VPNアプリは無料・有料それぞれ沢山あり、どれを選べば良いか悩むと思います。App StoreやPlayストアにあっても、運営主体やプライバシーポリシー等が良く分からず、怪しいアプリも見受けられ、本当に自分のスマホにインストールして使って良いか、不安になるかと思います。
私自身は海外に住み始めてからVPNを使うようになり、今までかなりの数のVPNサービスプロバイダーを見比べてきました。
ことVPNに関しては無料だから安心できない、或いは有料だから盲目的に安心できるものでは無い、というのが私の経験上の結論です。
非上場企業のせいか、また政府機関や裁判所等からの情報開示請求を視野にいれてか、VPNサービスプロバイダーには、実質的な保有者(株主)やスポンサーなどの開示がなされていないケースが散見されます。
しかし少なくとも、運営実態が良くわからないような、VPNサービスプロバイダーは避けるべきでしょう。最悪データを抜き取られたり、個人情報が悪用されるリスクがあります。
この記事では、運営元やスポンサーを自分なりに精査した上で、日本のサーバーが選択可能で、信頼するに値すると判断できる、良い意味で異質な、2つの無料VPNアプリ(試用期間ではなくて、本当に無料)を、理由と合わせて紹介したいと思います。
特段個別に明記しませんが、何れもスマホ(iPhone/Android)、Mac、Windows等に対応しています。
ProtonVPN(プロトンVPN)
わたしが断トツでおすすめするのが、ProtonVPN(プロトンVPN)です。
プロトンVPNは、アメリカやEUと一定の距離を置く、永世中立国スイスにある企業です。
スイスの湖や川を超える、究極の透明性を誇るVPNサービスプロバイダーと言っても過言では無いかと思います。
世界的に有名な暗号化メールサービス、プロトンメール(ProtonMail)と同じ系列というか、同じメンバーが作っています。
プロトンメールは、エドワード・スノーデンによるPRISMなど監視プログラムの内部告発を受け、オンライン上での市民の自由やプライバシーを保護するために開発されたものです。
ジャーナリストやアクティビスト御用達の。
プロトンは何といっても、設計思想が素晴らしいですね。
詳しくは、以下で説明しますが、プロトンは公的機関のサポートが入っているので抜群の安心感があります。
企業概要
- 公式サイト https://protonvpn.com/
- 住所 Chemin du Pré-Fleuri, 3 CH-1228 Plan-les-Ouates, Genève, Switzerland
- 欧州原子核研究機構(CERN = the European Center for Nuclear Research)で知り合ったメンバーが2014年に設立
- 創始者兼CEOはハーバード卒のDr. Andy Yen
- プロトンVPNの親会社は、Proton Technologies AG
- FONGITやイノスイス、欧州委員会(EC)がサポート
- WebブラウザFirefoxを提供するMozilla(モジラ)とパートナー
FONGIT
ジュネーブ州とスイス連邦政府のためにイノベーションを支援する財団。
イノスイス(Innosuisse、旧技術革新委員会)
スイス連邦政府のイノベーションを促進させるための国営機関。
欧州委員会(European Commission)
あの欧州委員会です。Horizon 2020という枠組みの中で、プロトンがサポートを受けています。
Horizon 2020とは、複数のパートナーによる研究・イノベーションプロジェクトを助成する欧州連合の枠組みで、2014-2020年にかけて総額800億ユーロの資金助成を担う制度です。
We have been awarded €2 million from the EU to further develop the Proton ecosystem
引用元リンク:https://protonmail.com/blog/eu-funding/
Posted on March 8, 2019 by Andy Yen
このような公的機関のサポートを受けられるというのは、アイデアが素晴らしいというのは当然として、審査を通過した企業として信頼されている裏返しとも言えるかと思います。
プロトンはスイス準拠法ですが、例えばプロトンメールの約40%のユーザーがEU圏の人々(EU域内では、EU一般データ保護規則=EU2016/679 GDPRが適用)といわれており、またアメリカのテクノロジー大企業の寡占を危惧する声から、EUやヨーロッパ諸国の人々から、プロトンに対する期待感が感じ取れます。
またプロトンVPNは、Mozilla(モジラ)と2018年パートナーを締結。Firefoxユーザーに、プロトンVPNサービスを試験的に提供しています。
https://protonvpn.com/blog/mozilla-partnership/
Firefoxは、オープンソースのWebブラウザで、特徴の一つに「プライバシー保護」がありますね。Mozillaから信頼されて選ばれたのが、プロトンVPNです。
メリット・デメリット
- 暗号化はAES-256◎
- 50か国・801台のサーバー◎
