海外旅行や出張などで、ヨーロッパに行くとき、電話・メール・SNS・検索などをすると思いますが、ローミングしていますか?
それとも、都度現地で使えるSIMを購入したり、ポケットWi-Fiをレンタル、或いは無料Wi-Fi(公衆無線LAN)を)を活用しているかもしれません。
実は、EU(欧州連合)/ EEA(欧州経済領域)では、2017年6月15日からローミングに係る課金を廃止する法案が施行された為、域内の現地SIMであれば、EU/EEAにいる限りどの国でも追加料金無しで、海外ローミングを使えます。
欧州に住んでいる日本人でも、以外と知らない人がいて、海外ローミングが無料の話をすると驚かれる事があります。
居住国や国籍に縛られないので、日本からヨーロッパを訪問する人でも条件を満たせば、無料でローミングできます。
以下2パターンの人に向けて、記事をまとめました。
- EU/EEA在住者(予定)で、現地SIMを使っている人
- 非EU/EEA在住者で、EU/EEAの現地プリペイドSIMを購入して使う予定の人(日本からの旅行者、出張者、留学生等)
Roam Like at Home(RLAH)とは
Roam Like at Home(RLAH)とは、EEA(欧州経済領域)においてローミング課金を廃止し、海外でも国内にいる時と全く同じ料金体制で、電話やSMS(テキストメッセージ)、データ通信が使えるものです。
Roaming Regulation (EU)531/2012が根拠となる法律で、2017年6月15日にヨーロッパで施行されました。
渡航先がEEA域外の場合は、この限りではありません。RLAHは、あくまでもEEA域内のルールです。
EEA在住者
現在EEA在住者であれば、居住国でお使いのSIMを、EEA域内であれば、どの国にいても、そのまま普段通りに使えます。
追加料金は特にありません!
なんとも素晴らしいです。
非EEA在住者(日本国居住者など)
非EEA在住者(日本国居住者など)が、今後EEAに渡航する場合、EEAの現地SIMを入手すれば、EEA域内にいる限り国を跨いでも、追加料金無しで継続利用可能です。
プリペイド式のSIMも対象なので、必ずしもEEA在住者である必要はなくて、EEA域外からの旅行者などでも、EEAの現地SIMを使用する限り、RLAHの対象になり得ます。
現地SIMは、空港などで販売している事が多いですし、わたしは現在ドイツ在住なので使った事はありませんが、日本のアマゾン等でも、EEA等海外対応のSIMを取扱っているようです。
海外現地で慌ただしくなるのが嫌な人は、日本を出国前に海外現地で使えるSIMを購入しておくのも良いかもしれません。
Threeはイギリスのモバイルオペレーターです、O2やGiffgaff(O2のネットワークを使用)、Vodafoneもイギリスです。
その他、日本のアマゾンで見る限り、欧州の大手オペレーターだと、フランスのOrangeあたりが販売されています。
何れのオペレーターも、ドイツ現地でわたしが今使っているSIMで、ローミングした事がありますが、どのオペレーターも全く問題無く使えます。
RLAHを使うには
Roam Like at Home(RLAH)を使うには、特段何も手続きはしなくてOKです。
既存のプランに通信料の制限あり、海外で上限に達した場合は、ローミング課金されますが、法律で課金額に上限を定めているので、比較的少額の追加チャージで継続利用できます。
単位 | 追加チャージ上限 | |
---|---|---|
電話 | 1分 | 3.2セントとVAT |
SMS(Text) | 1通 | 1セントとVAT |
データ通信 | 1GB | 3.5ユーロ*とVAT |
VATは、Value-added Taxで付加価値税です。
*データ通信の追加チャージ上限は2020年版、2021年は3.0ユーロとVAT、2022年は2.5ユーロとVAT、と段階的に縮小。
公正使用の原則(Fair Use Policy)
Roam Like at Home(RLAH)は、EEA(欧州経済領域)においてローミング課金を廃止したものですが、以下の通り公正使用の原則(Fair Use Policy)があります。
- 自国での滞在期間 > 海外での滞在期間
- 自国での通信量 > 海外での通信量
要は、居住国ではない物価が比較的安い国でSIM契約をして、居住国で恒常的に使用するなど、裁定が効かないように、ユーザーの滞在期間や通信料等を、モバイルオペレーターがモニタリングします。
4ヶ月以上、SIMを購入した国を離れていたり、国内より国外での通信量が多い、とみなされると(=公正使用の原則に反する)、オペレーターからユーザーに確認依頼が入ります。
そこで14日以内にユーザーが、合理的な説明をモバイルオペレーターにできないと、ローミング課金される可能性があります。
