ヴィーガン(Vegan)という言葉を聞いた事がありますでしょうか。
イギリスに住んでいた時、友人とヴィーガンであるパートナーを自宅に招いてご飯を食べる事になり、わたしは初めてヴィーガン(日本語ではビーガンとも、但し厳密にはBeeganとの混同を避けるべき)という言葉を知りました。
ヴィーガンと言っても何となくベジタリアンだろうから、お肉料理以外を準備すれば良いかと思っていたところ、お肉以外にもNGな材料や調味料などが結構あり、急遽メニューを立て直した経験があります。
本記事では、イギリスが発祥と言われている言葉ヴィーガン(Vegan)の意味とは、また混同されがちなベジタリアン(Vegetarian)との違い、その他ペスカタリアン(Pescatarian)、ビーガン(Beegan)、フルータリアン(Fruitarian)他とは一体何か、それぞれ簡単に説明したいと思います。
VeganとBeeganは日本語にすると、どちらもビーガンとカタカナ表記される事が散見されますが、別物なので注意が必要です。
Vegan(ヴィーガン)とは
Vegan(ヴィーガン)とは、あらゆる種類の肉、卵、乳製品を食べない人を指します。
英国ヴィーガン協会によると、Veganism(ヴィーガニズム)を以下の通り定義しています。
Veganism is a way of living which seeks to exclude, as far as is possible and practicable, all forms of exploitation of, and cruelty to, animals for food, clothing or any other purpose.
引用元リンク:https://www.vegansociety.com/go-vegan/definition-veganism
定義された文章を読むと、単に動物性の食物に留まらず、衣服(意訳すると革製品、ウールなど)を始め、動物の搾取・虐待に繋がるような、あらゆる物事(意訳すると、家畜産業や動物園・水族館、動物実験によりうまれた製品など)を排除する事が、Veganism(ヴィーガニズム)の対象となっている事が分かります。
上記のような生活全般にVeganism(ヴィーガニズム)を実践している人を、Ethical veganと呼びます。
一方で食生活のみVeganism(ヴィーガニズム)を実践している人を、Dietary veganと呼びます。
言わずもがな、Ethical veganの方が大分硬派で、活動家の方々は大体Ethical veganだと思います。
Veganの由来
Vegetarian(ベジタリアン)という言葉は昔から存在していましたが、Vegan(ヴィーガン)という言葉は、1944年にDonald Watson氏によって初めて使われました。
1944年は英国ヴィーガン協会が設立された年ですが、まさに当時、卵や乳製品の消費に反対する人たちが集まり、Non-dairy vegetariansに代わる新たな用語を議論していたそうです。
そしてDairyban、Vitan、Benevoreが候補にあったものの、最終的にVeganに落ち着きました。
良く見るとVeganは、vegetarianの前3文字、後2文字の組合せになっています。
英国Vegan人口
英国ヴィーガン協会によると、2019年に600,000人程度のVeganがイギリスにいて、人口の1.16%に及ぶとの事です。
ざっくり100人に1人がVeganという事になりますが、元イギリス在住者としての肌感覚ではもう少し多い気がします。
因みに2015年に遡ると、150,000人程度(人口の0.25%)がVeganだったようなので、4年でVegan人口が4倍に増えたことになります。
またイギリスでは、VeganやVegetarian向けのメニューを提供するレストラン、商品を販売するスーパー等は年々増加傾向にあり、健康志向の高まりと相まってか個人のみならず、企業側もVeganismを無視できない市場、また新たな収益機会とみている事が伺えます。
ガーディアンの2020年1月付けの記事によると、2019年イギリスにおいて新たに生産された食品の、1/4がVeganラベルだったとの事。
マクドナルドやKFC、ピザハットなどファストフードでさえ、VeganやVegetarian向けの商品をプロデュースしていますが、しばしVeganの方々から、必ずしもVeganismに沿っていない(例えばマヨネーズを使用したり、何らかの事故で肉が提供されてしまったり)と突っ込まれています。
https://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/mcdonalds-meat-vegetarian-wrap-chicken-tortilla-apology-response-twitter-a8747726.html
Veganが避ける栄養成分
豚や牛、羊などの肉、卵、チーズやヨーグルトなどの乳製品、ハチミツなどは、誰でも見分けがつきやすい一方、動物由来の栄養成分が含まれているかは、対象商品から判断する事が難しい場合もあります。
時に紛らわしい、というか知らないと分からないと思いますが、以下はVegan(ヴィーガン)が避ける栄養成分例です。
- Amino acids
- Casein
- Collagen
- Fatty acids
- Glycerin
- Lactose
- Lanolin
- Lard
- Rennet
- Shellac
- Whey
わたしは雑食なので何でも食べますが、いかに自分が口にするものの成分を気にしていなかった気付かされます…
Vegetarian(ベジタリアン)とは
Vegetarian(ベジタリアン)は聞いた事がある人も多いかと思います。菜食主義者と訳されますが、Vegetarianの中でも、大きく3つに分類されます。
Lacto-ovo vegetarian
Lacto-vegetarian
Ovo-vegetarian
なんだかややこしそうですが、語源を理解すると、すっきりすると思います。
Lacto-ovo vegetarian
Lacto-ovo vegetarianは乳卵菜食と訳され、牛や豚の肉、魚貝類などあらゆる種類の肉を食べませんが、卵や乳製品(牛乳、バター、チーズ、アイスクリーム、ヨーグルト等)は食べる人を指します。
Lactoは、「乳」を意味するラテン語が語源で、牛乳と意味します。
Ovoは、「卵」を意味します。同じくラテン語ōvumが語源です。
Lacto-vegetarian
Lacto-vegetarianは乳菜食と訳され、あらゆる種類の肉や卵を食べませんが、乳製品は食べる人を指します。
