ローマ字(英語)表記にした場合、日本人として「姓」と「名」はどちらを先に書くべきなのでしょうか。
実は世界の約98.5%にあたる、日本を含む193か国におけるパスポート表記は、日本同様「姓-名」となっていたり、かなり意外かもしれませんがEU圏における運転免許証やVISA(査証)カードなどは、やはり「姓-名」の書式です。
なんだか日本人だけの問題ではなくて、ややこしいですね。
本記事では、海外在住者が垣間見た実生活や身分証明書における「姓名」の順序、また様々な呼称のファースト・ラストネーム等について説明したいと思います。
ローマ字(英語)表記で姓名の順序は
早速ですが、日本と欧州の場合を比較してみます。
欧州では常にローマ字(英語)表記だから、「名-姓」の順序かというと、必ずしもそうではありません。
日本は、「姓-名」の流れ
日本における「姓名」のローマ字表記については、文化庁からの各種通知(外来語の取扱い,姓名のローマ字表記について)により、2020年1月1日から「姓-名」の順序で統一されています。
それまでは、「名-姓」の形式でした。
姓名のローマ字表記についての考え方
引用元リンク:https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/22/tosin04/17.html
日本人の姓名については,ローマ字表記においても「姓-名」の順(例えばYamada Haruo)とすることが望ましい。なお,従来の慣習に基づく誤解を防くために,姓をすべて大文字とする(YAMADA Haruo),姓と名の間にコンマを打つ(Yamada,Haruo)などの方法で,「姓-名」の構造を示すことも考えられよう。今後,官公庁や報道機関等において,日本人の姓名をローマ字で表記する場合,並びに学校教育における英語等の指導においても,以上の趣旨が生かされることを希望する。
ただし理由は後述しますが、手元にある2020年以前に発行された日本のパスポートは既に、「姓-名」の順でした。
欧州も、一部で「姓-名」
ハンガリーを除く欧州では、基本的に「名-姓」の順です。
わたしは現在ドイツに、引越前はイギリスに住んでいましたが、あまりに当然過ぎるという事か日常生活において、「姓」をすべて大文字にしたり、「姓」と「名」の間にコンマを打つといった事は、ほとんど見かけません。
ビジネスでも同様です。
唯一、「姓」をすべて大文字にした文書をみたのは、イギリスの出生証明書です。この場合、「名-姓」の順でした。
「姓」のみ大文字にしている理由は、「名」と明確に区別する為です。
イギリスやドイツにおける銀行及びクレジットカードも「名-姓」の順番で、全て大文字になっていますが、興味深い事に運転免許証はどちらの国でも「姓-名」でした。
日本人である筆者は渡英後、イギリスの運転免許証に切替えたので、そこまで違和感がありませんでしたが、英語なのに国籍問わず苗字が名前より先なんです。
EUでは運転免許証の書式を統一しているので、加盟国及びアイスランド・ノルウェー・スイスであれば同じですね。
気になったので調べたところ運転免許証に加え、パスポートやVISA(査証)、Resident Permits(滞在許可証)などのカードもローマ字表記にも関わらず、国籍問わず「姓-名」の形式がEUでは採用されています。
https://ec.europa.eu/home-affairs/what-we-do/policies/borders-and-visas/document-security_en
なぜパスポートは世界で「姓-名」が主流なのか
国際結婚や、パートナー・恋人・親族が外国人等である場合を除き、日本人以外のパスポートを見る機会は少ないかもしれませんが、実はヨーロッパのみならず世界的にみても、パスポートは「姓-名」表記が主流です。
日本人のパスポートが「姓-名」順なのは違和感がありませんが、なぜなのでしょうか。
これは国際民間航空機関(The International Civil Aviation Organization = ICAO) がDocument 9303 Machine-readable Travel Documentsとして、機械で読取り可能なパスポート(旅券)やVISA(査証)などの世界標準化を図った為です。
MRP(Machine-Readable Passport)やMRTD(Machine-Readable Travel Document)などと呼ばれたりしていて、国際標準化機構の基準(ISO/IEC 7501-1)でもあります。
パスポートの場合、写真が掲載されているページ下部にある、44の文字数で成立つ2行です。
P<JPN[姓]<<[名]<<<<<<<<<<<<<<(略)
2行目サンプル
[パスポート番号]*JPN[生年月日yymmdd]*[性別][パスポート有効期限yymmdd]**<<<<<**
*はチェックディジット(検査数字)です。
因みに国際民間航空機関(ICAO)によるとDocument 9303の初版は1980年で、現在最新のものは2015年にリリースされた第7版です。
なので日本式の「姓-名」に世界が合わせたというよりは、日本を含む世界がICAOに合わせたという訳です。
欧州連合(EU)発足は1993年ですから、Document 9303に沿う形でパスポートや運転免許証でも「姓-名」の順になるよう整備された経緯があります。
国際民間航空機関(ICAO)は国際連合の一組織で、外務省によると2020年7月現在で日本含む193か国が加盟しています。
つまりICAO加盟国がパスポートを発行する際、「姓-名」形式に準拠する事が求められます。
外務省によると現在、日本が承認している国の数は195か国なので、世界の約98.5%(193/196)がカバーされている計算になります。
様々な呼称のファースト・ラストネーム
日本のパスポート上だと、「姓/Surname」、「名/Given name」と表記されていますが、英語では様々な呼称があるので表にまとめてみました。
姓 | 名 |
---|---|
Surname | Given name |
Family name | First name |
Last name | Forename |
最後に
海外における実生活では「名-姓」の順が一般的ですが、ローマ字(英語)表記でも、意外と日本同様「姓-名」の採用形式が散見されます。最後に、もう一度まとめておきます。
- 世界98.5%程度の国で、パスポートは日本同様「姓-名」の形式
- EUは運転免許証、VISA(査証)、Resident Permits(滞在許可証)カードなどで「姓-名」を採用
- しかし海外実生活上は、国籍問わず多くの国で「名-姓」が一般的*
*文化庁の公式サイトによると世界の中で、日本のほか、中国・韓国・ベトナム・ハンガリーで「姓-名」の形式が用いられているようです。
日本人にとっては違和感が無いので有難いですが、国際民間航空機関(ICAO)がDocument 9303を整備した際、なぜ「名-姓」ではなくて「姓-名」を採用したのかは、調べましたが良く分かりませんでした。
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