しかし、その場合も課金に上限があり、マトリクスは前述通りです。
あまり懲罰的なチャージ金額では無いですね…
流石に、海外引越しをした場合や、RLAHを不正に使用している場合は、モバイルオペレーターに契約を解除される可能性もあるかと思います。
RLAHは、あくまでも一時的な使用が対象ですからね。
注意点
公正使用の原則は、4か月ルールがありますし、通常の旅行や出張程度であれば、そこまで気にする事もないと思います。
公正使用の原則とは別に注意点を挙げるとしたら、EEA域内のモバイルオペレーターが取扱う現地SIMを、どこで入手するかです。
そして現地SIMを入手できたとして、アクティベートできるかが問題です。
というのもイギリスは大丈夫ですが、現在わたしが住んでいるドイツでは、2017年7月に電気通信法(Telekommunikationsgesetz)の改正があり、プリペイドカード含むSIM購入アクティベートに際し、ドイツ国内の住所が必要となりました。
テロ対策が背景にあります。同法のセクション111(Daten für Auskunftsersuchen der Sicherheitsbehörden)の箇所ですね。
法改正後ですが、人によっては滞在先ホテルの住所で大丈夫だったとか、ドイツの住民票が必要だったとか、実務上はモバイルオペレーターや店頭スタッフさん次第で、対応がまちまちなので、お気を付けください。
SIM自体の購入はできても、アクティベート(本人確認・住所確認)の段階で躓く事が多発しているようです。
ドイツ現地でSIMを購入される場合は、購入前に必ず店頭スタッフさんに「日本のパスポートと、ホテルなど滞在先の住所」で、その場でアクティベートできるか、確認する事を強くおすすめします。
限られた貴重な時間を、現地で無駄にしない為にも、予め海外で使えるSIMを準備しておくのも良いかと思います。
まとめ
EUというと、人・物・資本・サービスの行き来が自由、という印象を持たれている人が多いかと思いますが、海外ローミングまで自由(無課金)というのは、日本人からすると目から鱗というか、利用者メリットが、かなりありますよね。
日本で昔、「パケ死」という言葉がありましたが、ヨーロッパでも同じ問題があり、EUが掲げるデジタル単一市場(Digital Single Market)の枠組みの下、インフラ整備に取り掛かり、ローミング課金の廃止にこぎ着けました。
因みに、イギリスは2020年12末まではEU法が適用される予定ですが、2021年1月以降は要注意です。
2020年2月付けBBC記事によると、イギリスの大手オペレーターは、イギリスがEU法の適用をうけなくなっても、現状ローミング課金の再導入はしないスタンス、との事です。
Mobile roaming: What will happen to charges after Brexit?
引用元リンク:https://www.bbc.com/news/business-45064268
20 February 2020
Operators’ plans
Three has no plans to bring them back in, regardless of how Brexit negotiations turn out.
Vodafone said it currently had no plans to change its roaming charges because of Brexit.
EE said: “Our customers enjoy inclusive roaming in Europe and we have no plans to change this based on the Brexit outcome.”
And O2 said: “We currently have no plans to change our roaming services across Europe. We will be working closely with the UK government and other European mobile operators to try to maintain the current EU ‘Roam like at home’ arrangements once the UK leaves the EU.”
欧州大陸側(EU27か国)のオペレーターも、同様にイギリスを今まで通りに扱ってくれるか注目です。
いわずもがなEEAをはじめとするローミング無料の対象国リストは、SIM購入前にモバイルオペレーターと個別に契約内容をご確認下さい。
※本文は以上です。
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