれている点では、ドイツ人が無類のキャッシュ好きというのとFKKも同じなのかもしれません。
ソーセージやビールと同じ位、ドイツを象徴する文化と言えるFKKですが、近年は若い世代ほど昔のように熱狂的なFKKファンが少なくなってきていると指摘されています。
健康目的は別として、19世紀後半からFKK全盛期とは時代が違い過ぎて、自由を満喫するのに裸になる必要性が無いと言えば、その通りですね…
※本文は以上です。
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