外国人が学ぶ外国語は何か気になった事はありませんか?海外ヨーロッパに住んでいると、母国語を含め3-4か国語を話す人と本当によく遭遇します。
渡英した直後こそマルチリンガル(多言語話者)の多さに驚かされたものですが、話を聞くと親が国際結婚で出身国が違かったり、親戚が外国に住んでいたり、幼少期から2つ以上の言語や文化に親しんでいる場合が少なくありません。
また配偶者やパートナーが外国人という例も、ごく普通に良くあります。
日本の外国語教育だと、タイミングとしては大学で第二外国語を勉強し始める人が多いかと思います。
渡英するまでは意識した事がありませんでしたが、ヨーロッパにおける外国語教育はどうなっているのか、また海外現地で人気の第二外国語が何か気になったので、調べた時の記録です。
欧州連合(EU)の現地校で、人気の外国語
欧州連合(EU)の現地校で、履修されている外国語です。
ソースは欧州統計局(Eurostat)で、2018年のデータです。対象学年別に区切っています。
予想通り英語が圧倒的なので、英語を除いた2位以下をご参照下さい。
対象学年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|---|
Primary (ISCED level 1) | 英語 82.1% | フランス語 5.9% | ドイツ語 4.1% | スペイン語 0.6% | オランダ語* 0.5% |
Lower secondary (ISCED level 2) | 英語 97.5% | フランス語 32.7% | ドイツ語 23.2% | スペイン語 17.4% | ロシア語 2.3% |
Upper secondary (ISCED level 3) | 英語 86.8% | フランス語 19.4% | ドイツ語 18.3% | スペイン語 17.5% | ロシア語 2.4% |
*オランダ語はフレミッシュ語含む
ISCEDは国際標準教育分類(International Standard Classification of Education)で、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が策定している枠組みです。
ISCED level 1は、EUでは多くの国で6歳から。初等教育という呼称です、年齢的には日本でいう小学校のイメージでしょうか。
ISCED level 2は、EUでは多くの国で12歳から。前期中等教育という呼称です、日本でいう中学校のイメージ。
EUでは一般的にISCED level 1-2は通算9-10年程度で、義務教育(Compulsory education)とされています。
ISCED level 3は、多くの国で15-16歳から。後期中等教育という呼称です。
EUでは初等教育、前期及び後期中等教育何れにおいても、英語を除いた外国語は、フランス語・ドイツ語・スペイン語が安定のトップ3という結果でした。
さらりと書きましたが、初等教育はヨーロッパの多くの国々で6歳からですから、この位の年齢で既に外国語を学んでいる事実に驚きです。
もう少し説明すると、就学前の幼稚園児クラスでさえ外国語のレッスンがあったりします。手遊び歌とかで、勉強というよりは遊びに上手く外国語を取り入れて慣れさせるというものですが。
ロシア語は、EU27か国のどの言語にも該当しませんが、EU27か国以外だと最もEU内で履修されている言語です。歴史的な背景からか、旧共産圏のバルト三国やブルガリアでロシア語を学ぶ生徒が多いです。
ヨーロッパで使われている国ごとの公用語リスト、言語別の経済規模(GDP)、単純合算した総話者数などは別途、以下投稿記事にまとめています。
就学年齢や教育システムは、各国(該当する場合は、各州や地域)により異なるので、もし詳細にご興味があればEU公式サイトである、下記リンク先をご参照下さい。
https://eacea.ec.europa.eu/national-policies/eurydice/national-description_en
欧州連合(EU)の現地校で、二か国語以上を学んでいる生徒の国別割合
欧州連合(EU)の現地校、後期中等教育 (ISCED level 3)で、二か国語以上の外国語を学んでいる生徒の国別割合です。
前述の通り、英語を学ぶ生徒がぶっちりぎ1位なので、実質的に英語以外の外国語を学ぶ生徒の割合がどの位かを示すリストと言えるかと思います。
国 | 生徒の割合% |
---|---|
ルーマニア | 98% |
フィンランド | 94% |
フレミッシュ (ベルギー) | 84% |
ルクセンブルグ | 82% |
