パスポートのローマ字表記に関して、ヘボン式ローマ字で名字や名前がしっくりくれば良いですが、なんともな感じになってしまうのが気になる方もいるかと思います。
特に両親の何れかが外国人の場合、二重国籍で戸籍に名前がカタカナ表記されている場合、国際結婚された場合、海外でも通じるような名付けをされた場合などが挙げられるかと思います。
旅券法では原則、パスポートのローマ字表記は戸籍に記載された通りに、ヘボン式ローマ字を当てはめますが、実はパスポートの初回申請時に限り、例外として非ヘボン式表記が認められる場合があります。
絶対とは言い切れませんが、本記事ではパスポートのローマ字表記を、非ヘボン式にする方法、また当然のように使われているヘボン式ローマ字とは、そもそも何か等を説明したいと思います。
非ヘボン式ローマ字表記が認められる場合
日本のパスポートにおいて、非ヘボン式ローマ字表記が認められる場合を、リスト化してみました。
・日本国外で発行された出生証明書がある
・国際結婚
・両親のいずれかが外国人
・外国との二重国籍等により、戸籍上の氏名が外国式にカタカナで記載されている
・戸籍上の氏名が漢字で記載されていてもヨミカタが外国式
旅券法施行規則第5条第2項及び第3項で、パスポートの氏名は、ヘボン式ローマ字での表記が原則となっています。
しかし下記赤字マーカー部分の通り、例外規定があります。
(旅券の記載事項)
引用元リンク:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=401M50000020011#47
第五条 法第五条第四項の外務省令で定める事項は、本籍の都道府県名、生年月日及び性別とする。
2 法第六条第一項第二号の氏名は、戸籍に記載されている氏名(戸籍に記載される前の者にあっては、法律上の氏及び親権者が命名した名)について国字の音訓及び慣用により表音されるところによる。ただし、申請者がその氏名について国字の音訓又は慣用によらない表音を申し出た場合にあっては、公の機関が発行した書類により当該表音が当該申請者により通常使用されているものであることが確認され、かつ、外務大臣又は領事官が特に必要であると認めるときはこの限りではない。
3 前項の氏名はヘボン式ローマ字によって旅券面に表記する。ただし、申請者がその氏名についてヘボン式によらないローマ字表記を希望し、外務大臣又は領事官が、出生証明書等により当該表記が適当であり、かつ、渡航の便宜のため特に必要であると認めるときは、この限りではない。
4 前項の規定に基づき旅券面に記載されるローマ字表記は、外務大臣又は領事官が特に必要と認める場合を除き変更することができない。
例外規定を読むと、非ヘボン式ローマ字表記にするには、申請者がその旨を希望し、表記が外務大臣又は領事館により適当であり、渡航上の理由からも必要性が認められる必要があります。
外務大臣又は領事館により適当であるか、どう判断するかですが、旅券法施行規則では例として「出生証明書」を挙げています。
これは海外現地にて発行された出生証明書(つまり英語などアルファベットを用いた外国語で、名前のスペルが記載されている)を指しているものと思われます。例としては、日本人が日本国外で出産した場合、日本に住む外国人が日本国外で出産した場合等でしょうか。
「出生証明書」以外で、上記赤枠で囲った例は東京都生活文化局のガイダンスを参考にしています。
特に「戸籍上の氏名が漢字で記載されていてもヨミカタが外国式」の場合は、実質的に全ての希望する人に該当するものと思われます。
何故かと言うと、戸籍上に漢字の傍訓(フリガナ)は記載されない(過去、戸籍に傍訓の記載を認めていた事があるが、平成6年11月16日付け民二第7005号民事局長通達によって廃止)ので、ヨミカタは自己宣言したものだからです。
外務省の公式サイト上でも、いつからかは記載ありませんが現在において、生活実態がある氏名の場合、非ヘボン式ローマ字表記を例外的に認めることとしました、とあります。
外務省
引用元リンク:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/pass_4.html#q17
パスポートに関するよくある質問
パスポートの氏名の表音が国際的に最も広く通用する英語を母国語とする人々が発音するときに最も日本語の発音に近い表記であるべきとの観点から,従来よりヘボン式を採用しています。その一方で,近年,氏名,特に名について,国字の音訓及び慣用にとらわれない読み方の名や外来語又は外国風の名を子に付ける例が多くなる等,旅券申請において表記の例外を希望する申請者が増えていることから,その氏名での生活実態がある場合には,非ヘボン式ローマ字表記であっても,その使用を認めることとしました(ただし,パスポートを一度取得された後のローマ字氏名表記の変更については,日本及び渡航先における出入国管理上の問題となり得る懸念があることや,国による旅券管理上の困難さ等から,特に必要と認める場合を除き認められませんのでご注意ください。)。
例えばケント君、ヘボン式ローマ字表記だとKentoですが、希望が通ればKentとする事ができます。Kentの方が自然な感じになりますね。
ヘボン式ローマ字とは、綴方表
ヘボン式ローマ字とは、英語を母国語とする人々が発音するときに最も日本語の発音に近くなるよう表記されたものです。
米国人医療伝道宣教師、医師であるJames Curtis Hepburn(1815年~1911年)が考案したもので、彼の名字Hepburnがヘボンの由来です。
ヘボン博士は江戸時代末期の1859年に来日、宣教師として布教活動を行う傍ら、医療活動や横浜にヘボン塾を開き医学と英語の教育を実施、また和英辞典である和英語林集成(初版は1867年)、聖書全訳となる新約聖書(1876年より分冊刊行、完訳は1880年)をそれぞれ日本で初めて出版しています。
元々、外国人が日本語を学ぶ前提でまとめられた経緯上、ヘボン式ローマ字の難点として、外来語又は外国風の言葉に関しては、敢えてヘボン式ローマ字をあてはめるとスペルが変になってしまう場合があります(前述ケント君の例)。
手塚治虫文化賞第15回(2011年)でマンガ大賞を受賞した、村上もとか氏による「仁」。漫画自体物凄い有名ですが、テレビドラマ化された事で更にファンが増えたかと思います。この作品の中で、ヘボン博士が登場しています。
話が逸れますが、ドラマ「仁」の主題歌は、心に沁みますよね。
外務省が公表している、ヘボン式ローマ字綴方表へのリンクです。
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/passport/hebon.html
最後に
ヘボン式ローマ字は、成り立ちを知らないと、ちょっと扱い難いかもしれませんが、日本の道路標識や鉄道の駅名にヘボン式が採用されていて、実は日々の暮らしの中でよく使われています。
最後に、日本のパスポートにおいて、非ヘボン式ローマ字表記が認められる場合を、もう一度掲載しておきます。
・日本国外で発行された出生証明書がある
・国際結婚
・両親のいずれかが外国人
・外国との二重国籍等により、戸籍上の氏名が外国式にカタカナで記載されている
・戸籍上の氏名が漢字で記載されていてもヨミカタが外国式
旅券法施行規則第5条第4項によると、一度取得したパスポートはローマ字表記の変更が原則認められないので、初回申請時はくれぐれもお気をつけ下さい!
余談ですがイギリスの場合、改名し放題で新たな名前でパスポートや運転免許証など政府発行の写真付きIDが取得できてしまうのですが、古い名前の履歴は新パスポートにまったく紐付けされないのか、出入国管理上の扱いがどうなるのか、ちょっと気になってしまいました。
※本文は以上です。
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