- 無料プランでは日本・アメリカ*・オランダ**の3か国・6台のサーバーのみ選択可能△
- 無料プランは、容量無制限◎
- 広告無し◎
- ログ記録無し◎
- スイスのデータ保護法(Federal Data Protection Act = FADP)が適用◎
- ソースコードを全て開示した、世界発のVPNサービスプロバイダー◎
- 独立したセキュリティ監査を実施◎
- Appは英語〇
- シンプルで直感的な操作が可能、面倒な設定不要◎
- コアサーバーは、スイスの地下1,000メートルにある元軍事施設内◎
*アメリカは当初記事投稿時、3台のサーバーでしたが、2020年8月24日時点で5台のサーバーに接続可能になっています。
**オランダは当初記事投稿時、3台のサーバーでしたが、2020年7月20日時点で7台のサーバーに接続可能になっています。→その後2020年8月24日時点で8台に増えました。
はっきり言って、対した情報を取り扱っていない、私のような一般市民にはオーバースペックです。
2020年1月には、世界で初めてソースコードを開示し、独立したセキュリティ監査を受けています。
All ProtonVPN apps are now open source and audited
Posted on January 21st, 2020 by Andy Yen in Articles & NewsWe’re happy to be the first VPN provider to open source apps on all platforms (Windows, macOS, Android, and iOS) and undergo an independent security audit. Transparency, ethics, and security are at the core of the Internet we want to build and the reason why we built ProtonVPN in the first place.
引用元リンク:https://protonvpn.com/blog/open-source/
例えるなら、財布や冷蔵庫の中身を、全部見せるようなものでしょうか。スケールがしょぼくて恐縮ですが、とにかくソースコードが開示されたので、何かやましい事をしていれば即ばれます。
厳密にはプランによって、セキュリティ堅牢度が異なりますので、気になる方は公式サイトをご覧ください。
https://protonvpn.com/
サーバー設置国リスト
太字は、無料プランで使える国。
- アラブ首長国連邦
- アルゼンチン
- オーストリア
- オーストラリア
- ベルギー
- ブルガリア
- ブラジル
- カナダ
- スイス
- コスタリカ
- チェコ
- ドイツ
- デンマーク
- エストニア
- スペイン
- フィンランド
- ギリシャ
- 香港
- アイルランド
- イスラエル
- インド
- アイスランド
- イタリア
- 日本
- 韓国
- リトアニア
- ルクセンブルク
- ラトビア
- モルドバ
- メキシコ
- マレーシア
- オランダ
- ノルウェー
- ニュージーランド
- ポーランド
- ポルトガル
- ルーマニア
- セルビア
- ロシア
- スウェーデン
- シンガポール
- スロベニア
- スロバキア
- トルコ
- 台湾
- ウクライナ
- イギリス
- アメリカ
- 南アフリカ
どういう人におすすめか
とりあえずVPNを無料で試してみたい人。
運営元がしっかりしているVPNを使いたい人。
日本語非対応なので、ある程度英語が分かる人。でも直感的にAppの操作が可能だと思います。
無料プランでも、容量無制限で使いたい人向け。しかし無料の場合、3か国合計6台のサーバーに使用が限定されてしまいます。
有料プランのユーザーが当然優遇されるので、混雑状況によっては通信スピードは落ちる傾向にあり。
スマホやPCでも、常時VPN接続しておきたい人には良いと思います。
TunnelBear(トンネルベアー)
次におすすめなのが、TunnelBear(トンネルベアー)です。
トンネルベアーはカナダの企業ですが、現在は米マカフィー(McAfee)が親会社です。
もうこれだけでVPNサービスプロバイダーの中では、プロトンVPN同様、信頼性が抜群ではないでしょうか。
トンネルベアーは聞いた事が無くても、マカフィーは知っている人も多いのではないでしょうか。
マカフィーは1987年設立、老舗コンピュータセキュリティ関連の世界的ベンダーです。大御所が、トンネルベアーのバックにいる、というのは大きいと思います。
企業概要
- 公式サイト https://www.tunnelbear.com/
- 住所 310 Spadina Ave #200 Toronto M5T 2E7 Ontario CA
- 元マイクロソフトのRyan Dochuk氏、ケンブリッジ卒で元ゴールドマン・サックスのDaniel Kaldor氏により2011年設立
- 2018年3月米マカフィー(McAfee)が買収した事で、現在トンネルベアーはマカフィーの完全子会社
