ビジネスマナーは国によって勿論基準が異なるので、海外かぶれと思われてしまうかもしれませんが、すくなくともスーツ発祥の地と言われているイギリス現地で働いていた身として、海外で恥をかかない為のビジネスマナーを、まとめておきたいと思います。
メラビアンの法則という言葉を聞いた事がありますでしょうか、見た目で第一印象の大部分が決まる、と言われているものです。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心理学名誉教授のアルバート・メラビアンが、1971年に「Silent messages」という論文で発表した研究結果を法則化したもので、人が第一印象を決める要素は3つある、と言われています。
- 言語情報
- 聴覚情報
- 視覚情報
見た目(視覚情報)だけが大事という訳ではありませんが、クールビズなどカジュアル化が進んでいる中でも、身なりを整える事で相手への敬意を示したいものです。
サイズ感等に関しては、海外と日本で異なるものでもないので、本記事ではあくまでも日本国内では許容されていても、海外だと変に見えてしまう、また新入社員が間違えやすいポイント等に注目して説明したいと思います。
スーツ
- 一番下のボタンはかけない
- 立っている時はボタンをかけ、座っている時は外す
- 黒色はNG
- ポケットに物は入れない
- 王道の色は、ネイビーやグレー
- ノッチドラペル(ひし形)を選ぶ
- ポケットのフラップは外では出し、室内ではしまう
日本ではリクルートスーツなど、黒色(勿論、礼服とは違う種類の黒色)のスーツが許容されていますが、イギリスで黒色といえば正装で、普段着るスーツでは無いので多少かしこまり過ぎて見えてしまいます。
その割に、シャツやタイなど黒色のスーツ以外が正装とは程遠い場合が多く、アンバランスな組合せが、一段とイギリス人を困惑させてしまいます。
日本国内でも外資系の面接を受ける時などは、特に黒色のスーツは避けた方が良いと思います。
またスーツのポケットには物を入れないのが原則です、スーツの形が崩れる程物を入れるのは見苦しいので控えましょう。
イギリスで売られている既製品で安いスーツだと、そもそも飾り用にフラップをつけていて、ポケット本体が無いものがある程です。
シャツ
- 王道の色は、白や薄い青
- 胸ポケットが無いものを
- 半袖シャツはNG
- 二重襟は言語道断
- ボタンダウンは避ける
ビジネスマナーかと言われると違うのですが、本場イギリスのシャツは胸ポケットがありません。
なので、そもそも胸ポケットがあるシャツは、イギリス人にとって奇妙に見えます。
勿論、多くの日本人と仕事をしている人なら、あぁはいはい、という感じで受け止めてくれるかもしれませんが、そこであなたがしれっと胸ポケットの無いシャツを着こなしていたら、外国人からの評価が上がるかも?!
プラスにはならないけど、マイナス評価にはならない、といった方が正しいかもしれません。
胸ポケットがパンパンになるまで物を入れようものなら…
袖の適正な長さですが、スーツから多少でる位なので、半袖シャツは論外です。
日本国内で胸ポケットが無いシャツを手掛けているメーカーに、「鎌倉シャツ」があります。
ファストファッションと言われて久しい今日、「鎌倉シャツ」は異常な程の高い原価率で、質の良い製品を、世に提供してくれているメーカーです。
海外で通用するデザインに加え、商品自体の質も極めて高く、コストパフォーマンス抜群のシャツだと思います。
https://www.shirt.co.jp/
日本のデパートでも公式サイトで確認できる限り、輸入品で胸ポケットの無いシャツを取扱っていたりしますが、結構良いお値段ですね。
なおイギリス現地では、カフスボタン(別名フレンチカフス)を使うシャツが多いです。
日本で一般的なバレルカフス(Barrel=樽のように見える事から)でも全く問題ありませんが、フォーマルでもカジュアルでも無い位置付けで、ややカジュアル寄りなイメージかと思います。
ネクタイ
- ストライプ柄は避ける
- 無地か小紋柄が主流
- スーツのラペルと同じ位の幅で揃える
- 長さは、ベルトに少しかかる位に調整
ストライプ柄、イギリスではレジメンタル(Regimental)と呼ばれています。敢えてビジネスの場では避けた方が良いです。
レジメンタルとは、「連隊に属する」ことを意味します。所属している連隊を認識させるため、軍旗に使用されていた「レジメンタルストライプ」と呼ばれるデザインをネクタイに取り入れたことが、レジメンタルタイの起源と言われています。
その後、学校や各種団体で固有のレジメンタルタイを保有するようになった為、ストライプ柄のネクタイを着用すると、何らかの団体との繋がりを連想させてしまうリスクがあります。
もっとも同窓会や、所属する団体の会合など、レジメンタルタイを着用して出席する場合は、この限りではありません。
イギリスの場合、ストライプ柄は正面から見て右上がりです。
ポール・スミスなど、英国ブランドのネクタイは、下記画像の通り右上がりのストライプ柄です。
補足ですが、イギリスのレジメンタルタイを参考に、アメリカで取り入れたのがブルックスブラザーズです。
アメリカの場合、ストライプ柄は正面から見て左上がりです。
勿論、日本人だからという理由で、ストライプ柄でもスルーされる事がほとんどだと思いますが、イギリス現地でストライプ柄を着用している人は、わたしの周りではほとんど見なかったので、やはり避けた方が良いと思います。
間違ってもイギリス人に、ストライプ柄のネクタイをプレゼントする事は避けましょう。
因みに現地で役職がそれなりの人は、フェラガモ率が異常に高いです。
靴
- 靴ひもが無いローファーは避ける
- 内羽根式のストレートチップ(Cap-toed、つま先に一本線の靴)が有能
- モンクストラップなら、靴ひもは無いがビジネスでもOK
- 業界にもよるけど、黒色が無難(茶色はカジュアル寄り)
良く分からなかったら、黒色のストレートチップにしておけば間違いないです。
その他
- 靴下の色は、スーツや靴と同色系に
- 靴下は素肌を隠せる長さのものを
- ベルトの色は、靴と同色に
- ベルトの穴は真ん中を使う
- 髭は整えていれば剃らなくてもOK
- 宗教的な理由であればターバンもOK
お客様や社内で目上の方とのミーティング等がある場合は別ですが、靴下は刺し色を選ぶ人を多くみかけるようになりました。
またベルトをしない人もいます。単にベストサイズだからという人と、ビスポーク仕様なのでベルト不要という人と…
後者は、本切羽仕様の上着を、ボタンをかけ外して着るのと似たような感覚ですね。
最後に
日本国内のスーツの着こなしが世界に広まれば別ですが、無駄に身なりで外国人から低評価を受けない為にも、以上気を付けておきたいポイントをまとめました。
日本とイギリスどちらが正しくて、どちらが間違っている、という話では無くて、単純に違いを理解した上で、今後海外に行く際、着こなしの参考になればと思います。
日本人が特に注意すべき点を5つ挙げるとしたら、
- 黒色のスーツは避ける
- スーツのポケットに物は入れない
- シャツは胸ポケットが無いものを
- ストライプ柄のネクタイは避ける
- ローファーは避ける
総じてイギリス人のスーツの着こなしは、過度な装飾・色使いを避け、質素というか、まさに伝統や格式を重んじ保守的ですね。
若い時はオシャレにスーツを着こなしたいと思っていましたが、やはり身なりは相手への敬意を表す意味合いが強いので、主張しすぎない・外し過ぎない程度に楽しみたいものです。
言わずもがな会社や業界によって、ドレスコードがあるかと思いますので、本記事は参考程度に読んで頂けたら幸いです。
※本文は以上です。
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