ドイツと言えば、世界有数の先進工業国。Audi、BMW、Mercedes-Benz、Porsche、Volkswagenなどドイツ車は、日本のみならず世界中で人気があるかと思います。
自動車大国と言われているだけあって、アウトバーンはさることながら国内の自動車道路は隅々まで整備されており、長距離でも難なく走る事ができます。
それが一旦ドイツを出て、隣国に行った途端もう大変で、苦労された経験をした人も多いのではないでしょうか。
ドイツに住み始めるまでは、さぞかしドイツ人ほぼ全員が車を保有しているのかと勝手に想像していたのですが、周囲を見渡すと、必ずしもそんな事はなく、むしろ車を持たない人もいます。
そこで気になったので、ドイツをはじめヨーロッパ内の乗用車保有率を調べてみました。
特に明記されていない限り、ソース元はEU統計局のユーロスタットです。
欧州30か国の乗用車保有台数ランキング
EU27に、イギリス、スイス、ノルウェイを加えた、合計30か国にフォーカスしたいと思います。
乗用車とは、運転手含めてシート定員が8人以下、シート定員が10人以下のタクシーやハイヤー、救急車、キャンピングカー等を含みます。
できれば自家用車に限定したかったのですが、あいにく30か国を網羅する良いソース元が見つかりませんでした。
順位 | 国 | 乗用車保有台数 (単位1,000台) |
---|---|---|
1位 | ドイツ | 46,475 |
2位 | イタリア | 37,876 |
3位 | フランス | 32,006 |
4位 | イギリス | 31,200 |
5位 | スペイン | 23,500 |
6位 | ポーランド | 22,504 |
7位 | オランダ | 8,373 |
8位 | ベルギー | 5,785 |
9位 | チェコ | 5,538 |
10位 | ギリシャ | 5,236 |
11位 | ルーマニア | 5,155 |
12位 | ポルトガル | 5,059 |
13位 | オーストリア | 4,899 |
14位 | スウェーデン | 4,845 |
15位 | スイス | 4,571 |
16位 | ハンガリー | 3,472 |
17位 | フィンランド | 3,399 |
18位 | ブルガリア | 2,771 |
19位 | ノルウェー | 2,719 |
20位 | デンマーク | 2,530 |
21位 | スロバキア | 2,223 |
22位 | アイルランド | 2,142 |
23位 | クロアチア | 1,596 |
24位 | リトアニア | 1,357 |
25位 | スロベニア | 1,118 |
26位 | エストニア | 726 |
27位 | ラトビア | 690 |
28位 | キプリス | 527 |
29位 | ルクセンブルグ | 403 |
30位 | マルタ | 292 |
2017年の情報ですが、イタリアは前年の、ルーマニアは2015年の数値です。
乗用車保有台数でみると、ドイツが圧倒して1位です。
6位ポーランドの22,504千台と、7位オランダの8,373千台で一気に差が広がります。
仕事と観光で、ポーランドもオランダも訪れたことがありますが、鉄道網という点では、オランダの方が張り巡らされていて、充実しているイメージです。
オランダ程、ポーランドの都市をまわった訳では無いので、あくまでもわたしの限られた経験での話ですが、ポーランドの方が(選択肢が無くて)車移動をする機会が多かったです。
ドイツは鉄道網が充実していますが、各国の公共交通機関の発達具合と、乗用車保有台数を比較してみるのも、面白そうです。
絶対数で比較するとイメージ通り(ドイツが1位)かと思いますが、そもそも国ごとで人口が異なるので、違う尺度で見てみます。
人口1千人あたり乗用車保有台数トップ10
絶対数ではなく、人口1千人あたりの乗用車保有台数で、次は比較したいと思います。
ここでの人口は、総人口ではなくて、多くのヨーロッパ圏で免許取得が可能な18歳から、世界保健機構(WHO)の定義で高齢者と区分される65歳未満を指しています。
65歳以上を含めても良かったのですが、何歳までにすべきか悩んだので、一旦高齢者と定義される年齢にしています。
順位 | 国 | 乗用車保有台数 (18-64歳1千人あたり) |
---|---|---|
1位 | フィンランド | 1,036 |
2位 | ルクセンブルグ | 1,032 |
3位 | イタリア | 1,020 |
4位 | マルタ | 988 |
5位 | キプリス | 951 |
6位 | ポーランド | 906 |
7位 | ドイツ | 902 |
8位 | エストニア | 895 |
9位 | オーストリア | 871 |
10位 | スロベニア | 853 |
– | EU27か国平均 | 835 |
18‐64歳の人口1千人あたりで比較すると、ドイツは7位に落ちてしまいました。
上位3か国のフィンランド、ルクセンブルグ、イタリアは、1人あたり1台以上の車を保有している事になります。
ただしEU27か国平均が835台なので、極端にかけ離れた結果にはなりませんでした。
