ヨーロッパだけでは無いかと思いますが、国際線・国内線どちらも、飛行機の遅延やキャンセル等に遭遇した事がある人は、一定数いるかと思います。
一方で、自身が購入したフライトチケットの航空会社が倒産したという人は、なかなかいないのではないでしょうか。
幸運にも?!わたしは今まで飛行機の遅延は何回もありますが、航空会社の倒産に遭遇したことはなく、自分の航空チケットがどうなるのか、返金されるのか、気になったので調べてみました。
この記事では、ヨーロッパ圏に関する航空事情について説明したいと思います。
遅延やキャンセルで使える、EU261規則
まず、遅延やキャンセル等で使えるEU261規則ですが、航空会社の倒産は規定外です。
よってEU261規則に基づき、消費者は航空会社が倒産した場合、何かアクションを取る事はできません。
航空会社の倒産時、確認すべきはパッケージ旅行(含むLTA)かどうか
航空会社などの倒産時、あなたのチケットが補償される場合は、以下2パターンに該当する場合です。
- パッケージ旅行 (Package Travel)
- 付随する旅行手配 (Linked Travel Arrangements=LTA)
EU指令2015/2302で明文化されています:EU Directive on package travel and linked travel arrangements
まず第一に確認すべき事は、航空券をパッケージ旅行(ホテルやレンタカーなどと合わせて)やLTAとして購入しているか否か。
EU圏の場合、Package Travel Directiveというものがあり、条件を満たした場合、Union Consumer Lawにより、消費者は保護されます。
パッケージ旅行 (Package Travel)の定義
パッケージ旅行とは、交通・宿泊・ツアー・車など、二つ以上の旅行サービスから成り立つものです。
旅行サービスとして認識されるには、宿泊、オプショナルツアー、コンサート鑑賞、スポーツ観戦などのイベントが、旅行総代金の25%以上である必要があります。
ただし、旅程に欠くことのできないサービスと言える場合は、必ずしも旅行総代金の25%無くても、パッケージ旅行のサービスとして認識されます。
旅行会社などを通じて、パッケージ旅行を購入
旅行会社の店頭やオンラインなどで購入し、全ての旅程が一つの契約となる場合が該当します。パッケージ旅行 (Package Travel)そのものなので、イメージし易いかと思います。
二つ以上の個別契約からなる、旅行サービスを購入
必ずしも、全ての旅程が一つの契約でなくとも、以下の何れかの条件を満たす場合は、パッケージ旅行と定義されます。付随する旅行手配 (Linked Travel Arrangements=LTA)という括りになります。
- 最初の会計を済ます前に、付随する旅行サービスを追加した場合
- サービスが合計料金に含まれていた場合
- サービスがパッケージとして宣伝されていた、販売されていた場合
- 旅行パッケージギフトなど、あなたが選択して旅程を作る場合
- Click-throughパッケージ…最初に購入した旅行サービスより24時間以内に、案内されたリンクを踏んで、付随する旅行サービスを購入した場合
LTAは直近2018年7月1日に、時代のニーズ(オンラインブッキング他)に合わせて各種定義が追加され、より実態に即した消費者の保護がなされるようになりました。
対象外のケース
EUのPackage Travel Directive (EU2015/2302)上、パッケージ旅行として定義されない主なケースとして、以下が挙げられます。
- 単体の旅行サービス(フライトや宿泊が、それぞれ独立で予約購入された場合)
- 24時間以内の旅行で、宿泊を伴わない場合
- 非営利のサービスである場合(チャリティなど)
- 限られた旅行グループの場合(年数会の学校向けなど、一般公開されないサービス)
違約金無しで、旅行をキャンセル可能
EU指令2015/2302では、防ぎようが無い異常事態(unavoidable and extraordinary circumstances)といえる時には、違約金無しで消費者はパッケージ旅行のキャンセルが可能です。
旅行代金は、キャンセル通知を出してから14日以内に払い戻しを受ける権利を、消費者が有しています。
DIRECTIVE (EU) 2015/2302 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 25 November 2015
引用元リンク: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32015L2302
on package travel and linked travel arrangements, amending Regulation (EC) No 2006/2004 and Directive 2011/83/EU of the European Parliament and of the Council and repealing Council Directive 90/314/EEC
(31) Travellers should also be able to terminate the package travel contract at any time before the start of the package in return for payment of an appropriate and justifiable termination fee, taking into account expected cost savings and income from alternative deployment of the travel services. They should also have the right to terminate the package travel contract without paying any termination fee where unavoidable and extraordinary circumstances will significantly affect the performance of the package. This may cover for example warfare, other serious security problems such as terrorism, significant risks to human health such as the outbreak of a serious disease at the travel destination, or natural disasters such as floods, earthquakes or weather conditions which make it impossible to travel safely to the destination as agreed in the package travel contract.