- マカフィーの大株主はTPGキャピタル51%とインテル49%
マカフィーがトンネルベアーを買収した際に出したプレスリリース抄訳の一部抜粋です、以下マカフィーの公式サイトで全文を読めます。
2018年3月27日
引用元リンク:https://www.mcafee.com/enterprise/ja-jp/about/newsroom/press-releases/press-release.html?news_id=2018032702
個人向けのデバイスからクラウドまでを保護する高度なサイバーセキュリティ ポートフォリオを強化
TunnelBearの買収は、オンライン上の行動、個人データ、機密情報など、個人ユーザーにとって最も重要なものを守るというマカフィーのビジョンに戦略的にも合致する、世界水準のテクノロジーとビジネス機会をマカフィーにもたらします。TunnelBearの安全なネットワークと直感的なインターフェースを組み合わせることで、公共無線LAN利用時の個人データの安全性だけでなく、煩わしい広告をブロックする機能により、Webサイト閲覧時の広告主に対するプライバシーも保護できます。
餅は餅屋というか、老舗サイバーセキュリティ企業であるマカフィーが選んだ、という絶大な信頼感が、トンネルベアーにはあるかと思います。
メリット・デメリット
- 暗号化はAES-256◎
- 日本含む23か国のサーバーから選択可能◎
- 無料プランは、容量制限として月500MBまで△
- 広告無し◎
- ログ記録無し◎
- カナダのプライバシー法(The Privacy Act)・個人情報保護および電子文書法(The Personal Information Protection and Electronic Documents Act = PIPEDA)が適用◎
- Appが日本語対応◎
- 無茶苦茶シンプルで直感的な操作が可能、面倒な設定不要◎
- Cure53による年次セキュリティ監査を実施。監査結果のレポートを公表◎
Cure53はドイツの独立系サイバーセキュリティ会社です。その世界では、かなり有名ですね。
Cure53は米マイクロソフトでも働いていたセキュリティ・リサーチャーの、Dr.-Ing. Mario Heidrichにより設立。
サーバー設置国リスト
- イギリス
- アメリカ
- カナダ
- ドイツ
- 日本
- アイルランド
- スペイン
- フランス
- イタリア
- オランダ
- スウェーデン
- スイス
- オーストラリア
- シンガポール
- ブラジル
- 香港
- デンマーク
- ノルウェー
- メキシコ
- インド
- ニュージーランド
- ルーマニア
- フィンランド
どういう人におすすめか
とりあえずVPNを無料で試してみたい人。
運営元がしっかりしているVPNを使いたい人。
日本語必須で、常時VPNは使用しないけど、外出時たまに使うライトユーザー向け。
トンネルベアーの無料プランは、容量制限が月500MBなので、海外旅行時に限らず日本国内でも無料Wi-Fi(公衆無線LAN)を使用時、簡単なSNSやメール、Webブラウジングなどができれば良い、という人にはぴったりです。
できれば沢山の国のサーバーを使いたい人、無料プランでも全23か国から選択可能。
まとめ
本家公式サイトや、様々なサイトで紹介されているVPNに関する記事では、暗号化方法や、プライバシーポリシー等については、確かに詳しく説明や比較がなされています。
一方で、一体どういった人が運営しているのか、どのような経緯で設立されたのか、真の保有者が誰で、資金提供者は誰なのか等までは、あまり見つける事ができないVPNサービスプロバイダーが多々あるのも事実です。
そこで、口コミやAppのダウンロード数、認知度だけで判断するのではなく、自分で運営元やスポンサーを調べて、信頼するに値すると判断した、おすすめの無料VPNサービスプロバイダーをまとめた記事を作成しました。
有料VPNサービスプロバイダーでも、わたしは同じプロトンVPN(ProtonVPN)とトンネルベアー(TunnelBear)をおすすめしますが。
データ保護やプライバシーに関して細かく突き詰めると、スイス連邦データ保護法改正案とか監視協定であるFive Eyes、Nine Eyes、Fourteen Eyesがとか、諸々議論の余地はあるかと思います。
しかしGmailとかFacebook、Instagram、Twitterなど米大手企業のSNSを常用しているユーザーであれば、監視協定とかそこまで深堀して拘らなくても良いかもしれません。
また、そもそもインターネット規制(検閲)がかけられていない国に住んでいたら、VPNを意識する機会が無いかも分かりません。
なお本記事で紹介したVPNサービスプロバイダー以外は、全て怪しいという趣旨ではありません。
最終的には、ご自分で確かめてからVPNサービスプロバイダーの利用をおすすめしますが、本記事が無料VPNを探している人の参考になれば幸いです。
プロトンVPNとトンネルベアー以外で、何か良い先があれば、適宜記事を更新したいと思います。
※本文は以上です。
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