国の面積1㎢あたり乗用車保有台数トップ10
続いて、国の面積1㎢あたりの、乗用車保有台数をリストアップしてみます。
順位 | 国 | 乗用車保有台数 (国の面積1㎢あたり) |
---|---|---|
1位 | マルタ | 926 |
2位 | オランダ | 221 |
3位 | ベルギー | 189 |
4位 | ルクセンブルグ | 155 |
5位 | ドイツ | 130 |
6位 | イギリス | 126 |
7位 | イタリア | 126 |
8位 | スイス | 111 |
9位 | ポーランド | 72 |
10位 | チェコ | 70 |
– | EU27か国平均 | 56 |
国の面積1㎢あたりでも、ドイツはトップではなく、5位という結果になりました。
マルタは、面積がヨーロッパ30か国で、もっとも小さく315㎢しかない(日本の淡路島の半分程度)事に加え、鉄道網が無いという特殊事情があるかと思います。
話が逸れますが、マルタの公共交通機関はバスです。そしてタクシーも多く走っています。何度か行った事がありますが、タクシーの運転手の皆さん、凄くスピードを出すので、車酔いしやすい方はお気を付けください。結構、運転が荒い人が多いイメージです。
北欧やバルト三国は、低い順位で何れもEU27か国平均を下回っています。北欧に関しては、そこまで国土面積が小さく無いので、あまり違和感はありませんね。
ドイツ国内で、最も売れている車
基本的にドイツ国内のタクシーは、Mercedes-Benzが多いですが、乗用車保有台数では欧州トップを誇るドイツで、どの車が最も売れているのか調べてみました。
Kraftfahrt-Bundesamt(ドイツ連邦陸運局)がソース元です。
2019年において、乗用車の新規登録台数トップ5です。
順位 | メーカー | 車種 | 新規登録台数 |
---|---|---|---|
1位 | Volkswagen | Golf | 204,550 |
2位 | Volkswagen | Tiguan | 87,771 |
3位 | Mercedes-Benz | C-Class | 64,403 |
4位 | Volkswagen | Polo | 61,286 |
5位 | Volkswagen | Passat | 59,322 |
Volkswagenがトップ5の内、4つを占める結果になっています。中でも、Golfが飛びぬけて売れています。
さすが倹約家と言われているドイツ人です(移民も増えてきているので、純粋にドイツ人だけが購入者という訳ではありませんが)。
なおVolkswagenは、日本語で大衆車という意味です。Volksは大衆とか国民、Wagenは車(馬車、貨車)の2語から出来ています
強引にカタカナ表記すると、「フォルクス・ヴァーゲン」という発音に近いです。
VW日本法人の公式サイトでは、「ワーゲン」ですが、これは英語読みにして、日本人に分かりやすくしているものと思われます。
Wagenは男性名詞なのですが、同じ車という意味で使われるAutoは中性名詞と、ドイツ語はややこしいです。なぜ同じ車なのに、単語の性が異なるかというと、Autoが外来語だからです。
自動車大国ドイツで売れている車種というのは、信頼性が高そうというか安心感がありますね。
まとめ
アンゲラ・メルケル首相が、2014年にIAAと言われている世界最大規模の国際展示会(モーター・ショー)で、「ドイツでは、7人に1人が直接的或いは間接的に自動車産業に就いている」とコメントしています。
因みに、メルケル首相は、ドイツの歴史上初めて首相になった女性です。
メルケル首相のコメント「ドイツ人の7人に1人が、自動車産業に就いている」は、英語でも日本語でも、しばしば引用されるのですが、本当のところは、ちょっと盛った感があります。
というのも2018年において、83万人程度の雇用を自動車業界が生み出している一方、ドイツ全体の労働人口は45百万人弱だからです。
なので、間接的な仕事も含めて「ドイツ人の54人に1人が、自動車産業に就いている」が正確な数値と言えます。
メルケル首相の、間接的なという意味では、かなり上下流の業態まで含めてしまったものと思われます。自動車は様々なパーツで出来ていますからね。
何れにせよ「54人に1人」でも、十分に多いですし、自動車を含む第二次産業は、ドイツGDPの1/3程度なので、いかにドイツで製造業が重要な分野であるかは間違いありません。
排ガス不正問題は記憶に新しいかと思いますし、環境保護(二酸化炭素の排出規制)、電気自動車(EV)へのシフト、自動運転技術やIT化など、どちらかというと転換期に来ていると言われている自動車産業ですが、今後数十年で、どのようにドイツが順応していくのか、或いは取り残されてしまうのか、気になるところです。
自動車大国ドイツは、乗用車保有台数の絶対値ではヨーロッパ内1位である一方、人口や国土面積あたりで比較した場合、上位ではあるものの必ずしも1位では無い、という記事でした。
※本文は以上です。
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