新型コロナウイルス「COVID-19」は、まさに「unavoidable and extraordinary circumstances」ですね。
どの国や地域が対象と言えるか、という点においては個別に評価されるようですが、渡航禁止令が出ていたら、立派なキャンセル事由になるかと思います。
イギリス在住者の場合、ATOLか確認
パッケージ旅行云々の話をしましたが、イギリス在住者であれば、ATOLか確認すれば一発で判断可能です。
ATOLとはAir Travel Organiser’s Licenceの略で、UK Civil Aviation Authority (CCA)により運営されています。
ATOLは英国内で販売されたパッケージ旅行に際し、消費者を保護する目的で1973年に設立されました。
パッケージ旅行を購入した際、ATOL証明書を業者から受け取っている筈です。
ATOL証明書があれば、旅行前であればキャンセル可能です。キャンセルに関する詳細は、ATOL証明書をご確認下さい。
補足ですが、イギリスの格安航空easyJet(イージージェット)のパッケージ旅行は、ATOL対象ですよ!
https://www.easyjet.com/en/policy/atol
因みにイージージェットと良く比較される、格安航空のRyanair(ライアンエアー)は、イギリスではなくアイルランドの会社です。よって、ライアンエアーから直接購入した商品サービスは、ATOL対象にはなりません。
https://www.ryanair.com/gb/en/useful-info/help-centre/terms-and-conditions/termsandconditionsar_368204930
パッケージ旅行では無い場合
パッケージ旅行では無い場合ですが、試せる救済方法がいくつかあります。
旅行保険の有無
旅行保険に加入していれば、保険会社に連絡しましょう。
航空会社の破綻、天変地異、ストライキ他、どこまでが保険の対象なのかは、(予め)要確認です。
クレジットカードで決済した場合
パッケージ旅行では無くて、旅行保険に加入していない場合、クレジットカード払いかどうかが重要になってきます。
イギリスと欧州大陸に住む場合に分けて説明します。
イギリス在住者
クレジットカードで直接航空会社に100ポンド超支払っている必要があります。
英国居住者で、英国の銀行が発行したクレジットカードなら1974年の消費者信用法セクション75(Section 75 of the Consumer Credit Act)を根拠に、クレームが可能です。
覚えていない方が多数かと思いますが、クレジットカード申込時に、あなたと銀行は消費者信用契約を締結した筈です。
消費者信用法セクション75は、カード会社に小売り業者同様に責任を追わせる事ができるもので、100-30,000ポンドの取引金額が対象です。
消費者は必ずしもリテール業者(航空会社や小売り等)にアプローチせず、カード会社にさえクレームを言えば、カード会社が対応しないといけません。
例えば、航空会社や小売り業者が倒産して連絡がつかなくなってしまった場合、消費者信用法セクション75は、われわれ消費者にとって大変有益です。
ヨーロッパ大陸在住者
イギリス以外のヨーロッパ圏、EU法ではクレジットカードのみ、チャージバックスキームに対応しています。
チャージバックスキームの本来の趣旨として以下が挙げられます。
- カード保有者が許可していない取引がなされた場合
- 消費者の権利を損なっている場合
- 商品サービス提供者が破綻した場合
EU指令2007/64/EC(2018年1月より、2015/2366へ)及び、2008/48/ECに基づいています。
Directive 2008/48/EC
引用元リンク: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:02008L0048-20190726
Credit agreements for consumers
Article 15
Linked credit agreements
1. Where the consumer has exercised a right of withdrawal, based on Community law, concerning a contract for the supply of goods or services, he shall no longer be bound by a linked credit agreement.