Ovo-vegetarian
Ovo-vegetarianは卵菜食と訳され、あらゆる種類の肉や乳製品を食べませんが、卵は食べる人を指します。
Pescatarian(ペスカタリアン)とは
Pescatarian(Pescetarian)とは、あらゆる種類の肉、動物性の肉は食べませんが、魚貝類は食べる人を指します。
Pescatarianは卵や乳製品を食べる事もあるので、必ずしもVegetarianという訳ではありません。
Pescaとはラテン語が語源で、スペイン語・ポルトガル語・イタリア語の魚釣り、釣りという意味です。
海外ヨーロッパにいくと、NORDSEEというチェーン店を良くみかけると思います。1896年ドイツの港湾都市ブレーメンで創立したNORDSEEですが、Pescatarianで魚をメインにした商品を提供しています。
初めてNORSEEに行った時は、ファストフードっぽい外観なのに、魚のバーガーしかなくて驚きました。
ドイツ語のNordとSeeを組み合わせた単語で、Nordは北、Seeは海という意味で「北海」という意味です。
ドイツに海というイメージはあまり無いかもしれませんが、北部は北海やバルト海に面しています。
Beegan(ビーガン)とは
Beegan(ビーガン)とは、Vegan(ヴィーガン)と紛らわしいですが別物です。
Beegan(ビーガン)はVegan(ヴィーガン)と共通点が多いですが決定的な違いは、ハチミツなど昆虫から取れたものは消費する人を指します。
Vegan(蜂は昆虫なので、ハチミツは食べない)が広まってから、業界の先行きを不安視したハチミツ業者がBeegan運動を扇動したとかしないとか。
英国ヴィーガン協会のウェブサイトでも、ハチミツに関しては明確に以下の通り記載があります。
There are many ways to embrace vegan living. Yet one thing all vegans have in common is a plant-based diet avoiding all animal foods such as meat (including fish, shellfish and insects), dairy, eggs and honey – as well as avoiding animal-derived materials, products tested on animals and places that use animals for entertainment.
引用元リンク:https://www.vegansociety.com/go-vegan/definition-veganism
同協会によると英国内で消費されるハチミツの95%程度が中国やトルコからの輸入で、二酸化炭素の排出という観点からも、Veganismにそぐわないとされています。
Flexitarian(Semi-vegetarian)とは
Flexitarian(Semi-vegetarian)とは、フレキシタリアン(セミ・ベジタリアン)と言い基本的にVegetarianの人が、一日に一回、一週間に一回、月に一回など回数を決めたり決めなかったり、柔軟にVeganismを実践する人を指します。
つまりお肉、卵、乳製品などを摂る事があります。
こてこてのVeganの人からしたら許せなそうですが、一般人がいきなりVeganになるには変化が急すぎる為、まずはFlexitarian(Semi-vegetarian)から始める人、或いはVeganを実践していたけど(栄養面など)何らかの理由でFlexitarian(Semi-vegetarian)になる人などがいます。
Fruitarian(フルータリアン)とは
Fruitarian(フルータリアン)とは、食事の75%以上を果物・ナッツ・種子で満たしている人を指します。
FruitarianとVeganは似ていますが、異なる点はFruitarianは生の食品を摂り、穀物や加工食品は口にしません。
フルータリアンというメルヘンな響きからは、想像もつかない厳格な果実主義です。
果物の糖分と酸性で、Fruitarianは歯のエナメル質がやられ、虫歯になり易いという指摘があります。
まとめ表
最後に、本記事で説明した事柄を表にまとめたいと思います。
便宜上、野菜・果物は植物に含ませています。
Types of Diets | 動物 | 魚貝 | 昆虫 | 卵 | 乳製品 | 植物 | 穀物 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Vegan | × | × | × | × | × | ○ | ○ |
Lacto-ovo vegetarian | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
Lacto-vegetarian | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ |
Ovo-vegetarian | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ |
Pescatarian | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
Beegan | × | × | ○ | × | × | ○ | ○ |
Flexitarian | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ○ |
Fruitarian | × | × | × | × | × | ○ | × |
こうやって比較すると、ほぼ×であるFruitarianが最も食生活を徹底している事が分かります。
健康志向、動物愛護、地球温暖化、Veganになる背景は人それぞれですが、子どもの頃からの食習慣を変えるとなると、相応の決意と勉強が必要ですね。
英国ヴィーガン協会では、無料Appを提供しているので、英語ですがVeganに興味がある方はお試し下さい。
https://www.vegansociety.com/go-vegan/veguide
Veganを実践すると、以下の栄養不足になるリスクが高まるので、代用品でしっかりと補足する必要があります。
- Vitamin B12
- Vitamin D
- Calcium
- Iron
- Protein
- Omega-3 fatty acids
※本文は以上です。
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