ドイツ発の銀行N26が、ブレグジットに伴いイギリスから撤退。要点は銀行免許ではなく、伸び悩むユーザー数か。

ドイツ発の銀行N26から2020年2月11日に突然、イギリスから撤退するアナウンスがありました。

イギリス国内の銀行に関して、わたしは以前からN26よりMonzo(モンゾー)をおすすめしていたのですが、その理由とは違う次元で、N26がイギリスを去る事になりました。

イギリス国内においては、競合他社であるMonzo(モンゾー)やStarling Bank(スターリングバンク)が、更に顧客を囲い込む事になると思われます。

わたしはN26がなぜ今のタイミングでイギリス撤退を決めたのか、リリース記事を読んだ時に違和感があったので、本記事をまとめてみました。

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N26の公式リリース

N26の公式リリースより、以下ポイントが挙げられるかと思います。

  • イギリスがEUを離脱するので、N26はEUパスポーティングによって、今後イギリス国内で銀行業務を行えなくなる
  • 2020年4月15日を以て、イギリス国内におけるN26全口座を一斉に閉じる
  • イギリス国内におけるN26口座閉鎖にともない、残り2ヶ月程度で各自必要な対応を

イギリス国内のN26ユーザーが、しなくてはいけない事

厳密には人それぞれの状況によりますが、代表的な項目です。

2020年4月15日以降は、Appは使えないし一切口座にアクセスができなくなるので、N26がイギリスから撤退というニュースから、わずか2か月程度で、全て対応する必要があります。

個別にみてみましょう。

口座残高をゼロに

資金を全てATM等で引き出すか、他行へ振込してN26口座残高をゼロにしなくてはなりません。

しかしATMでのキャッシュ引出しは上限額があるので注意が必要です。ユーザーが願っている訳では無いので、この際上限額の撤廃をしてほしいところです。

必要に応じて、新たに銀行口座を開設

N26以外に銀行口座を持っていない人は、当然新たに銀行口座をつくる必要があります。

でも、N26は残念ながら、Current Account Switch Service (CASS) に対応しておらず、ストレスフリーでメイン銀行口座を変更できません。

CASSに関しては、別途投稿した記事をご参照下さい。

残高がマイナスの場合は、トップアップして返金

オーバー・ドラフトなど、お金をN26から借りいている状況の方は、2020年4月15日までに全額返金する必要があります。お金が手元に無い人は、借り換えをしろという事ですかね。

自動振込や引き落としの設定を、全て変更

繰り返しですが、N26はCurrent Account Switch Service (CASS) 未対応な為、自動振込や引き落とし等の設定は、全てマニュアルで対応する必要があります。

CASS対応であれば、ひとまず仮でも新規に銀行口座を開設すれば、そこまで手間暇かけずに、N26から新しい銀行に資金も各種振込・引き落し設定が移行できたのですが…

因みに、リカーリングカードペイメント(通称CPA)を使っている場合、CASSの対応有無に関わらず、あなた自身で個別対応する必要があります。

資金移動明細などの情報が必要であれば、ダウンロードしておく

困った事に、イギリスのN26ユーザーはAppが2020年4月15日以降使えなくなるので、資金移動明細などの情報は必要であれば、ダウンロードしておく必要があります。

なぜこのタイミングでN26は、イギリスから撤退するのか

イベントを時系列で整理してみます。

イベント年月日
イギリスのEU離脱是非を問う国民投票日2016年6月23日
イギリス国民投票の結果発表日、EU離脱が確定2016年6月24日
N26がイギリス市場に参入2018年10月
イギリスがEUを正式に離脱2020年1月31日
ブレグジットの移行期限
(イギリスでEU法が適用)
2020年12月31日
N26がイギリスからの撤退を表明2020年2月11日
N26がイギリスで全口座を閉鎖2020年4月15日(予定)


そうなんです、N26はブレグジットを認識した上で、イギリス市場に参入したんですが、なぜ今頃になってブレグジットを理由にイギリスから撤退するのか…

そして、既存ユーザーの事を思うのであれば、いきなり2か月で完全撤退じゃなくて、ブレグジット移行期限である2020年12末まで、もう少し余裕を持たせても良い気がするのは、わたしだけでしょうか。

N26のイギリスでのプレゼンス

イギリス国内ではN26が参入する前から既に、Monzo(2015年創業)やStarling Bank(2014年創業)がデジタル銀行として既にロンチしています。

N26ですが、本国ドイツでは2013年創業も、上記の通り、イギリス市場には2016年に参入と後発組です。N26のイギリスでのプレゼンスはどうだったのでしょう。


因みにRevolut(レボリュート)は銀行ではないので、ここでは比較対象にしておりません。

N26のイギリス国内でのユーザー数は、公式サイトでは見つける事ができないので、実際どの位かは分かりませんが、BBCの記事を読むと200,000程度という数字が使われています。