2. Where the goods or services covered by a linked credit agreement are not supplied, or are supplied only in part, or are not in conformity with the contract for the supply thereof, the consumer shall have the right to pursue remedies against the creditor if the consumer has pursued his remedies against the supplier but has failed to obtain the satisfaction to which he is entitled according to the law or the contract for the supply of goods or services. Member States shall determine to what extent and under what conditions those remedies shall be exercisable.
3. This Article shall be without prejudice to any national rules rendering the creditor jointly and severally liable in respect of any claim which the consumer may have against the supplier where the purchase of goods or services from the supplier has been financed by a credit agreement.
EU指令と合わせて、厳密にはEU各国により、どう取り扱われるかは分かれるようです。
イギリスの消費者信用法セクション75は、クレジットカード会社に支払責任を負わせる事ができる強力な消費者保護法なのに比べると、 EU指令のキャッシュバックスキームは、少し見劣りするように読み取れます。
デビッドカードで決済した場合
デビッドカードで直接支払った場合は、クレジットカード払いのようにEU指令に基づくものはありませんが、マスターやビザなど、カード会社(銀行)に問合せをする事で、返金される可能性があります。
デビッドカード時も、クレジットカード時同様に、チャージバックスキームと呼ばれる事が多いみたいです。
わたしがヨーロッパ圏でお勧めしている、ドイツのネット銀行N26ですが、公式サイトで問合せ申請ページがあります。明細で確認でき、購入日或いは商品サービス受渡日から120日を経過していない取引が対象です。
言わずもがな、カード会社(銀行)は、あなたのリクエストで資金を取り戻せるかトライするだけなので、100%返金が保証されたものではありません。
ただしデンマークやポルトガルなど国によっては、デビッドカードで支払っても、クレジットカード時と同様の保護を受けられる可能性もあるようです。
まとめ
航空会社の倒産に備えて、パッケージ旅行にする、クレジットカード払いにする、旅行保険(航空会社の破綻が含まれているのか、どこまでの補償範囲か要確認)を買う、などの手段を考えても良さそうです。
航空会社が倒産した場合の手続きですが、
- パッケージ旅行であれば販売業者に問合せ
- 旅行保険を購入していれば保険会社に問合せ
- 航空会社にコンタクトを試みて、返金を要求する
- 返信が無い場合/要求が棄却された場合/相手方が倒産している場合等はカード会社(銀行)に問合せ
- カード会社(銀行)に問合せしても未解決で、納得が行かないなら最終手段としてADR(Alternative dispute resolution)へ
ADRは国ごとに窓口が異なるので、リンクを貼り付けておきます。
https://ec.europa.eu/consumers/odr/main/?event=main.adr.show2
格安航空会社を使って旅行する場合、フライトチケット代より、意外とフライト以外の交通費(鉄道など)やホテル代の方が高かったりするんですよね。
欧州ではパッケージ旅行の対象範囲に上手く収まるように予約すると、万が一の時、ダメージが少なくできるかと思います。
航空会社の倒産時に、フライトチケットがどうなるかの記事でしたが、こうやって整理してみると、高額な買い物の時ほどデビッドカードでは無くて、クレジットカード払いの方が、何かと消費者メリットがありますね。
決済絡みでは、以下の投稿記事もご参照下さい。
トランスファーワイズ自体は日本でも使えますが、日本未上陸のサービス、「ボーダレス口座」についてレビューしました。
※本文は以上です。
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