フランス | 78% |
ポーランド | 73% |
ラトビア | 70% |
エストニア | 67% |
ベルギー | 67% |
ブルガリア | 58% |
スロバキア | 57% |
スウェーデン | 56% |
チェコ | 52% |
クロアチア | 50% |
スロベニア | 49% |
マルタ | 48% |
フレミッシュ (ベルギー)* | 47% |
ハンガリー | 39% |
オーストリア | 36% |
イタリア | 36% |
キプリス | 35% |
オランダ | 35% |
ドイツ | 34% |
リトアニア | 31% |
デンマーク | 31% |
スペイン | 21% |
ポルトガル | 6% |
ギリシャ | 1% |
EU平均値 | 48% |
*2つ目のフレミッシュ(ベルギー)があるのは、ドイツ語を母国語とする生徒を含めているからです。
何れにせよ上位国は、公用語が2つ以上あったりする点は要注意です。
わたしが現在住んでいるドイツは34%とEU平均値48%を下回っています、オランダ人は語学に堪能なイメージですが英語に振り切っているという事でしょうか。
あくまでも二か国語以上の外国語を学んでいる生徒の国別割合なので、数値が低いから外国語教育に弱いという意味では無いかと思います。
スペインとポルトガルは、似ている言語なのに、両国で15%も差が出ているのは興味深いですね。
ギリシャは1%と、清々しいです。
欧州連合(EU)では、マルチリンガリズム(多言語主義)を推進
冒頭で触れた通り、ヨーロッパでは親が国際結婚で出身国が違かったり、親戚が外国に住んでいたり、配偶者やパートナーが外国人だったり、幼少期から2つ以上の言語や文化に親しんでいる場合が少なくありません。
それこそ陸路で、気軽に隣国へ行き来できてしまうので、例え上記のようなケースで無くても、欧州では「海外に行く」、「異文化体験をする」という感覚が日常化していると言えます。
また種明かしをするとヨーロッパでは、The European Strategy for Multilingualism (ESM)といって、多言語主義を推進しています。
多言語主義は大きく3つの目標があります:
- 欧州単一市場における労働力の流動性、雇用促進、ヨーロッパの成長
- 社会的結束の強化、移民の統合、異文化間の対話
- 多言語で管理する超国家的民主主義におけるコミュニケーション
EUは「人・物・資本・サービスの移動の自由」を単一市場の理念として掲げ、EU27か国中19か国で通貨ユーロの導入に至っていますが、言語に関しては流石に統一(単一)化せず、逆に特定の言語が支配的にならないよう配慮し、少数派・地域言語を尊重しています。
あまり気にした事がありませんでしたが、EU公式文書を閲覧しようとすると、必ずEUメンバー国全ての言語で作成されていて、誰でも内容を理解できるようになっています。
物凄く非効率的な気もしますが、効率さではなく多言語主義に配慮した結果、このような形になっています。
少数派・地域言語を尊重する背景としては、単一市場を達成するのに、EU市民によるコミュニケーションが必須で、言語や異文化の理解が大事と考えられているからです。
ゆえにEUでは以前より、母国語以外に少なくとも2つ以上の外国語ができる事が望ましいとして、メンバー各国と協働で比較的若い対象年齢から外国語教育に注力しています。
まとめ
欧州連合(EU)の現地校では初等教育、前期及び後期中等教育何れにおいても、英語を除いて履修されている外国語は、フランス語・ドイツ語・スペイン語が安定のトップ3という記事でした。
またEUでは多言語主義(ESM)を推進している為、例えば後期中等教育 (ISCED level 3)で、二か国語以上の外国語を学んでいる生徒は、EU平均値で48%と約半数に及びます。
島国である日本の場合、かなり事情が異なるので一概にEUの外国語教育と比較する事はできないと思いますが、EUメンバー国では必須科目として低い対象学年から外国語教育がサポートされているのは良いですね。
現在はドイツに、その前はイギリスに住んでいましたが母国語をしっかりと習得(どの程度という議論は別途ありますが)する前に、外国語を学ぶ事に否定的な意見はあまり見聞きしないです。
定量的な数値はありませんが、例えばイギリスに住んでいた時、わたしの周りではフランスと全く縁もゆかりも無くフランス語を喋る事ができないイギリス人(やその他外国人)が、フランス系の幼稚園に子どもを通わせるケースを散見しました。
※本文は以上です。
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