誰かがインタービューして知りえた数字なのか、何なのかソースはBBCの記事に明記されておりませんが、競合他社対比、N26が顧客獲得に苦戦していた事は、容易に分かるかと思います。

銀行名ユーザー数
(イギリス国内)
情報元Appランク*
(iOS / Google Play)
Monzo2,000,000程度2019年2アニュアルレポート2位 / 2位
Starling Bank1,000,000程度2019年11月の公式ブログ11位 / 6位
N26200,000程度2020年2月のBBCサイト46位 / 75位

デジタル銀行なので、当然Appがどの位ダウンロードされているか、アクティブに使われているかでも、銀行間の比較ができるかと思います。

Appランク*
アップアニーという、アプリに関する市場データと分析ツールを提供している、アメリカの企業のツールを使ってみます。 以下の通りソートします。

  • イギリス国内
  • ファイナンス
  • 無料
  • 2020年2月10日付け

イギリスのN26は、ユーザー数もさることながら、Appランクも非常に寂しい結果となっています。


一応、N26がイギリス撤退というニュースを出す前日時点にしていますが、例えば新規にApp登録後から三か月、半年、一年など定点観測的に、競合他社と比較してみると、より面白そうです。

N26のブレグジットに関する過去記事

How N26 is prepraring for Brexitとして、2019年10月に公式ブログを投稿しているのですが、今は削除されてしまっています。

N26公式ブログでは読めないので、ご参考までにテキストのみコピーした記事を、別途当ブログ内に投稿済みです。

当時は、いわゆるハードブレグジットになろうが、イギリスのN26はサービスを継続、何も心配する事はなく、なんならドイツBafinではなく、イギリスFCAにより預金保護されるとも説明がなされています…

この時点では、将来的にN26が、イギリスで銀行ライセンス取得を真剣に考えていたものと思われます。

イギリスのユーザーにコミットしますというN26の宣言だったのですが、記事投稿わずか四か月後に、180度意見が変わり、まさかのイギリス撤退。

意思決定は早いという事ですかね。

本当の理由は銀行免許ではなく、ユーザー数か

以上の通り、表向きにはブレグジットを理由にしていますが、本当の理由は、単に思っていたほどイギリス国内で、N26がユーザー数を獲得できなかったからではないかと思われます。

別に慈善事業では無いので、イギリス国内で新たに銀行免許を取得してもペイしない(だろう)、という純粋なビジネスジャッジという説明をしても良い気がしますが、N26が競合他社に対して負けを認めたく無かったのでしょうか。


ご存知の方も多いと思いますが、N26は有名どこだと国際送金はTransferWiseと、加えて預金商品はRaisinと、保険はClark / Allianzと、クレジット(P2Pレンディングやクラウドファンディング)はAuxmoneyとパートナーを組んでいます。


取り扱う商品はアウトソースしているので、いわばN26がプラットフォーム(場所)を提供し、ユーザーを集める事が最重要課題になります。

そのユーザー数が、イギリスで伸びなかったというのは、N26のビジネス戦略上、致命的だったのでしょう。



全うなビジネス判断だと思いますが、あくまでもブレグジットだから、後出しでやっぱりイギリスから撤退というN26の説明は、時系列でみても変なところがあるし、何とも歯切れが悪いですよね。

最後に

N26自体は、わたしはドイツで使っていますが、N26と競合になれるような銀行は、ドイツ国内において他にいません。断トツで使いやすい銀行で、かなりおすすめです!

ドイツなど大陸にお住まいの方であれば、N26とRevolut(レボリュート)の二枚持ちが最強だと思います。
イギリス在住なら、Monzo(モンゾー)とRevolutですね。

繰り返しですが、レボリュートは銀行では無いのでお気をつけください。

N26のユーザー数が伸び悩んだというのは、後発組だったというハンデを超える程、差別化できる強力な商品ラインナップが無かったんだと思います。

例えば国際送金はMonzo(モンゾー)もN26も、TransferWiseとパートナーを組んでいます。

デジタル銀行のFintechを活用し、足りない部分をアウトソースしてくるプラットフォーム戦略は、誤解を恐れずに言うと、集客に特化したビジネスであり、そもそも銀行としての意義や位置付けが、時代とともに変わってきているのかもしれないですね。




※本文は以上です。
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